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マナーの悪い子連れに対して飲食店はどう対処するべきか?

東龍グルメジャーナリスト
(ペイレスイメージズ/アフロ)

子連れに対するTweetが大反響

飲食店での子供の振る舞いに関するTweetが大きな反響を呼んでいます。

既に「いいね」が11万を、リツイートが16万を超えており、まだまだ熱気が冷めやりません。

概要は次の通りです。

Tweet投稿者は飲食店で長年働いています。お盆で子連れの客が多くなってきたタイミングもあって、子連れの親に以下のことをお願いしました。

  • 椅子の上に立たない
  • 走り回らない

こういったことを守らないマナーの悪い子供に対して、「お店は家ではありません」「他のお客様の御迷惑にもなります」と述べ、親に「目を離さないでください」と結んでいます。

このTweetに対しては、賛同したり共感したりする反応がほとんどを占めています。

子連れによる他の問題点

Tweet投稿者が挙げた子供の振る舞いは、確かにどちらともよいことではありません。

「椅子の上に立たない」を守らなければ子供自身が危険にさらされ、サービスにも支障がでることがあります。「走り回らない」を守らなければ子供自身が危険にさらされ、サービスに支障が出る上に、他の客にも迷惑がかかるでしょう。

これ以外に、子連れの大きな問題を挙げるとすれば、「泣く」「叫ぶ」といった騒音問題があります。しかし、先の2つは物理的な接触を誘発するということで、この騒音問題よりも好ましからぬ問題であると言えるかも知れません。

気になる点

この問題において、気になる点は以下の通りです。

  • Tweetへの投稿
  • 子連れをターゲット
  • ルールの作成

Tweetへの投稿

飲食店において「椅子の上に立たない」「走り回らない」は子供にやめさせるべき行為です。しかし、ただ単に、不特定多数に向けたメッセージを発するだけではあまり意味をなさないのではないでしょうか。

というのも、今回はたまたまTweetして大きな話題となり、私も記事を書くに至っていますが、それでもTweet投稿者が働く飲食店へ訪れる子連れの客に対して、効果的に改善を促すことにはつながらないからです。

街場の小さな飲食店ではなく、比較的席数の多いファミリーレストランであったとしても、平均すると1日に300人から400人の客しか訪れません。しかし、ここまで話題となっても、訴求できるのはせいぜい10万人単位です。

Tweet投稿者の店舗に訪れる子連れの親が、そのTweetを見ている可能性は高いのでしょうか。見ていたとしても、その時に「ふーん」と他人事のように思うかも知れません。

飲食店に訪れる子連れの客は、Twitter越しにいるのではなく、Tweet投稿者のすぐ目の前に実際にいるのです。Tweetという不確かな手段を用いて訴えるのは、夜空に向けて弓矢を放つようなものだと感じます。

子連れをターゲット

ファインダイニングでは、小学生未満や中学生未満、場合によっては高校生未満がメインダイニングで食事することを禁止しています(個室であれば、ほとんどの場合禁止されていません)。それによって、大人だけの上質な雰囲気を紡ぎ出し、集客において利点のひとつにしています。

Tweet投稿者の飲食店には子供が多く訪れるとあるので、子連れをターゲットにした業態であると考えてよいでしょう。そうであれば、子供を連れて行けることを集客において利点のひとつとしていることを忘れてはなりません。

Tweetで挙げた行動は確かに困るものですが、子供がもともとそのような行動をとることは予測できるものです。また、全ての親が子供を完全にコントロールすることを期待するのも難しいのではないでしょうか。

子連れをターゲットにした業態であれば、マニュアルや対処法があるので、まずはその飲食店のマネージャーに相談して対応するべきであると考えています。

「あまり注意などしたくはありません」と書かれているのは心情的に理解できますが、他の客にも迷惑がかかっているようであれば、業務と割り切って注意しなければなりません。

飲食店におけるオペレーションを円滑にしたり、快適性を維持したりするという観点では、注意することもサービス業務の一つです。

ルールの作成

もしも、Tweet投稿者がその飲食店のマネージャーであったり、その飲食店にマニュアルがなかったりする場合にはどうすればよいでしょうか。

それは、ルールを作ることです。

私は「客は神様ではない」と同様に「飲食店は弱者ではない」と常々思っています。飲食店は自身の都合がよいようにルールを作り変えればよいのです。

その結果、特定の客が訪れなくなるかも知れませんが、逆にそれが支持されて別の客が訪れるかも知れません。

そういったことも含めて、飲食店は自身の戦略を立てるべきであると考えています。

私が言いたいことは、作られていないルールを押し付けることになると、飲食店も客もお互いに不幸になるということです。

もしも、子連れの客に対応できないのであれば、ファインダイニングのように小学生未満のメインダイニング利用を禁止したり、入店時の案内で店内を走り回ることは厳禁であると伝えたりする必要があります。

矜持を持つ

「お客様は神様」は三波春夫氏の名言ですが、昨今認識されているクレーマー問題から「客は神様ではない」の方が定着している感もあります。

しかし、次の記事などでも述べましたが、飲食店は決して弱者でありません。

飲食店はしっかりとした矜持を持って、自身でルールを作り、対処してもらいたいです。

独自のルールを生み出すことによって、飲食店それぞれの個性がさらに際立つと同時に、<今日もどこかでノーショーは繰り返される>で述べたように、飲食店と客の関係はある一定の契約を取り交わした関係であることも浸透してくると考えています。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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