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2020年に大反響のあった食の事件トップ5 アンジャッシュ渡部建氏をおさえて1位となったのは……

東龍グルメジャーナリスト
(写真:Paylessimages/イメージマート)

コロナ禍と関係のない食の事件

昨年2020年は新型コロナウイルスのニュースが多くを占めており、実際に私もコロナ禍における飲食店の記事をたくさん書いてきました。

ただもちろん、コロナ禍とは関係のない食の記事も書いています。注目したいレストランのプロモーションやトレンド、新料理長の就任から新しい飲食店についてなど、色々なものを紹介してきました。それ以外にも、食の事件について考察や意見を述べた記事も出しています。

ここ数年は毎年、食の事件を振り返っていたので、2020年に関してもどのような事件が起こったのか振り返ってみたいです。

2020年に公開した記事の中で、PV(ページビュー)をもとにし、TwitterやFacebookなどでの反応も加味したランキングをつくりました。

それぞれの記事を紹介しながら、コロナ禍と関係のない食の事件を振り返ってみましょう。

5位/大食い禁止

中国で大食いを禁止するというニュースが報道されました。大食いする映像が人気を集めており、中国政府がこのような動画の投稿を取り締まるというのです。背景には、2020年8月11日に習近平国家主席が食べ物を粗末にしないよう求めたことがあります。

日本でのインターネットの反応を見てみると様々な意見が飛んでいるようですが、概ね賛成のようです。

中には「日本でも大食いを禁止にするべきだ」という声もありましたが、私はあながち間違っていないように思います。

なぜならば、大食いそのもの、および、大食いをコンテンツとする番組や動画があまり好ましくないと考えているからです。それを6つの理由を挙げて説明しました。

法的に禁止するところまでいくと過剰かもしれません。しかし日本でも、本当に大食いがよいかどうか、大食いが今の時代に相応しいコンテンツであるのかどうかを、改めてよく考えてみる必要があると考えています。

4位/無残な食べ残し

あるパティスリーがFacebookページに投稿した内容が話題となりました。

不定期で行っているケーキ食べ放題イベントの片付けをしていたところ、客が食べきれなかったケーキを、おしぼりで包んだり、トレーとトレーの間に挟んだりして、隠していたというのです。

他にも、食べ放題に参加していない客とケーキのシェアをしたりと、全くルールを守っていない客が複数いたといいます。

このようなルール違反や非常識がなぜ行われてしまうのかを、記事の中で考察しました。

日本はおいしいものを作る技術やストイックな哲学が世界から評価されています。これからは、おいしいものを食べるための心持ちや教育が必要となる段階になるのではないでしょうか。

3位/無料の薬味

女優の飯島直子氏が、ある番組で好物の牛丼を食べ、独自の食べ方や哲学を披露しました。

飯島氏は牛丼店の「松屋」で「おろしポン酢牛めし」を半熟卵と共にテイクアウトし、無料の紅生姜や七味唐辛子をもらっていくといいます。食べ方は、「おろしポン酢牛めし」の上に半熟卵をのせてから紅生姜を散らし、最後に七味唐辛子をかけるというもの。

その時に使われた紅生姜が全部で10袋を超えており、丼の表面が真っ赤に見えるほどであったことから、賛否両論がありました。

記事ではこの行動がなぜ好ましくないのかを4つの観点から考察しています。

テレビは昔に比べれば視聴者数が激減しているものの、やはり最も影響力のあるメディアに間違いはありません。したがって今回のように食に配慮しないコンテンツが多いのは残念です。

牛丼店は日本全国にあり、牛丼は日本人のソウルフードのひとつであるだけに、もう少し牛丼について深掘りしたコンテンツを制作してもらえることを願います。

2位/芸能界のグルメ王

週刊文春がお笑い芸人アンジャッシュの渡部建氏による不貞行為をスクープしました。

渡部氏といえば、芸能界きっての食通として有名であり、芸能界のグルメ王と称されることも多いです。訪問した名店の数、グルメに関する見識、飲食関係者との人脈は、食を専門とする人々でも驚かされるほどであり、芸能界にあっては図抜けた存在であるといってよいでしょう。

食の世界で大きな貢献を果たしてきたことは誰もが知るところですが、この件によって食の世界で活動していくことは非常に難しいと思います。なぜならば、紹介者のイメージが飲食店や食べ物に投影されるからです。

そして、この芸能界のグルメ王として渡部氏を語る上で、避けて通れない人物がいます。

それは、食べログの超有名レビュアー「うどんが主食」氏です。

この記事では、渡部氏の功績を改めて振り返ると共に、「うどんが主食」氏に対する残念な言及についても触れています。

美食家は昔から存在していますが、波乱万丈の人生を送った人物も多いです。渡部氏には、再び食の素晴らしさを伝えていってもらえる機会があればと願っています。

1位/社長による張り紙

1位となった記事はこちらです。

大手外食チェーンの中でも、連日ニュースで賑わしているところといえば、全国に450店舗ほどを展開する「いきなり!ステーキ」。

同店を運営しているペッパーフードサービス創業社長である一瀬邦夫氏は、強いリーダーシップと個性的な哲学をもっており、よくメディアにも露出しています。店頭には等身大くらいの大きな写真が掲載されているので、一瀬氏を見たことがある人は多いのではないでしょうか。

その「いきなり!ステーキ」が経営不振のため、2019年12月に社長直筆の張り紙を全店舗に掲出。しかし、一方的な事情だけが述べられていたことから、あまり消費者の共感が得られませんでした。

しかし、2020年1月に2度目が、2月には3度目の張り紙が掲載されたのです。この3度目の張り紙の内容は、外食業界やレストランに関する誤解が広まるおそれがありました。そのため、なぜダメなのかという3つの理由を説明した記事を書いたのです。

一瀬氏は耳目を集める存在であるだけに、外食産業の発展と地位向上を進めてもらえると、なおよいのではないかと思います。

外食産業に活気が戻ることを切に願う

2020年は新型コロナウイルスに翻弄された一年でした。飲食業界は特に大きな打撃を受けた業種のひとつ。

新型コロナウイルスの感染には波があり、落ち着いた頃に、ここで紹介したような事件が起こりました。炎上を含む食の事件は、常にどこかで起きていますが、コロナ禍にあっては、よくも悪くも注目される余裕がありません。

食の事件が起こることがよいわけではありませんが、飲食店の存亡危機の話題ばかりでは心苦しいです。2021年も新型コロナウイルスの影響がまだ続きますが、外食産業に少しでも活気が戻ることを切に願います。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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