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wacci “始まりの地”渋谷でツアー完遂。「これからもあなたのそばで寄り添えるバンドでありたい」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ソニー・ミュージックレーベルズ

ツアー最終地・渋谷はwacci始まりの地

wacciの全国ホールツアー『wacci Hall Tour 2023~2024 -laugh mix-』のファイナル公演が、2月3日東京・LINE CUBE SHIBUYAで行われた。昨年12月から全国6カ所を回ったツアーをwacci“始まりの地”渋谷で締めくくった。デビュー11年目を迎えたwacci。 「バンドの初めてのライヴが渋谷のライヴハウスだった」(橋口)ことと、さらにLINE CUBE SHIBUYAでは初めてのライヴということで、最終地・渋谷でのライヴをメンバー自身も心から楽しんでいた。

「5人だけでは未完成、お客さんの笑顔、拍手、歌声が加わることで初めて完成するライヴをしたい」――ツアータイトルに込めた想い

オープニングナンバーは「別の人の彼女になったよ」だ。2018年に発表されたこの作品は、様々なアーティストにカバーされ歌い継がれ、聴き継がれてきたwacciの代表曲のひとつだ。これまでもwacciのライヴで何度か聴いているが、この日感じたのは橋口の歌の“感情の粒度”がますます高くなっていること。それはこの曲だけではなくライヴを通して感じたことだ。歌詞に込めた感情の機微を余すことなく歌として伝えている――それはwacciの曲だけではなく、多くのアーティストに色々な楽曲を提供している橋口が、ソングライターとして様々な感情と対峙していて、その積み重ねが歌の深さに繋がっているのでは――そんなことを考えながら聴いていた。

橋口洋平(Vo/G)
橋口洋平(Vo/G)

「坂道」を披露し「このツアーの全てをぶつけていいですか」とツアーファイナルに気合が入る。この日は節分、「豆を蒔かずに幸せを蒔いていこう」と客席を煽り「Have a good day」、そして「宝物」の最後に客席と一緒に<ラララ>と歌う多幸感に包まれ、グッとくる。ツアータイトルになっている「laugh mix」は、レコーディングの際使用される未完成の音源の「rough mix (ラフミックス)」からとり、wacci 5人だけでは未完成のライヴを、お客さんの笑顔、拍手、歌声が加わることで初めて完成するライヴをしたいという意味が込められている。

村中慧慈(G)
村中慧慈(G)

「公園通りを皆さんが下る時には、ライヴが完成して明日から生きていく活力になれるような、そんなライヴをしていきたい

MCで橋口は「あんまり渋谷っていうイメージがないバンドかもしれないけど(笑)、バンドの初めてのライヴが渋谷のライヴハウスで、今日ついにLINE CUBE SHIBUYAで、ソールドアウトでできることが嬉しい。このライヴが終わって、公園通りを皆さんが下る時には、ライヴが完成して明日から生きていく活力になれるような、ライヴをしていきたい」とこのライヴへの思いを伝えた。

サビの転調が切なさを連れてくる「空に笑えば」、そして「痛い」「あの子」とLEDビジョンに歌詞を映し出す演出。歌詞の素晴らしさはいわずもがなだが、文字の書体にも徹底的にこだわった映像で、wacciの音楽の世界観の深いところまでオーディエンスに丁寧に伝える。聴いたことがある曲も、この映像によって新たな発見があったり、新しい感じ方ができた人が多かったはずだ。

wacciの音楽はまるで万年筆で書いた文字のよう。それが手紙=歌になる

「誰に何を言われようと自分らしくいていいと、作った曲がwacciにはたくさんあることをこのツアーで改めて感じた。そこに『好き』の気持ちを加えたこの一曲が沢山の人に広がっていってくれた」(橋口)と、「恋だろ」を披露する。優しい応援歌に客席に感動が広がっていく。ウェディングソングの定番になった「結」の映像には、万年筆で書かれた線と文字が映し出される。これこそがwacciの音楽そのものだと感じた。「インク」という曲には<風に吹かれて 揺れる陽だまりと滲んだインク>という歌詞が、最新曲「愛は薬」にも<綴られた文字から浮かぶ表情 便箋に沁みてくまあるい涙>という歌詞があるが、万年筆で文字を書くと文字が太い部分や細い部分、掠れなど文字に表情が出る。それは感情のグラデーションを繊細かつ鮮やかに言葉とメロディに映し出すwacciの音楽のようだ。

小野裕基(B)
小野裕基(B)

横山祐介(Dr)
横山祐介(Dr)

因幡始(Key)
因幡始(Key)

小野裕基(B)、横山祐介(Dr)のリズム隊が太いリズムを作り、村中慧慈のメロディアスなギターと、煌びやかさとメロウな表情を作る因幡始のキーボードが重なり、洗練されたアンサブルができあがる。そこから多彩なポップスが生まれる。橋口の歌に徹底的に寄り添いながら、それぞれの楽器がきちんと音を主張して、気持ちいいグルーヴを作りあげていく。

「お客さんひとりひとりが励みになり救われる大切な存在。これからもあなたのそばで寄り添えるバンドでありたい。みんな、生きてくれていてありがとう」

橋口が中学時代の恩師との手紙のやりとりや、その恩師がこの日ライヴに来ているなどを紹介すると、客席は笑顔の花が咲き、ほっこりした空気に。そして後半へと突入し、昨年10月、11月のNHK『みんなのうた』として親しまれた「まぶたを閉じれば」、客席が総立ちでタオルを振り回すアップテンポの「フレンズ」、「夜を越えて」は疾走感のあるギターが熱気を生み、アコギがかき鳴らされるエモーショナルなロック「最上級」では、客席をチーム右とチーム左に分かれて全員でハモる。ステージも客席も全員で、声を出してライヴを一緒に作りながら楽しむ。そして「お客さんひとりひとりが励みになり救われる大切な存在です。これからもあなたのそばで寄り添えるバンドでありたい。みんな、生きてくれていてありがとう」と「Buddy」を披露。等身大の音楽を届け続けるバンドの、強く仲間を想う絆ソングが美しいハーモニーと共に届けられ、本編が終了。

アンコールはライヴでは定番の「ケラケラ」からスタート。生き生きとしたサウンドでミニマムな世界を歌い、客席も一緒にラララと歌うと、<一緒に笑おう ケラケラ笑おう>という歌詞の通り、幸せな笑顔を運んでくる。そして現在放送中の人気TVアニメ『薬屋のひとりごと』(第2クールエンディングテーマ)のミディアムバラード「愛は薬」では、エモーショナルなサウンドに乗せ優しい歌を届ける。ラストはおなじみの「大丈夫」だ。誰もが一度は思ったことがある共感できる歌詞を、客席全員が口ずさみながら楽しんでいる。自分のパーソナルなことを歌っているとしても、誰かと共通する部分があったり、誰かの心に届いたりするのが、音楽の醍醐味だ――この日のライヴを観て改めてそういう思いになった。wacciの音楽は全ての人とその想いを肯定してくれる。それが極上の温かさになってそこにいる人全ての心に感動となった広がっていく。

「次会う時までみんなそれぞれの日々をがんばって、また会いましょう」とメンバーがステージを後にしてライヴ、そしてツアーが終幕した。

2月21日には「愛は薬」をリリース、さらに2月28日には自身初となるライヴアルバム『wacci Live at 日本武道館 2021 ~YOUdience~』を配信リリースする。2021年11月12日に初めて有観客で開催した日本武道館ワンマンライブを収録したものだ。そして2024年秋に全国ホールツアーを開催することも発表された。

【セットリスト】

M1 別の人の彼女になったよ

M2 坂道

M3 Have a good day

M4 宝物

M5 空に笑えば

M6 痛い

M7 あの子

M8 群青

M9 恋だろ

M10 結

M11 まぶたを閉じれば

M12 今日の君へ

M13 フレンズ

M14 夜を越えて

M15 トータス

M16 最上級

M17 Buddy

En1 ケラケラ

En2 愛は薬

En3 大丈夫

wacciオフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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