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「誤った情報が掲載」「30分ずっと電話が鳴る」 1年半前に炎上するも、飲食店がまだAI電話予約に迷惑

東龍グルメジャーナリスト
(写真:イメージマート)

AIによる電話予約

このゴールデンウィークはどこかに食べに行きましたか。もしくは、これから食べに行く予定はあるでしょうか。こういった繁忙期に外食するのであれば、完全予約制のレストランに訪れるのではなくても、予約した方がベターです。

ただ、飲食業界はあまりデジタル化が進んでいないので、インターネットには対応しておらず、電話からしか予約を受け付けていない飲食店も少なくありません。電話予約はハードルが高いと感じる人も多いでしょう。

このような人にとって、新しい画期的なサービスが登場したと以前記事を書きました。

画期的なAI電話予約が飲食店に迷惑をかけて大炎上? サービスを運営する社長の見解を全文公開/Yahoo!ニュース

そのサービスとはハローが運営する「オートリザーブ(AutoReserve)」。アプリやインターネットから店を選び、日時や人数などを選択します。すると、AIが自動で営業時間になったら電話し、つながるまで架電し続けるというサービスです。

少なからぬ飲食店から迷惑しているという声が挙がり、私も直接相談を受けました。そして、ハロー代表取締役社長を務める播口友紀氏のコメントと共に、この事案について記事を書いたのです。

飲食店から相談

播口氏からは利用者と飲食店のためを考えたサービスであると、思いの込もったメッセージが寄せられました。ただ、最近になって、飲食店からまだ迷惑を被っているという相談を受けたので、改めて当事案を取り上げることにします。

相談が寄せられたのは、富山県の和食店から。その訴えとは次の通りです。

「被害はやはり沢山のお店の方がSNSで書かれている自動音声で連続でかかってくる電話です。 私の時はオープンの時間にかかってきて30分ほど続きました。

対策として私の電話機に着信拒否の機能が付いていたので設定しました。 すると翌日お客様になかなか電話が繋がらなかったと言われ電話機のメーカーに問い合わせると、着信拒否設定にするとオートリザーブからの電話は鳴らないのですが説明しずらいのですが、オートリザーブから電話があると電話機の内部的にオートリザーブと暫くつながって拒否しているらしくそれが重なると話し中になるようでした」

※原文ママ

開店した直後は入店客の応対もあってバタバタするものですが、30分くらいはAIから電話がかかってくるということです。対策として着信拒否にしますが、そうなると話し中になってしまい、他の電話が受けられないので、それはそれで困ってしまうということ。

話はまだ続きます。

「あとよく聞くのは、オートリザーブが勝手に掲載しているお店の定休日や営業時間、価格が誤って表記されている事です。これは他のグルメサイトにも当てはまりますが、昨今の材料、光熱費の値上がりに伴って値上げやメニュー構成、営業時間の見直しをしたお店が多いのですが、古いデータを見て来たお客様がネットで調べたのと値段が違うなどの小さいクレームもよくあります。お客様はお店の公式ページもグルメサイトも同じ様に捉えるので迷惑している所は多いです。

消費者センターや公の機関に何件か相談してみましたが特殊すぎてなかなか難しいです」

※原文ママ

コロナはもちろんのこと、材料や光熱費の値上がりによって、店舗の状況もだいぶ変わっています。ただ、店舗に確認することなく情報を掲載しているので、誤っていることが少なくありません。値段が違っている場合には、致命的なクレームにつながることもあります。

消費者センターや公の機関に相談しても対応してもらえず、速やかに店舗情報を削除してもらえなければ、為す術がないといえるでしょう。

改めて、なぜ飲食店がAI電話に困惑しているのか、説明していきます。

ますます電話対応が負担

飲食店にとって電話対応は大きなコストです。そのため、TableCheck(テーブルチェック)やトレタのような飲食店予約サイトを利用する飲食店が増えています。

客は入店して、オーダーし、食べて飲んで、会計を支払い、退店するだけです。しかし飲食店は、営業前には、食材やおしぼりなどの受け取り、仕込み作業は当然のことながら、テーブルのアレンジやセッティング、事前ミーティングがあります。そこから営業時間となって調理やサービスを行い、営業が終了してからも片付けや振り返りミーティングがあるのです。

電話対応は、もちろん営業時間内の方が大変ですが、営業時間外でも楽ではありません。加えて、誤った情報をもとにして架電されたり、架電してもらいたい時間を指定できなかったりすれば、なおさら困ることは容易に想像できます。

コミュニケーションがとれない

飲食店と客の関係性は、予約から始まります。リピーターでなければ、飲食店にとって唯一の事前情報が予約内容であり、それが客の食体験を左右します。

したがって、予約する際のコミュニケーションが重要です。客が一方的に伝えたいことを伝えれば終わりではありません。客の質問や要望に対して、飲食店から、これではどうか、あれではどうかと提案があります。インターネット予約であっても、飲食店から改めてメールや電話があるので、コミュニケーションが成立しているといえるでしょう。

飲食店は客に最高の食体験をしてもらいたいので、アレルギーや好き嫌いの程度をしっかりと確認します。どれくらいの分量であれば大丈夫か、見た目がダメなだけか、ピューレにすれば食べられるかなど、極めて重要です。シチュエーションも大切で、カップルであれば初デートなのか、記念日なのか、プロポーズなのか、結婚記念日なのかによって、オファーできる内容も異なります。

AIによる一方的で定型的な予約であれば、こういったコミュニケーションがとれません。飲食店と客にとってベストな予約が成立するのは難しいといえます。

引き続き飲食店が困惑

誤った店舗情報を掲載し、AIが繰り返し架電するのは、飲食店にとって困ることです。さらに、予約者とコミュニケーションがとれないので、食体験の向上も図れません。

Twitterでオートリザーブについて検索すると、飲食店が投稿したと思われる困惑のツイートが散見されます。

オートリザーブ - Twitter検索/Twitter

以前に記事を書いてから既に1年半前が経過していますが、飲食店が迷惑を被っていることに対して、残念ながら改善がみられたように思えません。オートリザーブがどこまで飲食業界の声に耳を傾け、どのように飲食店に寄与したいのか、再び疑問が投げかけられます。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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