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スピードスターの不在がもたらした、まさに驚異のストーリー。新人がデビューから3試合連発の計4本塁打

宇根夏樹ベースボール・ライター
Apr 4, 2016(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

開幕戦で「2番・遊撃」としてメジャーデビューしたトレバー・ストーリー(コロラド・ロッキーズ)が、そこから3試合続けてホームランを放った。まず、4月4日にザック・グレインキー(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)から2本塁打を放つと、翌日と翌々日も、先発投手(シェルビー・ミラーとパトリック・コービン)の投球をスタンドへ運んだ。イライアス・スポーツ・ビューローによると、1900年以降、デビューから3試合続けてホームランを打ったのも、最初の3試合で4本のホームランを放ったのも、ストーリーが初めてだ。後者は、1954年のジョー・カニンガムと、2014年にホルヘ・ソレーアとハビア・バイエズがそれぞれ記録した3本塁打が最多だった(3人ともデビューはシーズン途中)。また、3試合を終えた時点で、ストーリーは14打数4安打。最初の4安打がすべてホームランという選手も、ストーリーの前にはいなかった。ベタな表現で申し訳ないが、まさに驚異のストーリーだ。

ストーリーはプロ6年目の23歳。2011年のドラフトでロッキーズから1巡目補完・全体45位指名を受けてプロ入りし、今春のエキシビション・ゲーム(オープン戦)では打率.340(53打数18安打)&6本塁打の好成績を残したが、これまでマイナーリーグで打率.280に達した年はなく、ホームランも20本を超えたことはない。ホゼ・レイエスが欠場を余儀なくされていなければ、今シーズンの開幕もマイナーリーグで迎えていたかもしれない。レイエスの復帰後もストーリーがレギュラーとして起用されるかどうかは、ここからの働き次第だろう。レイエスはドメスティック・バイオレスにより、MLB機構から出場を禁じられていて、出場停止がいつまでになるのかは、まだ確定していない。

もっとも、ロッキーズとしては、ストーリーの遊撃定着を望んでいるに違いない。昨年7月に計6選手が動いたブロックバスター・トレードで、ロッキーズは遊撃手のトロイ・トゥロウィツキを手放し、同じ遊撃手のレイエスを手に入れたが、これはトレードを成立させるために過ぎず、ロッキーズがレイエスを欲していたとは思えない。欲していたにしても、長期的なスパンではなく、新たな遊撃手が台頭してくるまでのつなぎとしてだろう。32歳となったスピードスターから、かつての躍動感は失われつつある。

ちなみに、チームの開幕4試合すべてでホームランを放った選手は、過去に4人いる(いずれもその時、新人ではなかった)。錚々たる顔ぶれだ。ウィリー・メイズ(1971年)は通算660本塁打、マーク・マグワイア(1998年)は583本塁打。メイズは殿堂入りしており、マグワイアも薬物問題がなければそうなっていただろう。現役選手であるネルソン・クルーズ(2011年)とクリス・デービス(2013年)の2人は、昨シーズンの本塁打トップ2。ここ3年のア・リーグ本塁打王は、デービス→クルーズ→デービスと推移している。

ストーリーによる「驚異のストーリー」はまだまだ続き、メイズら4人の記録に肩を並べ、さらには抜き去っていくのだろうか。ロッキーズのシーズン4試合目は、4月8日のホーム・オープナー(ホーム開幕戦)で、相手はサンディエゴ・パドレスだ。

【追記:4月9日】

ストーリーは4月8日の試合で、ホームランを2本放った!

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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