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また敗退の「ビッグタイム・ルーザー」ブレーブス、それでもファンが温かいワケ

豊浦彰太郎Baseball Writer
ロナルド・アクーニャを中心とするヤングブレーブスには来季も大いに期待できる。(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

ディビジョンシリーズが終わった。両リーグとも、レギュラーシーズンでの成績がより秀でた4球団がリーグチャンピオンシップ・シリーズに進むことになった。逆に言えば、敗れた球団は「順当負け」ということになってしまうのだが、敗退の屈辱や失望よりも、来季への期待を感じるチームもある。それが、ナ・リーグ東地区王者で西地区を制したドジャースに1勝3敗で屈したブレーブスだ。

現地8日、地元での第4戦に敗れた直後、サントラスト・パークではスタンディング・オベーションが発生した。地元のファンも「ここまで良くやった」というメッセージを送っているのだ。あくまで日本から映像を見ての印象だが、そこにはポストシーズンの早い段階での敗退に付きものである、夢を追い続けた長いシーズンの幕引きによる寂寥感や、これから冬を迎える憂鬱はなかった。

かつて、ブレーブスは「ビッグタイム・ルーザー」と揶揄された。1991年から2005年まで、空前の14季連続地区優勝(ストライキの影響でポストシーズンがキャンセルされた94年を除いて)という大記録を樹立するなど黄金時代を迎えた同球団だが、95年の世界一、96年&99年のリーグ制覇以降はポストシーズンでの勝ち抜けがほとんどない。特に02年以降は毎回最初の関門であるディビジョンシリーズまたはワイルドカードゲームでの敗退が続いたからだ。

そして、5年ぶりにオクトーバー・ベースボールに帰ってきた今季も敗れた。これで、8回連続でファーストシリーズでの敗退となった。もはや、「呪い」レベルだ。

それなのに今回はファンの反応は温かかった。それは、今季の地区優勝は予想より1年早い?成果(昨季は72勝90敗で、今季も開幕時点での期待は「まずは5割確保」だった)であり、来季以降に大いに期待が持てるからだ。近年メジャーリーグでは2016年のカブス、17年のアストロズと、一度は徹底的にチームを解体し(これをタンキングと言う)有望な若手を数多く獲得・育成した球団が、数年の下位低迷を経てワールドチャンピオンの栄冠を掴んでいる。その流れを継ぎそうなのがブレーブスなのだ。

14年に6年ぶりの負け越しを喫すると、オフには地元ジョージア州出身のスターであるジェイソン・ヘイワードを放出し、再建へ大きく舵を切った。その後もどんどん主力を放出したが、交換で手に入れたのが今季は主力に成長したダンズビー・スワンソン(遊撃手)、マイク・フォルティネビッチとショーン・ニューカム(ともに先発投手)らだ。またはラテンアメリカから発掘したロナルド・アクーニャ(外野手)、オジー・アルビーズ(二塁手)、ヨハン・カマーゴ(三塁手)もその素質が大いに開花した。

彼らは全員が26歳以下で、まだまだ伸びしろは十分にある。しかも、FA権獲得は21年オフまたはその先で、フォルティネビッチ以外はまだ年俸調停権も取得していない。したがって、この先の補強に向けた資金の流動性も確保されているのだ。数年の低迷が前提となるタンキングにはコンプライアンスの視点からの否定的意見も根強いが、少なくとも現在のそして近未来のブレーブスの前途が明るいのはタンキングの成果である。

もちろん、期待より早く戦力再編の成果が出たからといって油断は禁物だ。今季のツインズのような例もある。この球団も再建期を経て、17年は予定よりも早く成果が出た。若手の成長により前年は103敗も喫し最下位ながらワイルドカードを掴んだのだ。しかし、大いに期待が高まった今季はあにはからんや勝率.481と低迷した。来季はブレーブスにとって真価が問われるシーズンだ。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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