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なぜ野球殿堂は名球会の後塵を拝しているのか?

豊浦彰太郎Baseball Writer
通算2452安打&465本塁打の土井正博も選出されていない(写真:岡沢克郎/アフロ)

12月1日、2016年の野球殿堂入り投票の候補者が発表された。直後はスポーツメディアを中心に若干このことに関する露出があったが、その後あっという間に紙面やスマホ画面から消え去った。寂しいなあと思う。

残念でならないのは、毎年この時期から1月の投票結果発表までに「今回は誰が選出されるだろうか」という記事をメディアが掲載することはほぼ皆無で、その結果ファンの間でもほとんど話題にならないことだ。

アメリカでは、発表前後は予想や結果のレビューに、正論から突拍子もない暴論に至るまで、議論百出となるだけに日本の現状は寂しいと言わざるを得ない。

日本で殿堂入りに関する議論が盛り上がらない理由は、歴史を語る文化が希薄なことに加え、その選出結果に不可思議な点が多く権威性が確立されていないことだろう。その結果、「 名球会」に本来占めるべき立ち位置を奪われている。

ここで、選出状況の不可解な具体例について述べてみたい。競技者表彰には、引退後5年以上20年以下の候補者を対象とするプレーヤー部門と同21年以上のエキスパート部門があるが、それらの区分は別として選出されていないかつての名プレーヤーリストには、土井正博、榎本喜八、松原誠らの2000本安打達成組が多数名を連ねている。また、通算148勝の大野豊や131勝の外木場義郎が選出されていることに積極的に異論を挟むつもりはないが、それなら江夏豊、平松政次ら200勝達成者も選ばれていないとおかしい。いわんや49勝90セーブの津田恒美が選出されているのは、突き詰めれば「悲劇的な死を遂げた」ということ以外に理由が見当たらない。 また、史上唯一の3度の三冠王達成者である落合博満は被投票資格を得ても中々選出されなかった。これでは、殿堂入り投票は勉強不足の記者さん達による人気投票だと言われても仕方ない。

また、今回新たにプレーヤー部門の対象として工藤公康が候補者入りしているのは当然だと思うが、藪恵壹もそうだというのには首を傾げざるをえない。候補者はしょせん候補者だということかもしれないが、殿堂のドアの外に多くの偉大なレジェンド達が待たされている(放置されている?)中で、このようなことで良いのかと思う。その点「名球会」は、その基準が(是非は別にして)2000本安打または200勝と極めて明快で、ある意味では公平だ。

もちろん、投票という主観的手法にはその良さがある。通算の安打数や勝利数以外にも価値観はある。しかしそれも程度問題だ。この問題を解決せずして殿堂入りの地位向上はないだろう。

また、名球会のほうが広く認知されている要因として、その入会決定の瞬間のパブリシティ効果があると思う。

名球会入りを決めるのは、引退後長年を経た若いファンには馴染みのない伝聞の世界の元選手ではなく、日々球場で応援している贔屓選手だ。毎日応援している現役選手たちが、ある種野球人としての究極の域に達する瞬間を球場に居合わせるなり、テレビ観戦するなりして共有できるのだ。この点で名球会は圧倒的に有利で、殿堂は歯が立たない。

しかし、殿堂にも比較的簡単でそれこそ来年からでもできることがあると思う。それは、専用の表彰式を行うことだ。

毎年、殿堂入り表彰者の式典はオールスターゲームの試合前に行われている。確かにそれは一つの方法だと思う。大観衆が見守っているし、テレビ中継される。でも、そろそろ止めたほうが良い。観衆もテレビ桟敷のファンもそのほとんどは、球宴がお目当てだからだ。

ある年など、式典中テレビ中継のアナウンサーと解説者はその後に行われる本塁打競争の話題で盛り上がり、表彰式をほぼ無視していた。見ていて哀しくなった。

現在の表彰式は前座の余興でしかない。格式あるホテルやホールでテレビ中継付きでやって欲しい 。「おまけ」で開催されている限りは主役にはなり得ない。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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