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第4の外野手である限りイチローに「代打の代打」が送られるのは驚くに値しない

豊浦彰太郎Baseball Writer
時として「代打の代打」が送られるのも第4の外野手である限り受け入れねばならない。(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

マーリンズのイチローが、現地時間4月16日のブレーブス戦で代打で登場するも、代打の代打を送られた。稀代の安打製造機がこのような扱いを受けたことに対し、「イチローへの評価はそこまで低いのか」という嘆きの声も挙がって来そうだ。これは必ずしもそうではないと思うので、その理由を述べたい。

結論を言うなら「それが今季のマーリンズでのイチローの位置付けだから」ということであり、現在の調子に対するマッティングリーの評価が低い訳でも、彼の「イチローは左に強い」という事実の認識が不足しているということでもないだろう。

イチローが代打で登場したのは、打順が投手(クリス・ナーバソン)であったためであり、代打の代打を送られたのは相手投手が左投げに代わったからだ。

今季もイチローは「第4の外野手」だ。この立場の選手の役割は、レギュラーの外野手に休みを取らせる場合や故障者が出た場合の先発出場がメインだが、DH制のないナショナル・リーグでは投手への代打もこれに付随する。

これがイチローというビッグネームでなければ、左打ちの第4の外野手が投手の打順で代打に登場するのも、そこで相手投手が左投げに代わったなら代打の代打を送られるのもだれも驚かないと思う。マッティングリー監督は当然のことをしたに過ぎない。

彼はイチローが対左投手の方が成績が良いことも良く知っているはずだ。しかし、それよりも、左投手には右打ちの代打(この場合はクリス・ジョンソン)というチーム内の役割分担を優先したのだ。

ヤンキース時代にも同様なことがあった。ジョー・ジラルディ監督は、めったに左投手に対しイチローを起用せず、それに対しては日本のメディアやファンからは疑問の声が挙がった。

時としてメジャーの監督は、そういうスタッツの解釈よりも選手起用における理由の明快性を優先するものだ。それは、プライドの高い25人のメンバーを半年間に亘りハンドリングして行くには、各自に対し「君の役割は○○だ」というメッセージが分かりやすく伝わることがとても大事だからだと思う。現代のメジャーは多様な文化背景をもった選手が集まっており、各自の価値観は極めて多様だからだ。そして、おそらく教育レベルの格差にも起因する理解力の格差もかなりのものであることも、少なからず影響しているはずだ。

したがって、各選手(特に控え選手)のジョブ・ディスクリプションがシンプルに定義されていることは極めて重要なのだ。

イチローはメジャーの歴史に残る名選手であることに議論の余地はないが、少なくとも今季のマーリンズにおいては第4の外野手だ。相手投手が右投げの場面で自軍の打順が投手に廻って来たので、代打という左打ちの第4の外野手にとって当然の仕事をマッティングリー監督は命じ、相手投手が左腕に代われば代打の代打を送るという全うな対応を取ったのだ。驚くには値しない。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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