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木嶋佳苗被告のブログをグルメ記事として紹介することの問題点

東龍グルメジャーナリスト
(写真:アフロ)

好ましくないグルメ記事

これまでグルメ記事やグルメのインフルエンサーに関して、好ましくないと思うことを書いてきました。

ここにきて、これまでと種類が異なるものの、好ましいと思えない記事を読みました。

それは、<スイーツ狂・木嶋佳苗被告のグルメ日記、改めて見ると使える【死刑確定】>という記事です。

そのタイトル通り、現在は閉鎖されている被告のブログからグルメを紹介するというものです。

彼女のチョイスする食べ物は基本的にはハズレがなく「間違いなくおいしいものを食べたい」とき、その食レポは巷に溢れるグルメ本よりも参考になるとすら思ってしまうのです(現在ブログは閉鎖、ネット上にキャッシュが残っている)。

出典:https://joshi-spa.jp/707621

記事中には、食通ぶりやブログそのものを褒めるようなことも書かれています。

問題点

この記事は以下の3点で問題があると考えています。

  • 遺族の感情
  • 店にとって迷惑
  • グルメなのか

遺族の感情

まず始めにあるのは、やはり遺族の感情を考えているのかということです。被告は交際していた3人の男性を殺害していますが、被害者の遺族や知人が読んだらよい気分がするでしょうか。

被害者と関係なくても、多くの人を殺害した人が食べたものを見て、快く思わない人も多いと思います。食は人間にとって必要なものであり、かつ、心を豊かにするものでもあります。不愉快に思う人がいるグルメ記事を書くのは非常に残念です。

店にとって迷惑

次に、店に迷惑がかかるのではないか、ということです。食との関連も連想される毒殺によって人の命を奪った被告が食べたと紹介されて、嬉しいと思う店はどれくらいいるでしょうか。

キャッシュには残っていて誰でも探そうと思えば探せるものの、基本的にブログは閉鎖されているので、普通に検索しただけでは現れません。

それをわざわざ掘り起こし、具体的な店名やホテル名を挙げてイメージを損ねるのはどうでしょうか。

グルメなのか

最後に、被告は本当にグルメなのか、ということです。確かに色々と食べ歩いているかも知れませんが、どれも多くの人が知るような有名店ばかりであり、これ程度の食べ歩きブロガーであれば、それこそたくさんいます。

それなのに「グルメ日記、改めて見ると使える」とタイトルに付けているのは、単に、死刑が確定して話題となっている被告の名前を使いたいがために書かれたグルメ記事であるからだと思えます。

食体験を高める記事

私は「飲食店は食体験を高める」努力をするべきだと考えていますが、メディアも同じように「食の体験を高める」記事を書くべきだと考えています。

冒頭で紹介した私の過去記事で指摘していることとは種類が異なりますが、この記事もやはりPV至上主義のもと書かれており、その根本は他の好ましくない記事と同じだと思います。

多くの人に読まれるグルメ記事ではなく、多くの人の心を豊かにするようなグルメ記事が増えることを強く望みます。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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