Yahoo!ニュース

画期的なAI電話予約が飲食店に迷惑をかけて大炎上? サービスを運営する社長の見解を全文公開

東龍グルメジャーナリスト
(写真:アフロ)

飲食店の予約

飲食店を利用する際に予約をしますか。

コロナ前になりますが、ホットペッパーグルメ外食総研による2019年の調査によれば、外食する店を事前に予約する割合は27.1%であり、そのうちインターネット予約率は10.1%で年々増加しているといいます。

2019年度外食&中食動向(2019年4月~2020年3月:東名阪夕食)(ホットペッパーグルメ外食総研)

コロナ禍を経た現在では人々の外食に対する意識も行動も変容したといわれているので、現在調査を行えば、変動があるかもしれません。

ただ、3人以上であったり、何かしらの記念日なので確実に食事したかったり、ファインダイニングであったりすれば、普通は予約するものではないでしょうか。

画期的なAI電話予約

飲食店の予約はインターネットでも手軽に行える時代になりましたが、予約が面倒だと思う人も少なくありません。手数料を取られることもあって、インターネットの予約に対応していない飲食店もまだまだあります。そのような場合には電話で予約しなければなりません。

このような電話予約を代行してくれる便利なサービスがあります。それはハローが運営する「オートリザーブ(AutoReserve)」。アプリやインターネットから店を選び、日時や人数などを選択すると、AIが自動で電話をして予約してくれるという画期的なもの。

「オートリザーブ(AutoReserve)」AIが電話予約の代行してくれる神アプリ(カミアプ)

お店への予約電話をアプリが代行。自分で電話する必要なし(HizaPon)

営業時間になったら自動で電話し、つながるまで架電してくれるという驚くべきサービスです。

飲食店に迷惑がかかっている

しかし、このAI電話予約が飲食店に迷惑をかけているという話を、ある飲食店から聞きました。

調べてみると、全国の飲食店で、このAI電話予約サービスに対して批判の声が上がっていることがわかったのです。

ごはんや・はっち - 投稿(Facebook)

お客様へ重要なお知らせ(焼肉の大昌園)

※「Auto Reserve」という予約サイトにご注意ください!(のらや)

オートリザーブという予約アプリは当社では使えません。(出雲そば 羽根屋)

当店は予約代行サービス「オートリザーブ」からの予約はお受けしておりません。(森のレストラン ラッキーガーデン)

当店では「AutoReserve(オートリザーブ)」からの予約は一切受け付けておりません。(ナポリのかまど)

当店は予約代行サービス「AutoReserve(オートリザーブ)」からの予約は一切受け付けておりません(ステーキハウス柏みその)

Pizza e Bar Tempio(Facebook)

批判の内容

批判の内容は次の通り。

AI電話予約サービスは、飲食店と提携や契約を交わしておらず、無断でサイトに掲載しています。そのため、掲載されている情報に誤りがあったり、その場合に修正ができなかったりすることも。空席情報や臨時休業も反映されません。

相手がAIなので、確認したいことがあっても確認できなかったり、伝えたい事項があっても伝えられなかったりします。そもそも、AIからの架電に驚いて戸惑う飲食店がほとんど。

これだけ多くの飲食店がAI電話予約を拒否し、公表しているのも仕方ないように感じられます。

では、なぜこのようなことが起きたのでしょうか。

飲食店にとって電話応対はコスト

飲食店にとって電話は大きなコストです。そのため、TableCheck(テーブルチェック)やトレタのような飲食店予約サイトを利用する飲食店が増えています。

ゲストは入店して、オーダーし、食べて飲んで、会計を支払い、退店するだけです。しかし飲食店は、営業前には、食材やおしぼりなどの受け取り、仕込み作業は当然のことながら、テーブルのアレンジやセッティング、事前ミーティングがあります。そこから営業時間となって調理やサービスがあり、営業が終了してから片付けや振り返りミーティングがあるのです。

電話応対は、もちろん営業時間内の方が大変ですが、営業時間外でも楽ではありません。飲食店にとって電話応対はコストがかかるので、効率よく済ませたいです。

したがって、誤った情報をもとにして架電されたり、架電してもらいたい時間を指定できなかったりするのは困ります。

相互コミュニケーションの必要性

飲食店とゲストの関係性は、予約から始まります。リピーターでなければ、飲食店にとって唯一ともいえるゲストの事前情報が予約内容であり、それがゲストの食体験を左右します。

したがって、予約する際には双方向性が重要です。ゲストが一方的に伝えたいことを伝えれば終わりではありません。ゲストの要望に対して、これはどうか、あれではどうかと問えることこそが大切です。インターネットでの予約でも、要望を書くと飲食店から質問や確認のメールがあるので、相互コミュニケーションが成立しているといってよいでしょう。

飲食店はゲストに最高の食体験をしてもらいたいので、特にアレルギーや好き嫌いはどれくらいの程度かをしっかりと確認しておきたいと考えています。どれくらいの分量であれば大丈夫なのか、見た目がダメなだけか、ピューレにすれば食べられるかなど、飲食店にとっては非常に有益な情報です。

シチュエーションも重要で、カップルであれば初デートなのか、記念日なのか、プロポーズなのか、結婚記念日なのかによって、オファーできる内容も異なります。

こういった相互コミュニケーションがとれないのであれば、予約サービスが成立するのは難しいといえるでしょう。

繁忙期になるとただでさえ電話がとれない

電話応対はコストを要しますが、そのコストは時期によってだいぶ異なります。一般的な飲食店であれば、2月と8月は閑散期なので、予約の電話が鳴るのは喜ばしいことでしょう。しかし、繁忙期である12月、3月と4月であれば、必ずしもその限りではありません。

現在はまだ11月ですが、11月中旬以降は12月の予約がかなり入る時期。先に名を挙げた大手飲食店予約サービスのTableCheckによれば、11月15日週の予約数は前週比107%となっており、増加に転じています。

こういった繁忙期はただでさえ電話をとるのが大変であるだけに、飲食店にとって非効率な架電は迷惑です。

最近になって、AI電話予約に対する声が大きくなっているのは、こういった時期的な背景もあるのではないでしょうか。

運営するハロー代表取締役社長の話

では、AI電話予約の運営側はこのような批判をどのように捉えているのでしょうか。

運営するハローの代表取締役社長を務める播口友紀氏からコメントが寄せられたので、以下にそのまま掲載します。

AutoReserveを運営する株式会社ハローの代表をしております、播口と申します。

この度は、弊社の情報共有不足により飲食店の皆様にご迷惑をおかけしておりますこと、お詫び申し上げます。グルメジャーナリストの東龍様より、オートリザーブのサービスについてお話しする機会をいただきましたので、会社を代表して私がお答えさせていただければと思います。

私は現在29歳ですが、20代前半の頃から年間数百店舗外食するくらい食が好きです。その中で感じたのは、電話予約の店舗が80%以上を占めるという、日本におけるネット予約の普及の遅さです。

例えば「予約したい」と思いたったのが深夜だった場合は、翌日に忘れずに電話をかけないといけません。直前だった場合は、どのお店が空席かが分からないため、いくつか候補のお店をリストアップしたのちに順々に電話をかけ続ける必要があります。

そしてお店にとっても、無断キャンセルの場合、泣き寝入りするしかないという問題が発生していました。

そうした両者の負を解決したいと考え作られたサービスが、オートリザーブです。

まず、お客さま側の負を解決するために、電話予約しかできないお店に対してはオートリザーブが間に入り、必要な情報(日時・名前・電話番号)をAIが簡潔にお店に伝えるというシステムをつくりました(※ここで満席と操作していただいた場合は、同じ時間の予約において何度も電話がかかることはないので、お店にとってもメリットになると考えております)

そしてまた、お店側の負である無断キャンセルを防ぐため、必要であれば事前にクレジットカードなどの情報をした方のみ予約できるという仕組みも取り入れました。

このように電話予約のお店もネット予約のように取れるようにすれば、予約をする側の負担も減り、お店にとっても無断キャンセルなどの問題を解決できると考え、作られたサービスになっています。

オートリザーブをリリースしてから、ユーザーの皆様・飲食店の皆様には嬉しいお言葉もたくさんいただき、累計予約数は10万件、累計の予約をしたレストラン数も5万店舗と、オートリザーブを通した飲食店への累計の売上貢献はおよそ15億円となっております。現在も月に数万件以上の予約リクエストを処理しており、その中でユーザー様やお店様からいただいた要望を元に機能改善をさせていただいておりますが、成長に手が追いついていなくご迷惑をおかけしているお店様もいらっしゃるのが現状だと認識しております。申し訳ございません。

いくつかの店舗様よりいただいているコメントについてこちらでお返事できればと思います。

■「無断掲載」について

オートリザーブはGoogle Mapsやその他大手グルメサイトのようにユーザー様からの投稿やインターネットに公開されている情報を元に店舗ページを作成させていただいております。そのため、他社様と同様に情報が古かったり不正確である場合もあります。そちらの情報が正しくなかった場合、店舗様での情報修正も可能ですし、ユーザー様による情報修正の提案も受け付けており、3営業日以内に対応させていただいております。

■「お客様に確認したいことやお伝えしたいことができないこと」について

自動音声から予約を受けた後にお客様に伝えたいことを話せるようになっております。そこで話した内容は自動で文字起こしされ、お客様に通知されます。また、お店からの質問や注意事項をお客さまの予約画面に常時表示させる設定も可能です。また自動音声で対応できない内容がある場合も、同一の電話内で弊社オペレーターにお繋ぎし対応することが可能ですので、ご活用いただきたいと思っております。

■「自動音声からの電話により手間が増えること」について

忙しい時間帯にかかってきてほしくない店舗様には、オートリザーブからの電話を受け付ける時間を設定させていただいております。これにより余裕のある時間のみオートリザーブからの予約電話を受けるということも可能です。また、一度断った時間帯は自動で予約不可になりますので、他のお客様がその時間帯の予約をできなくなります。例えば明日金曜日は満席なのに、電話が来るたび「明日の金曜は満席なんです。申し訳ありません。」と伝えなければいけない手間を削減できるようになっています。

また、1回の電話でオートリザーブが受けている店舗様への複数の予約を全てお伝えさせていただきますので、都度それぞれのお客様から予約電話を受けるより手間は削減されるかと思います。例えば月初に一斉予約のあるお店様では、弊社から1日に200件以上の予約リクエストをお伝えするのですが、店舗様はそちらを1回の電話のみで対応できるようになっております。お客様から都度200件の予約電話を受けるより手間が削減されると思います。

また、自動音声の予約電話が聞き取りづらいなど、自動音声に対して抵抗のある店舗様には、弊社のオペレーターによる予約電話に変更もさせていただいておりますので、遠慮なくお伝えいただければと思います。

■「勝手に掲載や予約を流していてお金を取っている」について

掲載および予約手数料はともに無料となっております。

■「キャンセル料を代わりに支払ってくれるのか」について

キャンセル規定がある店舗様に関しては、キャンセル規定をオペレーターにお伝えいただければ、ユーザー様が店舗様の予約をしようとするときにクレジットカード登録を必須にすることができます。来店しなかった場合やユーザー様がキャンセルしようとするときは、登録したカードからキャンセル料を引き落とし、店舗様に振り込みをさせていただいております。

以上、簡単ですが回答させていただきました。

本来であれば協働していくべき店舗様方にご迷惑をおかけしており、あらためて申し訳なく感じております。

これからもユーザー様、店舗様、双方にとってより良いサービスを作り、飲食業界に貢献して行ければと思っておりますので、何卒よろしくお願いいたします。

※原文ママ

飲食店にとって役立つサービスなので両者の理解を期待

オートリザーブに掲載されている飲食店の情報はGoogle Mapsなどから参照されており、修正も受け付けています。AI電話予約で話した内容は自動で文字起こしされてゲストに知らされたり、飲食店からの質問や注意事項をゲストの予約画面に常時表示させたりすることも可能。さらには、自動音声で対応できない場合には、同社オペレーターにつなぐこともできます。

飲食店が困惑していることは事実ですが、播口氏は飲食店が大好きでサービスを立ち上げており、目指すものは共感できるところ。手数料が無料となっているのも、飲食店が好きだからこそです。

飲食業界が盛り上がっていくことには大賛成です。多くの人が飲食店に訪れて素晴らしい食体験をし、飲食店で食事することの楽しさや幸せを感じてほしいと願っています。飲食店にとっても、予約が増えることは喜ばしいことなので、飲食店の予約を促進するAI電話予約のようなサービスは応援したいです。

ただ、飲食業界は個人事業主が多く、保守的な業界であることは否めません。それだけに、企業が行う事業であれば、それぞれの飲食店に対して、慎重かつ細やかなコミュニケーションが行われる必要があるように思います。

飲食店とゲストにとって素晴らしい未来を描いているだけに、オートリザーブと飲食店の相互理解が進むことを心より期待したいです。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

東龍の最近の記事