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広島「ズムスタ」、楽天「コボスタ」、日本ハム「新球場」、四半世紀遅れのBP化に新コンセプトはないか?

豊浦彰太郎Baseball Writer
2009年のズムスタのオープンは大きな影響を他球場に与えた(写真:アフロ)

『週刊ベースボール』最新号は「ボールパーク」特集だった。5月からコボスタに観覧車がお目見えし、日本ハムは先日新球場構想を明らかにした。丁度良いタイミングだったのだろう。そう言えば、オフにはハマスタの運営会社を買収したDeNAによる「ボールパーク構想」の発表あった。NPBにもボールパーク化の波が押し寄せつつある。

「大いに結構なことだ」と言いたいところだが、必ずしも手放しでは喜べない。理由は2つ。それを述べたい。

まずは、「あまりに遅かった」ということだ。2009年のマツダスタジアムのオープンで、オープンエア&天然芝で家族連れで楽しめるアメニティ付きというボールパーク化の動きが本格化した。コボスタは天然芝化された(戻ったと表現すべきかも知れない)し、日本ハムの新球場も現時点での構想は開閉式屋根の天然芝だという。希望的観測を述べるなら、ハマスタ天然芝化も時間の問題だろう。ヤフオクドームも近年は時おりルーフを開けるようになった。それまでほぼ閉めっぱなしだったのは、電気代や近隣への騒音云々もあったのだろうが、突き詰めれば九州のファンには「球場に屋根がついとるバイ」という方が訴求力があったのだろうとぼくは思っている。それが、ようやく「屋根が開くバイ」という方がありがたい、というフェイズに入ったのだと思う。

しかし、いまや2016年である。メジャーで天然芝化や脱ドームの動きが顕在化してからすでに四半世紀も経っている。その先魁の部類だったレンジャーズのグローブ・ライフ・パーク(94年オープン)やブレーブスのターナー・フィールド(97年オープン)はすでに次期球場プランがほぼ決定または確定している。もう、そんな時期なのだ。これらの球場のケースでは、もちろん耐用年数に達してしまったということではなく、総合的な商品性の部分で、単に「古典的スタイリング の天然芝の野球専用球場デス」というだけでは集客が望めなくなったということが新球場建設の理由だ。

そして、もうひとつ残念なことがある。現時点までに、NPBで導入または検討されているコンセプトは全てアメリカの模倣であることだ。今年1月にDeNAがボールパーク構想を発表した際は、メディアやファンは熱狂した。しかし、そこでのプランは全てメジャーで前例があることで、オリジナルのアイデアは皆無と言えるものだった。広島のお化け屋敷はアメリカにはない(と思う)が、発想としては球場内に観覧車やメリーゴーランドを設置することの延長戦上にある。

ぼくの周辺には、「アメリカの球場(特にマイナーリーグ)のいわば遊園地化は、ベースボール本来の魅力を否定するもので感心しない」という硬派な意見の持ち主もいる。ぼくも基本的には同意見だ。要するに、球場の魅力というのはオーセンティックな部分以外は色々な価値観が出てきては消えていくということなのだ。

なのに、日本のボールパークは今頃になってアメリカの四半世紀も前の考えをコピーし始めたのだ。『週べ』には申し訳ないが、「ボールパーク時代到来!」と声高らかに歌い上げ始めた時点で、そのコンセプトはもはや一時代前のものにならんとしていることを、ぼくたちは認識しておいた方がよい。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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