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理念や戦略がなく実務に終始した交流戦議論

豊浦彰太郎Baseball Writer

11日に行われたNPBの代表者会議で、来季から交流戦が現行の24試合制から18試合制に変更されることが決まったようだ。そのこと自体はどちらでもよいと思う。しかし、腑に落ちないのはその変更理由だ。理念や戦略ではなく主として日程編成という実務上の要因で決定されているのだ。

2連戦を組み合わせる現在の交流戦日程は試合が組まれない日が多く発生することで、公式戦全日程消化が難しいのだと言う。それが11月に予定される「侍ジャパン」の国際試合の日程にも影響を与えかねないそうだ。

一見もっともらしいが、それで良いのだろうか。公式戦全日程消化が難しくなるのなら、無数に設定されている移動日を潰していけばよい。オペレーション上の問題はオペレーション上の工夫により解決すべきではないか。それがなぜ交流戦の試合数という戦略に影響を与えるのか。「侍」は確かに重要な事業だと思うが、それが公式戦よりも優先されるべきことなのか。

これは突き詰めれば、交流戦に戦略や理念が欠けているからではないか。NPB全体の中・長期戦略(あればだが)の中で交流戦が担う役割や位置付けは何なのか?交流戦導入により何を実現したかったのか?単に観客動員という点だけではなく、ファン開拓・育成、スポンサーシップなどを総合的に踏まえた戦略的位置付けは何だったのか?

そもそも、理念や戦略は実務よりも上位に位置する概念だ。NPBの戦略上、交流戦の重要性が確立されていればおのずと必要な試合数も導き出されるはずだ。そうであれば、実務部隊から「日程編成が難しい」と嘆願されても「それをやりくりするのがアンタの仕事」と一蹴すれば良いだけの話だ。しかし、現実にはそれが全く確立されていなかったため、単に実務的な要因を盾に揺さぶりをかけられると反論する論拠がなかったのだろう。それなら、代表者が集まる必要はない。遠征の手配担当者が集まり、「スジ屋」のような議論で効率的な移動手法を議論すれば良い。

それとも、巷噂されているように「日程編成上の難しさ」は取ってつけた理由で、本音はセ・リーグ各球団が「巨人戦(阪神戦)が減るのは困る」ということなのか。仮にそうならそれを移動日の多さや雨天中止の懸念などにすり替えずに、正々堂々と「パ・リーグと戦っていると売り上げが減って困る」と主張すべきだ。お天道様のせいにするのはもっての外だ。その上で、運命共同体としてセ・パ両リーグが全体の売り上げ増に繋がる策は何か、大いに議論して欲しい。問題の本質から目をそむけている限り根本的な解決は無い。12球団の代表者が集まって話し合うなら、理念や戦略を、理想論を踏まえ互いの利害を主張して欲しい。それが経営者の会議ではないか。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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