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今夏にトミー・ジョン手術の投手が、2年1550万ドルの契約をゲット。来シーズンは全休が濃厚だが…

宇根夏樹ベースボール・ライター
ギャレット・リチャーズ May 16, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)とチームメイトだったギャレット・リチャーズが、サンディエゴ・パドレスに入団した。パドレスから発表はされていないが、リチャーズ自身がツイッターで報告している。契約内容は、ジェフ・パッサン(ヤフー・スポーツ)とジョン・ヘイマン(ファンクレッド)のツイートを総合すると、2年1550万ドルに、250万ドルのインセンティブ(出来高)がつくようだ。

 リチャーズは、今年7月にトミー・ジョン手術を受けた。復帰するのは、早くても来年の夏。来シーズンは全休の可能性が、かなり高い。

 にもかかわらず、パドレスがリチャーズを迎え入れたのは、2020年の復帰を見据えてのことだ。リチャーズは故障の多い投手ながら、ここ3年の計28先発で、奪三振9.61と防御率3.05を記録している。2020年に同水準の投球ができるなら、年俸として考えても、1550万ドルは決して高くない。リスクは伴うものの、賭けてみる価値はある。リチャーズは2014年から2年続けて規定投球回をクリアし、2015年は200イニング以上を投げている。年齢もまだ30歳だ。

 こういった契約を交わすのは、パドレスが初めてではない。

 昨年7月にトミー・ジョン手術を受けたドルー・スマイリーマイケル・ピネイダは、それぞれシカゴ・カブスとミネソタ・ツインズから、どちらも2年1000万ドル(2018~19年/出来高あり)の契約を得た。球団が1000万ドルに見合う働きを望むのは、来シーズンだ。2人とも、今シーズンはマイナーリーグのリハビリ登板があるだけで、メジャーリーグでは投げなかった(スマイリーは2017年も全休)。

 なお、スマイリーは11月にテキサス・レンジャーズへ放出された。今年の夏、カブスはレンジャーズからコール・ハメルズを獲得し、スマイリーを手放したのと同じ日に、球団オプションを行使した。これにより、スマイリーは余剰人員となった。

 来シーズン、スマイリーの年俸は700万ドルだ。一方、ハメルズのオプションは2000万ドルで、破棄するには600万ドルを払う必要があった。スマイリーを放出せず、ハメルズを退団させた場合、カブスの費用は計1300万ドル(700万ドル+600万ドル/スマイリーの年俸+ハメルズのオプション破棄)となる。ハメルズを残留させ、スマイリーをトレードに出しても、必要な金額は同じく1300万ドル(2000万ドル-700万ドル/ハメルズの年俸-スマイリーの年俸)だ。2人の実績と力量を比べれば、後者を選ぶのは当然だろう。カブスがスマイリーに払った今シーズンの年俸300万ドルも、まったくの無駄ではなく、スマイリーと交換にレンジャーズからPTBNL(後日決定選手)を獲得した。

 レンジャーズには、スマイリーの1ヵ月後にトミー・ジョン手術を受けたエディンソン・ボルケスもいる。こちらは、2年間のマイナーリーグ契約(2018~19年)を交わした。ボルケスも、今シーズンは全休。レンジャーズは11月にボルケスを40人ロースターに登録し、契約に付帯していた来シーズンの年俸200万ドルを確定させた。ボルケスの場合、マイナーリーグ契約だったのは、現在35歳の年齢が理由と思われる。スマイリーとピネイダは29歳だ。ボルケスの契約にも出来高がつき、すべてクリアすれば、年俸と併せて650万ドルになる。

 先月、「規定投球回に達したのは4年前の1度だけ。それでも、FA市場では大人気」で紹介したネイサン・イオバルディも、その一人だ。2016年8月にトミー・ジョン手術を受け、そのオフ、タンパベイ・レイズから1年200万ドル(2017年)+球団オプション200万ドル(2018年)の契約を得た。2017年は全休したイオバルディに対し、レイズはオプションを行使。今年5月に復帰したイオバルディは、7月にボストン・レッドソックスへ移り、ワールドシリーズ優勝に貢献した。レイズはイオバルディを放出した見返りとして、6月にメジャーデビューしたばかりの左投手、25歳のジェイレン・ビークスをレッドソックスから手に入れた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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