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小曽根真 名ピアニストがライヴ番組で音楽人生を辿るセッション――かけがえのない瞬間が生まれた30分

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/BS-TBS

豪華ミュージシャンがスタジオに集い、生演奏にこだわって一夜限りのセッションを作り上げるライヴ番組『Sound Inn S』(BS-TBS)。

小曽根真が様々なスタイルでセッション。「まるで子供の頃からの自分の音楽人生を歩いていたような素敵な時間でした」

3月16日(土)の放送には、ジャズとクラシックの世界を行き来し、縦横無尽に活躍する日本が世界に誇るピアニスト/作曲家の小曽根真が登場。本人が「ピアノソロ、トリオ、弦楽アンサンブル、そして大先輩の北村英治さんとのデュエットまで!テレビ収録というよりまるで子供の頃からの自分の音楽人生を歩いていたような素敵な時間でした」と語っているように、世界を魅了する小曽根のピアノを存分に堪能できるセッションが繰り広げられた。

2023年デビュー40周年。ジャンルを超え世界規模で活躍

小曽根は1961年神戸市生まれ。83年、バークリー音楽大学ジャズ作・編曲科を主席で卒業し、84年米CBSコロムビアからアルバム『OZONE』で世界デビュー。ワールドワイドに活動をスタートさせ、ブランフォード・マルサリス、チック・コリア、ゲイリー・バートンなどトップミュージシャンと共演。世界中のジャズファンを熱狂させてきた。ビッグバンド・No Name Horsesも率いている。2003年「グラミー賞」にノミネート、18年には紫綬褒章を受章している。2023年に世界デビュー40周年を迎え、還暦を超えてエネルギッシュにさらなる進化を求め、国内外の主要クラシック・オーケストラと積極的に共演するなど、ジャンルを超えて世界規模での活躍を続けている。

新トリオ・Trinfinityで思い出の曲を披露

1曲目は「バークリー時代の思い出の曲」という、ジャズのスタンダードナンバー「Spring is Here」。一緒にセッションするのは2023年に結成した小川晋平(B)ときたいくにと(Dr)との新トリオ・Trinfinityだ。柔らかで温かみのある小曽根のピアノの音色は、まさに“春色”。三人の息と音が交差して極上の演奏、時間が生まれる。志高くバークリーに入学した小曽根を待っていたまさかの展開。しかしそれを打ち破ったのは自身のピアノで演奏したこの曲だった――そんなエピソードが明かされ、若き日の小曽根の音色はどんな響きだったのだろうか、そんな想像も掻き立ててくれる、若手ミュージシャンとのセッションだ。

新トリオTrinfinityは小曽根と俳優の神野三鈴が主宰する次世代を担う若手音楽家のプロジェクト「From OZONE till Dawn」に所属する、小川晋平ときたいくにとをメンバーに迎え結成。これまで、ザ・トリオ(ジェームス・ジーナス&クラレンス・ペン)、スーパー・トリオ(クリスチャン・マクブライド&ジェフ“テイン”ワッツ)などアメリカのトップミュージシャン達とタッグを組んできたが、40周年を節目に若手とセッションすることでさらなる刺激を受け、そこから生まれる化学反応をリスナーと共に自身も楽しんでいる。そんな化学反応を感じることができるのが、2024年1月にリリースしたアルバム『Trinfinity』だ。

2曲目はその『Trinfinity』から小曽根のオリジナル曲「Momentary Moment」を披露。クラシック的などこか優美なメロディと、急速調のテンポの中で繰り広げられる、絶妙なインプロビゼーションを奏でる3人。小川のメロディアスなベース、激しく繊細なきたいのドラム、そして小曽根のピアノの粒立った音、色香とクールさを湛えた音が広がっていく。

Trinfinity(小川晋平(B)・小曽根・きたいくにと(Dr))
Trinfinity(小川晋平(B)・小曽根・きたいくにと(Dr))

小曽根はそんな二人の俊英とのセッションを「とにかく楽しい」と語り、その魅力について「ふたりが持つ才能もさることながら、彼らの強い覚悟を感じることができたから、一緒にやってみたいと思いました。それは僕の書く曲にはひと筋縄でいかないものが詰まっていて、演奏も音色やノリに関しても、その微妙な変化を感じ取る感性が求められるものが多いと思います。自分の美学を変えてでもと取り組む、自分が変わるという覚悟がなければ対応できないんです。このジャンルで生きていくのは不可欠な要素でもある。二人はそれを持っている」とその才能を絶賛している。

「人生の師」94歳のレジェンド・クラリネット奏者・北村英治とのセッションが実現

3曲目は94歳のレジェンド・クラリネット奏者・北村英治と「Moonglow」のセッションが実現。実は北村と小曽根の父でジャズピアニストの実さんは仲良しだったこともあり、小曽根も幼少期から北村と顔見知りで、人生の師として仰いでいる。「2022年に北村さんとアルバムを作った時『僕ももう60を過ぎましたよ』と北村さんに言うと『還暦なんてまだまだ育ち盛りだよ』という言葉をいただいて、言った相手を間違えたと思いました(笑)」と、和やかな雰囲気からまずは音合わせがスタート。

すると小曽根が小川ときたいに「モダンすぎる。この曲はダンス。もっと軽くスウィングする感じじゃないとダメ」と、リクエストする。常に音楽の本質にこだわって音を鳴らし続け、妥協を許さない小曽根の言葉に二人はすぐに応え、北村もノリノリでそのたおやかなクラリネットの音と、軽やかなピアノと共にスウィングし最高のセッションが生まれる。演奏後北村から「心持ちよかったんじゃない?」と最大の誉め言葉をもらい、小曽根は「お酒が欲しくなる」と笑顔を見せた。

学生時代に作った作品を、23名のストリングスと感動的なセッション

ラストは小曽根が学生時代に作曲したという「Prelude (For Elenor)」を、室屋光一郎率いる23名のストリングスと共に披露。音合わせを前に、ストリングスメンバーに小曽根がElenorというのは当時ボストンで過ごしていたホストファミリーのお母さんの名前であるということや、この曲がどういう環境の中で出来たのか、その制作背景を丁寧に説明する。メンバー一人ひとりの頭の中にその風景が浮かびあがり音が流れ、曲への理解が深まっていく。

そして本番。幾重にも重なったストリングスと小曽根のピアノの繊細な叙情美、リズム隊の音が重なり、情感豊かな旋律が奏でられる。どこまでも美しい音はまさに心に沁み渡っていく感動的なセッションになった。演奏を終えた小曽根はストリングスチームに対して「素晴らしい!全曲ストリングスを入れてやりたかった(笑)」と絶賛していた。

「音楽は人の心と心を一瞬にしてつなぐランゲージ」

全ての演奏を終えた小曽根は「テレビで音楽をここまでちゃんと聴かせてくれる番組は貴重だと思う。出演させていただけたことが本当に嬉しい」と、心からセッションを楽しめたことを感謝していた。そしてこれからどんな音楽を届けたいか、という質問に「音楽は人の心と心を一瞬にしてつなぐランゲージだと思う。だから積極的に、怖がらずどんどん外に出て行って、色々な国の人たちとつながれる心を皆さんが持てるようになってほしい。そのために芸術、音楽ってあるような気がするので、そういう気持ちで地道に音楽をずっと続けていきたい」と、音楽家として矜持を語っていた。

小曽根真の演奏が楽しめる『Sound Inn S』は3月16日(土)BS-TBSで18時30分から放送される。また放送終了後TVerで見逃し配信され、本編には入り切らなかったソロ演奏曲「Crystal Love」をディレクターズカット版として楽しむことができる。

『Sound Inn S』オフィシャルサイト

小曽根真オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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