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史上初とは対照的なルートをたどり、ア・リーグ東地区の全5チームをコンプリート!

宇根夏樹ベースボール・ライター
スティーブ・ピアース Jul 30, 2017(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 6月29日、スティーブ・ピアースがボストン・レッドソックスの「4番・一塁」として出場し、ア・リーグ東地区の全5チームでプレーした史上2人目の選手となった。ピアースはこれまでに、ア・リーグ東地区の4チームとそれ以外の2チームでプレーしていて、この前日にトロント・ブルージェイズからレッドソックスへ移籍した。

 この記録を初めて達成したのは、ケリー・ジョンソンだ。その前には、リック・セローンもア・リーグ東地区の5チーム(と他3チーム)でプレーしたが、当時は1リーグ3地区ではなく2地区だった。セローンはア・リーグ東地区の全チームをコンプリートしたわけではない。セローンの5チームには、ボルティモア・オリオールズと、セローンの引退後に誕生したタンパベイ・デビルレイズ(現レイズ)がない一方、現在はア・リーグ中地区のクリーブランド・インディアンズとナ・リーグ中地区のミルウォーキー・ブルワーズを含んでいる。

 ピアースとジョンソンは、2014年9月にオリオールズでチームメイトとして過ごし、同じ試合に出場したこともある。ただ、コンプリートまでに2人がたどったルートは、かなり違う。ジョンソンは一筆書きのようにア・リーグ東地区の5チームを巡り、その間は他地区のチームをまったく挟まなかった。ブルージェイズ(2011~12年)、レイズ(2013年)ときて、2014年は残る3チームでプレーした。この前後はいずれも他地区の2チームずつでプレーしていることを踏まえると、効率のよさ(?)はさらに際立つ。

 一方、ピアースはオリオールズに3度も在籍した。2012~16年はどのシーズンもオリオールズでプレーしたが、ずっといたわけではなく、オリオールズとオリオールズの間に3チーム、ヒューストン・アストロズとニューヨーク・ヤンキース、レイズを挟んでいる。

 3地区(両リーグ計6地区)になった1994年以降、地区の全チームでプレーした選手は、ジョンソンとピアース以外にもいる。スティーブ・フィンリーマット・ハージェスは、ナ・リーグ西地区の全5チームをコンプリートした。2人とも、2007年のコロラド・ロッキーズが5チーム目。この年、フィンリーは開幕戦に出場し、ハージェスは開幕16試合目に初めて登板した。

 セザー・イズトゥリスは、ナ・リーグ中地区の全5チームでプレーした。彼の場合、2012年の時点では地区6チーム中4チームで、コンプリートにはアストロズとシンシナティ・レッズの2チームを残していたが、アストロズが2013年にア・リーグ西地区へ移って中地区は5チームに減り、イズトゥリスはこの年にレッズでプレーした。ちなみに、イズトゥリスは翌年1月にアストロズと契約したが、開幕前に退団し、その後、メジャーリーグでプレーすることはなかった。

 このリストにマーク・マクレモア(ア・リーグ西地区)を挙げているところもあるが、5チームのうち2チームは2地区だった時代にプレーした。しかも、カリフォルニア(現ロサンゼルス)・エンジェルスは当時もア・リーグ西地区ながら、アストロズは同じ西地区でもナ・リーグにいた。これをコンプリートと呼ぶのはどうかと思う(1994~2012年のア・リーグ西地区は4チームだったので、これをコンプリートした選手はいるかもしれない)。また、ア・リーグ中地区をコンプリートした選手はおらず、ナ・リーグ東地区も同様だ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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