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「インスタ映え」に対する違和感の理由

東龍グルメジャーナリスト
(写真:アフロ)

クリスマスケーキとおせち料理

ここ最近は暑い日が続いているものの、残暑も過ぎ去り、衣替えの季節になってきました。夏を過ぎたあたりから、クリスマスケーキやクリスマスメニュー、さらにはおせち料理に関するグルメ記事がちらほら見掛けられるようになています。

正月が過ぎた後は、バレンタインデーをターゲットにしてチョコレート、イチゴの季節ということでストロベリーのスイーツやフェアを扱ったものが増えてくるでしょう。

ここ最近も、クリスマスケーキに関するたくさんのグルメ記事が日々作られ、発信されていますが、非常に気になっていることがあります。

それは記事中における「インスタ映え」というキーワードの使われ方です。

と言うのも、数年前から写真映りが重要になってきており、SNSが浸透してきてからは見た目が重要というのは当たり前になっているからです。

インスタ映え消費

様々な商品を紹介する「DIME」の<横綱は「#インスタ映え消費」と「ハイブリッド○○」楽天市場が2016年ヒット商品番付を発表(2016.12.21)>という記事では、以下のように述べられています。

10~20代の女性が活用しているコミュニケーションツールのインスタグラム。自分の価値観を表現したい、伝えたいという欲求を満たす「インスタ映え」する商品や体験が注目を浴びている。

(中略)

その他、スイーツやアイスクリームなど「インスタジェニック」は来年も引き続きヒットのけん引役になりそうだ。

出典:横綱は「#インスタ映え消費」と「ハイブリッド○○」楽天市場が2016年ヒット商品番付を発表(2016.12.21)

「インスタ映え消費」が横綱となっており、「インスタ映え」するスイーツやアイスクリームが引き続きヒットするだろうとも述べられています。つまり、昨年の時点で既に「インスタ映え」は多くの人の知るところとなっているのです。

それなのに、2017年になってもなお「今年のクリスマスケーキのトレンドはインスタ映えすること」「インスタ映えするおせちが人気」と分析している記事には白けてしまいます。

そもそもインスタ映えが前提

現在トレンドや人気となっているものは、ほぼ「インスタ映え」することが前提であると考えなければなりません。

テレビや雑誌、新聞やラジオに加えて、今の時代にはインターネットで大量のグルメ情報が配信されています。こういった情報過多の時代において、多くの人に届くグルメ情報は、まず見た目で気を引くものでなければなりません。多くの情報の中から拾い上げてもらい、そこから購入してもらったり、拡散してもらったりすることにより、人気となるのです。

こういった状況では、企業が見た目を重視した商品を開発することは当然のことであると言えます。つまり、「クリスマスケーキのトレンドはインスタ映え」と述べるのは、何も分析されていないのとほとんど同じであるのです。

「インスタ映え」で考えなければならない2つの要素

「インスタ映え」はとても便利なキーワードです。しかし、メディアは「インスタ映え」と言及するだけではなく、以下について考えなければなりません。

  • どうして「インスタ映え」しているのか
  • どのようにして「インスタ映え」させるのか

どうして「インスタ映え」しているのか

「インスタ映え」がトレンドの前提であるとすれば、次に考えなければならないのは、どうして「インスタ映え」しているか、です。「インスタ映え」しているクリスマスケーキの理由を考えなければなりません。

通常のサイズ以上に大きくて迫力満点あるからなのか、非常に高級な食材を組み合わせているからなのか、意外なキャラクタを模して作られているからなのかなど、「インスタ映え」している分析をする必要があります。

「インスタ映え」するクリスマスケーキやおせち料理には必ず理由があるはずです。その理由を分析しなければならないのではないでしょうか。

どのようにして「インスタ映え」させるのか

「インスタ映え」するためには何が必要であるか、考察することも重要です。つまり、「インスタ映え」してトレンドになるためには、どういった要素があればよいのかを考察することになります。

例えば、一人用需要が伸びているのでミニチュアのように精緻な小さいホールケーキがよさそうだとか、木をイメージさせないブッシュ・ド・ノエルは引きが強いので同じようにシュトーレンも変わった形が受けるのではないかなど、何かしらの「インスタ映え」予想もあってよいのではないでしょうか。

次に流行する食材や料理はよく議論されるだけに、次に「インスタ映え」する要素も議論されてしかるべきであると思います。

「インスタ映え」元年の先

一昔前に比べると、クリスマスケーキは町場のパティスリーだけではなく、大手百貨店やコンビニなども力を入れ、おせち料理は和だけではなく洋食や中国料理も当たり前となり、様々なものが販売されるようになりました。世界的な菓子職人のクリスマスケーキやミシュランガイドで星を獲得した料理人のおせち料理もあり、味も進化しています。

その一方で、冒頭に述べたように情報量は爆発的に増えているので、その中で消費者の気を引くために「インスタ映え」を狙うことはもはや必須であり、「インスタ映え」元年を迎えた2016年以降は、グルメを紹介するメディアは、どうして「インスタ映え」しているか、どうすれば「インスタ映え」するかを、考えていく必要があるのではないでしょうか。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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