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新しいグラブに過ちがあっても、それに対して怒ることはなし

宇根夏樹ベースボール・ライター
フィル・ヒューズ(ミネソタ・ツインズ)Aug 4, 2015(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

フィル・ヒューズ(ミネソタ・ツインズ)に新しいグラブが届いた。だが、ヒューズがこのグラブをはめて今シーズンのマウンドに立つかどうかはわからない。そこには過ちがあった。ヒューズ自身が3月18日にこうツイートしている。

「@RawlingsStevieいつもありがとうスティービー。#65はここ3年つけていないけど君が一生懸命やってくれているのはわかっている!」

一緒にアップされている黒いグラブの写真を見ると、親指側に「HUGHES 65」と白く縫ってある。ヒューズが最後に背番号「65」をつけたのは、ニューヨーク・ヤンキースで投げていた2013年のことだ。ツインズに移った2014年からは「45」を背負い、ツイッターのアカウントも@PJHughes45としている。右投手でローリングス社の黒いグラブを使っているところも共通しているが、ツインズの背番号「65」はトレバー・メイだ。ただ、ヒューズは昨シーズンも「HUGHES 65」と縫い取りがしてあるグラブを使用していた。

@RawlingsStevieはローリングス社のスティービー・コーエンだ。ツイッターに「ローリングス社のプロフェッショナル・ベースボール・サービス部門ディレクター」と肩書きが記してある。ヒューズのツイートの数日前には、車の運転席と足元がボールと紙コップで埋まった写真をアップし「ロックしないで車を離れちゃいけない」と書き込んでいる。このようなイタズラではないものの、背番号の過ちも、ヒューズの対応のおかげで笑える話になった。

ヒューズのグラブの写真には「HUGHES 65」の下に「PHIL 4:13」の文字も見える。こちらもまた、前に使っていたグラブにもあるものだ。フィラデルフィア・フィリーズの略号は「PHI」だが、そうではない。「フィリピの信徒への手紙4章13節」だ。その言葉は「I can do all things through Christ who strengthens me.」。訳は「私を強くしてくださるキリストによってどんなことでも成すことができる」とでもすればいいだろうか。ヒューズは左上腕の内側に、この言葉を彫っている。ジェイソン・スタンリッジ(千葉ロッテ・マリーンズ)が阪神タイガース在籍時にプロデュースしたTシャツも、右袖に「PHIL.4:13」と記してあった(胸には日本語で「神様は私の力です」)。

宗教を茶化すつもりはないが、背番号を間違えたオチとしては「PHIL 4:13」ではなく「MATTHEW 6:14」の方がピッタリはまる。こちらは「マタイによる福音書6章14節」。その言葉は「For if you forgive other people when they sin against you, your heavenly Father will also forgive you.(人々があなたに対して罪を行った時に彼らの過ちを赦すなら、あなたの天の父もあなたを赦してくださるだろう)」だ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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