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「トランプ砲」が「トランプ節」になっただけの前代未聞の記者会見

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(275)

睦月某日

「トランプ砲に短絡的に反応する必要はない」、「トランプ次期大統領の初の記者会見に注目し、語る言葉を吟味してアメリカの何がどうなるかを読み解こう」と書いたところ、初の記者会見で語られたのは「トランプ砲」と大差のない「トランプ節」であった。世界最強国家の何がどうなるかはいまだ予測不能である。

トランプ次期大統領には当選直後から大統領職とビジネスとの「利益相反」問題が付きまとい、そのため12月に記者会見を開いて説明することになっていた。ところが記者会見は一方的に延期され大統領就任式直前の年明け11日に行われることになった。

するとその前日にCNNが「ロシアの諜報員がトランプ氏の不名誉な情報を入手している」と報道し、一方でインターネットサイトのバズフィードがトランプ氏の側近とロシア側諜報員が接触していたことやセックス・スキャンダルに関する文書を公開した。そのため初の記者会見は「偽のニュースが流されている」というトランプ氏のメディア批判から始まった。

トランプ氏は大統領選挙の最中にロシアがサイバー攻撃を行っていたことは認めたが、米情報機関から漏れたと思われるCNNやバズフィードの報道を厳しく非難し、CNNの記者の質問に全く答えようとはせず、記者との間で大統領会見では見たこともない激しい応酬を繰り広げた。

その一方でトランプ氏は「良いニュースもある」と米国の自動車メーカーがメキシコでの工場建設を取りやめたことを取り上げ、「私は最も雇用を生み出す大統領になる」と胸を張り、製薬会社などにも国内での生産を要求、海外に移転する米国企業の製品には高い関税をかける方針を強調した。

米国企業が賃金の安い海外で事業を行うことをやめさせ賃金の高い国内で生産させようというのである。1980年代の「貿易戦争」の時代にアメリカは、日本などが不当なダンピングで安い製品を米国に輸出するため米国企業が倒産し「日本は失業を輸出している」と非難したが、今度は米国企業に「外に出るな」と言うのだ。

そして貿易では「中国、日本、メキシコとの間でアメリカは数千億ドルを失っている。貿易協定は大惨事だ」と問題のある貿易相手国を名指したうえで「貿易協定の見直し」を宣言した。「貿易協定の見直し」は米国労働者が米国内で製造する割高な製品を買わせることが目的という理屈になる。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■「田中塾@兎」のお知らせ 日時:4月28日(日)16時から17時半。場所:東京都大田区上池台1丁目のスナック「兎」(03-3727-2806)池上線長原駅から徒歩5分。会費:1500円。お申し込みはmaruyamase@securo-japan.com。

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