品川に楽譜をテーマとした「ザ・スコア・ダイニング」オープン 美食にまつわる3つの謎

メロディア@ストリングスホテル東京インターコンチネンタル/ホテル提供

今年オープンした美食の施設

美食という観点から、今年はいくつかの注目するべき施設がオープンしました。

東京會舘が1月8日に「NEWCLASSICS.」=「新しくて伝統的」というコンセプトを掲げて開業。名門フレンチ「レストラン プルニエ」と新しい鉄板焼店「TOKYO KAIKAN 會」が話題となりました。

ハレクラニ沖縄は7月26日沖縄県・恩納村にオープン。ミシュランガイド二つ星「フロリレージュ」オーナーシェフである川手寛康氏が「イノベーティブ シルー」をプロデュースしたとあって、美食家も訪れています。

9月12日にはThe Okura Tokyoが華々しく開業。オークラのフレンチを受け継ぐ「ヌーヴェル・エポック」、広東料理の先駆け「桃花林」、根強いファンをもつ日本料理「山里」、高層階に生まれ変わった「さざんか」などの名店にゲストが押し寄せています。

新しくオープンした施設に大きな期待が寄せられるところですが、リノベーションで生まれ変わった施設も見逃せません。

中でも注目は、2019年最後にリノベーションオープンしたストリングスホテル東京インターコンチネンタル。

これまであった全ての料飲施設を春から改装し、「ザ・スコア・ダイニング」というスタイリッシュなダイニングエリアを12月11日にグランドオープンしました。

コンセプト

ザ・スコア・ダイニング(ストリングスホテル東京インターコンチネンタル)/著者撮影
ザ・スコア・ダイニング(ストリングスホテル東京インターコンチネンタル)/著者撮影

「ザ・スコア・ダイニング」は音楽の「楽譜」=「Score」=「スコア」になぞらえた複合的な料飲施設。ホテル名の「ストリングス」が「弦」を意味することからも、ストリングスホテル東京インターコンチネンタルにぴったりの施設名でしょう。

地上110メートル、天井高27メートルという開放感溢れるアトリウムに位置しているのも、魅力的な特徴です。

4つのレストラン&バー

  • カフェ&バー「リュトモス」
  • イタリアングリル「メロディア」
  • 中国料理「チャイナシャドー」
  • 鉄板焼「風音(かざね)」

全部で4つのレストラン&バーを擁し、「リュトモス」「メロディア」「風音」には名前に音楽の要素を取り入れており、「チャイナシャドー」はリノベーション前と同じブランドが命名されています。

レストラン&バーの概要

「ザ・スコア・ダイニング」の料飲施設を、入口に近い方から順番に紹介していきましょう。

リュトモス/ホテル提供
リュトモス/ホテル提供

「リュトモス」はギリシャ語でリズムを意味するカフェ&バーです。リズムからインスピレーションを得たデザインで統一されており、バックバーの曲線美が印象的。ティータイムにはアフタヌーンティー、夜にはライブミュージックと共にカクテルをはじめとしたお酒が楽しめます。

メロディア/ホテル提供
メロディア/ホテル提供

「メロディア」はイタリア語でメロディを意味するイタリアングリル。空中に浮かんだ音符を思わせる照明が目を引きます。グリルを用いたイタリア料理が中心となっており、コースもアラカルトも提供。自家製パスタや皿の上で表現される多彩なプレゼンテーションが特筆するべき点です。

チャイナシャドー/ホテル提供
チャイナシャドー/ホテル提供

「チャイナシャドー」はラテン語の「ハルモニア」=「ハーモニー」=「調和」をテーマとした中国料理。リニューアル前と同様にオーセンティックなチャイニーズキュイジーヌが味わえますが、モダンな食材や調理法も取り入れています。

風音/著者撮影
風音/著者撮影

「風音」は「リュトモス」と「メロディア」の奥に位置する鉄板焼。リズム、メロディ、ハーモニーの3要素が紡ぐ美しい音楽に、鉄板で焼かれるシズル感溢れる食材のおいしい調べがのせられます。料理長を務めるのは洋食も得意な瀧澤経氏、シェフを務めるのが鉄板焼のキャリアが長い佐藤千晶氏。コースの流れは和の鉄板焼ですが、洋のニュアンスが随所にちりばめられています。

総料理長はオリヴィエ・ロドリゲス氏

総料理長のオリヴィエ・ロドリゲス氏/ホテル提供
総料理長のオリヴィエ・ロドリゲス氏/ホテル提供

「ザ・スコア・ダイニング」が擁する魅力的なレストラン&バーを統括するのが、総料理長のオリヴィエ・ロドリゲス氏。

フランス・トゥールーズ出身で、フランスやイタリアで研鑽を積んでいるので、フランス料理はもちろんのこと、イタリア料理も専門とします。

2000年には東京に場所を移し、「エノテカ・ピンキオーリ」で働き始め、2001年シェフに就任。2005年からは、新しくオープンしたマンダリン オリエンタル 東京のフランス料理「シグネチャー」でシェフを務めました。2007年にミシュランガイド一つ星を獲得し、退任するまでの7年間、安定して星を維持。直近ではネオビストロ「& ecle(アンドエクレ)」のオーナーシェフとして経営と調理に尽力しました。

そして2019年1月に、ストリングスホテル 東京インターコンチネンタルの総料理長に就任。「ザ・スコア・ダイニング」をゼロから創り上げ、料飲部門の全メニューを監修し、「メロディア」では料理長の山本健太郎氏と共にロドリゲス氏が腕をふるいます。

ロドリゲス氏は日本語が堪能で、日本の食材や文化にも造詣が深い稀有な料理人。日本のマーケットを知悉しており、日本の食材と海外の食材を上手に組み合わせることが得意です。

グリルと鉄板焼

グリル料理@メロディア/ホテル提供
グリル料理@メロディア/ホテル提供

以上のように「ザ・スコア・ダイニング」は魅力的な施設になっていますが、実はさらなる魅了を秘めています。その魅力をもっと知るために、ある3つの謎を紐解いていきたいです。

最初の謎はこちら。

どうしてイタリアングリルと鉄板焼の2つの「焼き業態」が存在しているか、ということです。

グリルで焼くのと鉄板で焼くのとでは、肉も魚も野菜も全く仕上がりが異なります。しかし、焼くことをメインにしていることに変わりないので、この2つの業態が同じホテル内にあることは多くありません。

また、グリルを行うにはグリルの什器を新しく備え付けたり、鉄板焼をするには大掛かりな鉄板カウンターを設置したりと、費用もかかります。

前沢牛のサーロインと佐賀牛のフィレ@風音/著者撮影
前沢牛のサーロインと佐賀牛のフィレ@風音/著者撮影

それでも、グリルと鉄板焼をつくったのは、ストリングスホテル東京インターコンチネンタルには欧米を中心とした外国人のゲストが多いからです。欧米の方はステーキが好きなので、「メロディア」ではグリルステーキを、「風音」では黒毛和牛の鉄板ステーキを提供しようということになったのです。

ロドリゲス氏による「メロディア」のステーキと、瀧澤氏による「風音」のステーキを食べ比べてみるのも面白いかもしれません。

「チャイナシャドー」の意義

前菜@チャイナシャドー/ホテル提供
前菜@チャイナシャドー/ホテル提供

次の謎は「チャイナシャドー」の店名。

どうして「チャイナシャドー」だけが、4つのレストラン&バーの中で唯一継承されたブランドなのでしょうか。

品川には大企業のオフィスがたくさんあります。パワーランチから接待までホテルのレストラン利用が見込まれますが、中でも使いやすいのが中国料理。なぜならば、日本人は中国料理が好きであり、個室も設けられていて込み入った話もしやすいからです。

「チャイナシャドー」は法人利用も多いだけに、ブランド名を変更してしまうと、それまでの関係が途絶えてしまいます。そのため、同じブランド名を継承したのです。

しかし、同じブランドだからといって、以前と全く同じではありません。これまではオーセンティックな中国料理を提供していましたが、今後は王道の中国料理を提供しながらも、和の要素を存分に取り入れたフュージョン料理も提供します。

プロモーションも積極的に行い、新しい試みを取り入れるということなので、モダンチャイニーズキュイジーヌも味わえそうです。

「チャイナシャドー」はこれまでのゲストを大切にしつつも、さらなる進化を遂げていく役割を担っているといってよいでしょう。

「リュトモス」の場所

シグネチャーカクテル「TSUKASA」@リュトモス/ホテル提供
シグネチャーカクテル「TSUKASA」@リュトモス/ホテル提供

最後の謎は、どうして「リュトモス」が入り口に最も近い場所にあるのか、ということです。

バーはリノベーション前にもありましたが、少し奥の方にあってそれほど目立っていませんでした。しかし、「リュトモス」はロビーに入ってすぐの場所に位置しているのです。

総支配人を務める秋間友氏は「ますます訪日外国人が増えており、海外のゲストはお酒の飲み方が上手。そのため、利用しやすい場所にバーを設けて、東京のバーシーンをもっと盛り上げていきたいと考えた」と答えます。

シニアバーテンダーを務める高橋司氏の存在も大きいです。「KASHIWA WHISKY FORUM 2014」で優勝したり、「ヘネシー XO カクテルコンペティション 2018」でファイナリストとして残ったりするなど、実力には定評があります。この高橋氏のカクテルをもっと多くのゲストに楽しんでもらいたいという考えもあるのです。

また、最初に「リュトモス」でシャンパーニュやカクテルなどの食前酒を飲んでからレストランを利用するという流れもつくれます。

東京には夜遊びできる場所が少ないといわれているだけに、「リュトモス」の存在は大きな意味をもつのではないでしょうか。

食と音楽

食と音楽はあまり結びつかないイメージがあるかもしれませんが、そういうことは全くありません。

ガラディナーにミュージックライブショーが合わせられたり、バーラウンジで生演奏が行われたりするのは、とても一般的なことです。また、イタリアのオペラ作曲家ジョアキーノ・ロッシーニが考案したフォアグラとトリュフの取り合わせが「ロッシーニ風」と命名されるなど、音楽家が美食に関わっていることもあります。

ロドリゲス氏も「食と音楽の組み合わせは非常に素晴らしいコンセプト」と自信をもっており、「営業しながらリノベーションを行ってきたのは大変だった。しかし、才能溢れるカリナリーチームやバーテンダー、サービススタッフが一丸となったおかげで、ようやくオープンに至った」と述懐。

ストリングスホテル東京インターコンチネンタルは、1日の乗降客数が38万人を誇る品川駅から近いにもかかわらず喧騒とは無縁。そのストリングスホテル東京インターコンチネンタルに誕生した「ザ・スコア・ダイニング」では今後、楽しい会話や料理に関する喜びの声など、賑やかな音楽が聞かれるのではないでしょうか。