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スタントンが「真のヤンキー」になったのは、これまでの大物スラッガーより遅い!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジャンカルロ・スタントン/サヨナラ本塁打の直後 Jun 20, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ニューヨーク・ヤンキースのジャンカルロ・スタントンが、6月20日にサヨナラ本塁打を放った。スタントンのサヨナラ本塁打は通算4本目だが、これまでの3本はフロリダ/マイアミ・マーリンズで記録したものだ。昨年12月のトレードで、スタントンはマーリンズからヤンキースへ移籍した。

 NBCスポーツのクレイグ・カルカテーラは「ジャンカルロ・スタントンが“トゥルー・ヤンキー”になった日」、ニューズデイのデビッド・レノンは「ついに訪れた、ジャンカルロ・スタントンの“トゥルー・ヤンキー・モーメント”」と題して報じた。意味していることはどちらも同じ。サヨナラ本塁打によって、スタントンは「真のヤンキー(真のヤンキースの一員)」になったということだ。このフレーズを使ったのは、彼らだけではなかった。

 他球団から移ってきたスラッガーが「真のヤンキー」になるのに、サヨナラ本塁打が不可欠というわけではないだろう。ただ、サヨナラ以外のホームランは、たとえグランドスラムでも、試合に敗れることもある。それに対し、サヨナラ本塁打はチームの勝利とイコールで結ばれている。

 スタントンがサヨナラ本塁打を打ったのは、開幕から数えて71試合目(出場70試合目)だった。ヤンキース入団後、最初のサヨナラ本塁打をもっと早く記録した選手は何人かいるが、そのほとんどは大物スラッガーではないか、大物であっても、入団時には全盛期を過ぎていた。オフに鳴り物入りでヤンキースへやってきたスラッガーに限ると、スタントンより早かったのは、42試合目にサヨナラ・グランドスラムを放ったジェイソン・ジアンビくらいだ。

筆者作成
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 スタントンは開幕戦で、2本のホームランを叩き込んだ。ここまでの本数も、決して少なくはない。6月22日時点の18本は、ヤンキースではアーロン・ジャッジの19本に次ぎ、リーグ8位タイに位置する。にもかかわらず、打率の低さや三振の多さからだろう、ヤンキー・スタジアムのファンは、期待に応えていないと見ているようだ。スタントンは何度もブーイングを浴びてきた。

 今後も、ブーイングがまったくなくなるとは思えない。だが、スタントンのヤンキース1年目は、まだ折り返し地点に達していない。自身の成績もさることながら、その打棒でヤンキースを9年ぶりのワールドチャンピオンに導けば、ファンから喝采を受けるはずだ。

 なお、マーク・テシェーラのサヨナラ本塁打(サヨナラ・グランドスラム)は、キャリア最後のホームランとなった。テシェーラはヤンキースで206本、通算では409本のホームランを記録したが、サヨナラ本塁打はこの1本しかなかった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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