ゴーンの海外逃亡で内心はホッとしている日本人たち

フーテン老人世直し録(486)

睦月某日

 昨夜からきょう未明にかけて重要な会見が2つもあってフーテンの頭はいささか疲れ気味だ。1つは日本から海外逃亡したカルロス・ゴーン元日産会長の会見。もう1つはイラクの米軍基地がイランから弾道ミサイル攻撃を受けた直後の米トランプ大統領の会見である。

 2つの会見ともそれによって劇的展開が生まれるのか、大いに気をもませたが、いずれも劇的な展開には至らず、いささか肩透かしを食らった。ただ肩透かしを食ったと言っても悪い意味ではない。特にトランプが報復の応酬を望んでいないことが分かり、戦争へのエスカレートが避けられたのは何よりだ。

 この2つの会見についてフーテンの考えを記しておく。ゴーンの会見については、日本の司法制度を巡る情報戦の始まりを告げるものだ。そしてトランプ会見から分かったのは、イラン革命防衛隊司令官暗殺は大統領選挙運動の一環だった可能性が高い。

 まずゴーン会見である。日本時間の夜10時から始まった会見はさながらゴーンの独演会で、ゴーンは身振り手振りを交えながら日本の司法制度がどれほど非人道的であるか1時間超熱弁をふるった。

 曰く、何の容疑かわからずに突然逮捕され、弁護士の立ち合いを許されず、検事から自白を強要され、自白しないと家族に害が及ぶと脅され、長期拘留で絶望的な気持ちにさせられた。

 100日余りの拘留を経て保釈はされたが、保釈を巡るやり取りで裁判所より検察が上位にある印象を受けた。保釈条件は厳しく、このような司法で裁かれれば無実を主張しても無罪になる可能性はない。裁判で争えば時間がかかるだけで自由に行動できる保証もない。日本で死ぬか、脱出するかの選択だったとゴーンは語った。

 フーテンはかつて警察や検察の人間から取り調べのやり方を聞いたことがある。それに照らせばゴーンが語ったことはフーテンが聞いたとおりだ。彼らは最も簡単に自白させることが出来るのは頭の良いエリートの男だと言った。

 自尊心の強いエリート男性を徹底して人格攻撃していくと、かれらを支える信念が崩壊する時が来る。絶望的になったところで家族や部下がどれほど被害を受けるかを諄々と説けば、たいていの男は取り調べ官が作った自白調書にサインするのだと言う。

 逆に最も難しいのは女性だと言った。女性はいったん自分で決めたら何を言っても頑として言うことを聞かない。女性を自白に追い込むことほど難しいものはないというのが昔フーテンが聞いた取調官の話である。

 おそらくゴーンも同じやり方で取り調べを受けたと思う。ただ彼は日本人でないためか、日本人の男のようにはならなかった。そこでゴーンを絶望的な気持ちにさせるため特捜部は様々な手を使う。

 最初の逮捕容疑である有価証券報告書への虚偽記載は、ゴーンではなく日産が記載し、ゴーンは金も受け取っていないのに犯罪とされ、さらにその時期を2つに分けて再逮捕に持ち込まれ、長期拘留が図られた。

 インテリの男ならあまりにも無茶苦茶だと考える。しかし無茶苦茶なことを本気でやられるとインテリ男は恐怖心に捕らわれる。自分の理解できない世界にいると思い絶望する。そしてその世界から逃れるためにいったんは言う通りにサインして、裁判で無実を晴らそうという気になる。

 それを検察は待っている。そしていったん自白調書にサインしたら、裁判でどんなに無実を訴えても無罪にならないのが日本の司法だ。特に経済事件では故意のあるなしが重大な分かれ目になる。単なるミスなら罪に問えないが故意があれば罪になる。故意を証明するには自白調書がどうしても必要だ。

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「フーテン老人は定職を持たず、組織に縛られない自由人。しかし社会の裏表を取材した長い経験があります。世の中には支配する者とされる者とがおり、支配の手段は情報操作による世論誘導です。権力を取材すればするほどメディアは情報操作に操られ、メディアには日々洗脳情報が流れます。その嘘を見抜いてみんなでこの国を学び直す。そこから世直しが始まる。それがフーテン老人の願いで、これはその実録ドキュメントです」

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1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。89年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■「田中塾のお知らせ」2月25日(火)19時~21時 場所:東京都大田区上池台1-21-5スナック「兎」(03-3727-2806) 東急池上線長原駅から徒歩5分■参加費:1500円 ■申込先:agoto@K6.dion.ne.jpに住所氏名明記で

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