【クッキングコンテストの今】24回目を迎える日本系ホテルグループの料理コンクール

優勝作品一覧

日本のホテルグループでも大きなコンテストを

出場者集合
出場者集合

「【クッキングコンテストの今】実力ある若手料理人を辞めさせず育成するには?」では、若手料理人を育成したり、若手料理人のモチベーション維持したりするために、グループメリットを生かしたクッキングコンテストを行っているとご紹介しました。

外資系ホテルではブランドが同じであっても、オーナーや経営者が異なることが一般的ですが、ブランドを管理する会社が全体を束ねることによって、横断的なイベントを行うことができます。IHG・ANAホテルグループジャパンは、ここが上手に機能していたと言えるでしょう。

では、日本系ホテルでは全くこのようなコンテストを行っていないのでしょうか。いえ、そのようなことはありません。日本系ホテルとしては知名度も高くて規模も大きいプリンスホテルのグループが積極的にコンテストを行っているのです。

2014年で24回目を迎える料理コンクール

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プリンスホテルは2014年3月3日に第24回目となる「プリンスホテル料理コンクール」決勝大会をグランドプリンスホテル高輪で開催しました。

洋食、和食、中華、製菓、製パンの5部門に分かれ、全部門が同時進行で行われるという大きなスケールです。予選大会には216名がエントリーし、準決勝大会出場者には66名(女性11名)が、決勝大会出場者には32名(女性6名)が進出しました。決勝大会における出場者の内訳は洋食が8名、他の部門が6名となっています。

和のおもてなしができるように

西武ホールディングス代表取締役社長の後藤高志氏はオープニングのスピーチで「24回を数えるコンクールを他に知らない。2020年の五輪に向けて、和のおもてなしができるように励んでもらいたい」と出場者を激励し、コンクールに懸ける思いを語りました。

執行役員でザ・プリンスさくらタワー東京およびグランドプリンスホテル高輪・品川の総料理長である伊藤俊幸氏は「料理人の技術とモチベーションを向上させる」と人材開発に力を入れていることを述べ、「どこの事業所のレストランに行ってもおいしいと言ってもらえるようにしたい」と料理人のトップとして発破をかけます。

※プリンスホテルグループでは、ホテルのことを事業所と呼んでいる

料理コンクールのレギュレーションは以下の通りです。

全体のテーマ

「プリンスホテルの輪食」 昨年の世相を表す漢字である「輪」とプリンスホテルズ&リゾーツのチェーン(輪)そして“おもてなし”の「食」を重ね合わせた今回のテーマ。 プリンスホテルズ&リゾーツの食の「輪」で国内外のお客さまに、日本の「和」を感じ、楽しんでいただける創造性、芸術性豊かな料理を開発。

採点基準

  • 見た目(盛り付け)
  • 創造性
  • テーマ性(プリンスホテルの輪食)
  • 商品性

各項目は0.5点刻みで5点満点です。商品性という項目があり、実現的かどうかという視点があるのはよいことでしょう。

優勝作品の取り扱い

2014/04/25~06/30の67日間、グループホテルで販売

審査員

  • SEIBU PRINCE CLUB会員のプリンスステータス プラチナメンバー8名
  • 調理師専門学校関係者5名
  • プリンスホテル関係者18名
  • 東龍

製菓と製パンは同じ審査員が担当するので、5部門を4グループの審査員が審査することになります。審査員数は各グループそれぞれ8名、合計32名となっています。プリンスホテル関係者ではない人も審査員になっており、完全なクローズドでないのはよいことでしょう。

要綱と結果

洋食部門(決勝大会8名)

  • 国産鶏と米、日本の代表的な調味料を使用した料理
  • 想定販売価格はブッフェでの提供を念頭に10名分2000円
  • 日本の代表的な調味料を使用し、日本の魅力を海外にアピールできるメニューを考案する

海外にアピールできなければならないので、使用する調味料をよく吟味しなければなりません。

3位 志賀高幸氏(東京プリンスホテル)

2位 松尾裕之氏(品川プリンスホテル)

1位 関戸謙次氏(新横浜プリンスホテル)

優勝作品「おにぎりに見立てたあべどりのヴァプールと焼リゾット(輪)ッフル仕立て 柚子胡椒香るコンソメあんと一緒に」
優勝作品「おにぎりに見立てたあべどりのヴァプールと焼リゾット(輪)ッフル仕立て 柚子胡椒香るコンソメあんと一緒に」

日本人には馴染みのあるお茶漬けを洋食の技法を使いアレンジし仕上げました。 焼リゾットをワッフルメーカーで焼き上げたことで米とワッフルの意外な融合性を表現しました。 メインの鶏料理はおにぎりをイメージして三角形に仕上げています。

和食部門(決勝大会6名)

  • 会席料理の前菜
  • 想定販売価格は2500円
  • 和食の重要な要素に器があるが、全国のプリンスホテルで提供できるよう、指定の9インチ洋皿を使用する。和食の重要な要素である「季節感」に配慮した料理内容。会席の意味を理解し、お酒を1種選びその相性をPRする

洋皿と合わせる新しいセンスやお酒に関する知識も必要となります。

3位 西本源太氏(グランドプリンスホテル高輪)

2位 山内友樹氏(東京プリンスホテル)

1位 藍博史氏(グランドプリンスホテル高輪)

優勝作品「初夏の彩り前菜」
優勝作品「初夏の彩り前菜」

「五味、五色、五法」の定式を意識し、季節感が表れるよう、ワンプレートの中で表現しました。

中華部門(決勝大会6名)

  • 豚肉を使用した料理
  • 想定販売価格は3000円
  • 中国料理の代表的な食材の一つである豚肉を使用した料理。円卓などを囲んで、家族や友人などで楽しく食べる食事である「輪食」をイメージし、2020年の東京オリンピックを意識した未来性を感じさせる料理を提案する

中国料理に豚肉というのは非常にオーソドックスなので、創造力を働かさなければなりません。

3位 金子雅俊氏(ザ・プリンス パークタワー東京)

2位 丸山勲氏(川越プリンスホテル)

1位 飯田裕武氏(グランドプリンスホテル新高輪)

優勝作品「夢の大地豚三枚肉とフォアグラの煮込み七色野菜飾り」
優勝作品「夢の大地豚三枚肉とフォアグラの煮込み七色野菜飾り」

中国料理の根源である医食同源に基ずいて作りました一皿です。日本でもポピュラーな豚の角煮を色彩豊かな野菜たちと盛り付け華やかに仕上げました。 豚の三枚肉とフォアグラと一見脂肪分が多い取り合わせですが、豚肉は意外と之素トロール値が高くなくビタミンB1が豊富で疲労回復効果に富み取り合わせの野菜と一緒に食する事で美肌効果・デトックス効果・免疫力UPと体に優しい一皿です。

製菓部門(決勝大会6名、うち女性4名)

  • 「和」を取り入れたチーズケーキ。「輪」を意識したデコレーション
  • 想定販売価格は18cmラウンド5000円、1カット500円
  • お祝いに欠かせないものとなったケーキにちなみ日本の素材・味を含めた「和(輪)」を表現したアニバーサリーケーキを提案する。高さ10cmのケーキ箱に入ることが条件

洋菓子に日本の食材が使われることは珍しくなっているだけに、工夫が必要となるでしょう。

3位 柳川隆幸氏(鎌倉プリンスホテル)

2位 野部昌子氏(品川プリンスホテル)

1位 森岡邦泰氏(品川プリンスホテル)

優勝作品「柚子めくフロマージュ」
優勝作品「柚子めくフロマージュ」

柚子の香りと生キャラメルを組み合わせ、味噌と柚子胡椒のアクセントで驚きの発見をチーズケーキの中に表現しました。 人から人への想いの輪を水引とリボンでケーキを結び、贈り物という形でデコレーションいたしました。

製パン部門(決勝大会6名、うち女性2名)

  • オリジナルメロンパン
  • 想定販売価格は200円
  • 日本発祥のメロンパンを海外からのお客さまにも楽しんでいただけるよう、日本ならではの良さ「輪」を取り入れて進化させる

メロンパンの固定概念を覆すようなアイデアがあると面白いでしょう。

3位 粟由美氏(グランドプリンスホテル広島)

2位 野部多恵氏(グランドプリンスホテル高輪)

1位 江尻正氏(軽井沢プリンスホテル)

優勝作品「輪気藹藹」
優勝作品「輪気藹藹」

課題「輪」をイメージし、2種類のクッキー生地を使用し、「輪」が広がるよう仕上げました。 日本ならではの食材でおもてなし。「抹茶」「梅干」を使用しております。 お召し上がりのときに、笑顔の「輪」が広がるように作りました。

振り返り

全ての部門において共通していたのは、出場者および優勝を勝ち取った方が若いということです。これはコンクールがグループ内に広まっていることを意味しているので、決して悪いことではありません。

ただ、和食部門の西本氏は昨年2位で今年1位、中華部門の丸山氏は昨年1位で今年2位、製菓部門の森岡氏は昨年に続いてまた1位と、入賞常連者となっている方もいます。

後藤氏は「入賞者は入賞を糧に、入賞しなかった者は入賞できるようになってもらいたい。お客さまに満足いただけるように、さらなる研鑽を積んでもらいたい」と最後を締め括っていました。

後藤氏の発言を踏まえると、入賞者にはより高位の役職や大きな役割を担ってもらう代わりに次回からコンクールを辞退し、入賞未経験者の入賞を一人でも増やした方が組織の活性化にはよいのかも知れません。

どの事業所でも美味しいと言われるために

後藤氏は「決勝大会出場者はシティホテルの人が多かったので、リゾートホテルの人も頑張ってほしい。女性もさらに活躍してほしい」とエールを送ります。

料理コンクールは本来、陽の当たりにくい料理人のモチベーションを促したり、知られていない実力ある料理人を発掘したりすることが目的なので、よく理解できる発言です。

リゾートホテルや女性からも入賞者が続々と現れるようになれば、「プリンスホテルの事業所はどこも美味しい」と言われるようになり、長く続くプリンスホテル料理コンクールにおいて、ひとつの目的を果たすことになるのではないでしょうか。