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ベイスターズのマーケティングはホンモノ?転入者へのプロモーション、グッズに頼らないファンクラブ

豊浦彰太郎Baseball Writer
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

今年初めてのライブ観戦に出かけた。ハマスタでのDeNA対中日戦だが、一歩足を踏み入れ驚いた。お客が一杯だったのだ。内野席で開放しているのは全体の半分強くらいなのだけれど、その部分はほぼ満席に近く座れる席を見つけるのに往生した。帰宅後、入場者数を確認すると1万2870人も入っていた。強調しておくが、これは平日のデイゲームで、しかも所詮オープン戦だ。横浜市の失業率が異常に上がっているのではないか?と不安になった(ちなみにぼくはまだ失業していない)。

試合前に所用で地元の区役所に寄った。横浜市港北区だ。そこで、ベイスターズのチラシを見つけた。手にとってみると、それは横浜市に転入した住民を対象とするチケットプレゼントを告知するものだった。ナルホド。引っ越してきた人にまずハマスタに行くことを刷り込む、というのはマーケティング上意味がある。観客動員が年々アップしているベイスターズはこのような努力を続けているのだ。

そう言えば、先日野球好きが集まる飲み会に参加させてもらった際に、各球団のファンクラブのプロモーションが話題になったのだが、ベイスターズは特典にユニフォームやウィンドブレーカーなどのグッズに頼らず、チケット引換券のみを提供している見識に称賛が集まった。「とにかく、球場に来てもらうことを重視しているんだよね」。

早い時期からオープン戦が地方球場ではなく各球団の本拠地で行われることに毒付いているが、やはり晴天下の観戦は気持ち良い。ビールも進む。平日のデイゲームにわざわざ足を運んでいるだけあって、周囲の観客のマニア度も高い。「オレは去年20試合足を運んだよ」「地元開幕3連戦は全部チケット買った」という会話が耳に入る。中には、「スコアボードのLOBって何だ?」というのもあった。「それは残塁だよ」と隣の友人らしき男性が答える。「へえ、そうなんだ。じゃLOBって何の略なの?」「うーん、LossナントカBaseかな」。思わず「Left On Basesですよ」と教えてあげたくなった。

ぼくは横浜在住23年目なのだけれど、自称「ハマでいちばんゆるい」ながらもベイファンと自覚するようになったのは、東京から移り住んで10年目くらいのことだった。

もともと太平洋クラブ・クラウンライター時代のライオンズファンだったため、少年時代から「在京セ」(今や死語だ)に対するアレルギーがあったのだ。特に、ヤクルトと大洋(当時)に対してはそうで、「巨人のコバンザメ」と感じ許せなかったのだ。

そんなぼくもベイスターズを(ゆるくだが)応援するようになったのは、もちろん年月のお陰もあるが、いつもハマスタがガラガラでベイスターズも弱く、あの頃の平和台球場の雰囲気に浸れたからだ。

そんな訳で、平日のデイゲームのオープン戦でも良くお客が入るようになったベイスターズはちょっぴり遠くに行ってしまった感じもするのだけれど、地元が活気づいているは確かだ。

試合後、みなとみらい線と東横戦で帰宅した。ハマスタを出て30分後には家に着く。やっぱり、地元にプロ野球チームがあるのは良いことだ。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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