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藤井聡太七段、矢倉で千田翔太七段にリベンジ!そして大舞台での師弟対決へ

遠山雄亮将棋プロ棋士 六段
師匠が待つ決勝へ進出した藤井聡太七段(写真:森田直樹/アフロ)

 3日、第33期竜王戦ランキング戦3組準決勝、千田翔太七段(25)―藤井聡太七段(17)が行われ、藤井七段が75手で勝利した。

 夕食休憩に入る直前、17時57分という早い時刻での終局だった。

リベンジ

 2月に行われた第13回朝日杯将棋オープン戦準決勝で藤井七段は千田七段に敗戦を喫し、3連覇を阻止されていた。

 今回は竜王戦3組準決勝という舞台で、見事にリベンジを果たした格好だ。

 朝日杯での対局は、先手になった千田七段が角換わり戦法を選択した。

 千田七段が最も得意としている戦法で、深い研究に藤井七段がうまく対応できず、いいところなく敗れていた。

 勝った千田七段は決勝で永瀬拓矢二冠(27)に勝ち、初優勝を成し遂げた。

 その時のことはこちらの記事に書いている。

藤井聡太七段、永瀬拓矢二冠を連破!朝日杯初優勝の千田翔太七段が磨いた必殺戦法。

 本局は藤井七段が先手となり、矢倉戦法を採用した。

 角換わりは藤井七段も得意としているので、どちらが先手になっても角換わりになると筆者はみていた。

 まさかここで矢倉を使うとは思ってもみないことで、千田七段も意表を突かれたのではないか。

 藤井七段が先手で矢倉を目指すのは、結果的にタイトル挑戦を逃した11月の広瀬章人八段(33)との王将戦リーグ最終戦以来だ。

 千田七段が得意の角換わりより、矢倉のほうが勝つ可能性が高いとみていたのかもしれない。

正確な判断

 対局は早い展開となり、午前中に千田七段が角損ながら飛車を成りこんだ。

 これは千田七段が猛攻を仕掛けたというよりも、藤井七段が攻めを引っぱりこんだものだった。

 局後のインタビューで千田七段は、この辺りで形勢をかなり悲観していた旨を話していた。

 実際のところはどうだったか。千田七段が飛車を成りこんだ局面で将棋AIに解析させると、ほんのわずかに藤井七段寄りながら、互角に近いと示す。

 ところが、指し手が進むと少しずつ藤井七段に形勢が傾いていく。

 どうやら、千田七段にミスがあったのではなく、藤井七段が千田七段の攻めを引っ張り込んだ判断が素晴らしく、実はすでに有利だったのだ。

 つまり将棋AIもきちんと判断できないところで、藤井七段は正確に判断していたということになる。

 千田七段もそれは同様だったが、自らの不利を自認しただけに、粘る気力がわかなかったのだろう。

 結果的にそれが早い終局につながった。

大一番

 これで3組決勝は杉本昌隆八段(51)と藤井七段による、師弟対決となった。

 前期竜王戦ランキング戦では、藤井七段は4組で優勝して3組に昇級した。

 一方、師匠の杉本八段は3組でギリギリのところで残留した。

 そうしてたまたま今期は一緒の組になり、トーナメント表で偶然反対の山となり、互いに強敵相手に3連勝して決勝で顔をあわせることになった。

 なんというめぐり合わせだろう。

 師弟で大一番を戦うというケースは多くない。

 そもそも師弟対決そのものが少ないのだ。

将棋界の「師弟戦」はなぜ尊いのか、そのドラマを振り返る

 まだ対局日程は決まっていないが、注目される大一番となることは間違いない。

 藤井七段は10日に、ここまで3戦全勝できている第61期王位戦挑戦者決定リーグの対局が行われる。

 相手はやはりここまで3戦全勝の菅井竜也八段(27)だ。

 勝ったほうがリーグ優勝にグッと近づく大一番だ。

 こちらもご注目いただきたい。

将棋プロ棋士 六段

1979年東京都生まれ。将棋のプロ棋士。棋士会副会長。2005年、四段(プロ入り)。2018年、六段。2021年竜王戦で2組に昇級するなど、現役のプロ棋士として活躍。普及にも熱心で、ABEMAでのわかりやすい解説も好評だ。2022年9月に初段を目指す級位者向けの上達書「イチから学ぶ将棋のロジック」を上梓。他にも「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」「将棋・ひと目の歩の手筋」「将棋・ひと目の詰み」など著書多数。文春オンラインでも「将棋棋士・遠山雄亮の眼」連載中。2019年3月まで『モバイル編集長』として、将棋連盟のアプリ・AI・Web・ITの運営にも携わっていた。

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