Yahoo!ニュース

JUJU「スナックJUJU」で昭和歌謡の魅力を伝え続けた2023年。2月“東京ドーム店”を開店

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ソニー・ミュージックレーベルズ

“レコ大”でジャズ・カヴァー・オリジナル、違うジャンルのSPメドレーを披露

2023年は様々な場所でJUJUの名が轟いた一年だった。12月30日に放送された『輝く!日本レコード大賞』(TBS系)では、「最優秀歌唱賞」を受賞。JUJUはデビューから20年、ライヴを大切にし、歌で様々な“物語”を丁寧に届けてきた。20周年を迎えた気持ちを聞かれると「20年間JUJUを続けられると思っていなかった」と、感謝の気持ちを込めて、JUJUバンドと共に20周年スペシャルメドレーを披露。JUJUの活動の軸になっているジャズ、カヴァー、そしてオリジナル曲を歌う3つのライヴをギュッと凝縮した「My Favorite Things」「飾りじゃないのよ 涙は」「奇跡を望むなら...」だ。全く異なったジャンルの3曲が、自然と心に入ってくるのはJUJUのヴォーカル表現力の表れだろう。

“紅白”で「時の流れに身をまかせ」を披露。昭和歌謡の真髄をお茶の間に届ける

そして昨日12月31日の「第74回NHK紅白歌合戦」では、「時の流れに身をまかせ」を歌唱。時代を超えて愛されるメロディと、柔らかく刹那的な歌詞を情感豊かに歌い上げJUJU節を響かせ、昭和歌謡の真髄をお茶の間に届けた。

「スナックJUJU ~夜のRequest~『帰ってきたママ』」
「スナックJUJU ~夜のRequest~『帰ってきたママ』」

この曲も収録されている、JUJUのカヴァーアルバム「スナックJUJU ~夜のRequest~『帰ってきたママ』」。『スナックJUJU ~夜のRequest~』から7年、「あゝ無情」「異邦人」「魅せられて(エーゲ海のテーマ)」「飾りじゃないのよ 涙は」「ダンシング・オールナイト」「じれったい」「メモリーグラス」「酔っぱらっちゃった」「ドラマティック・レイン」「たそがれマイ・ラブ」「別れても好きな人」「プレイバックpart2」「いとしのエリー」「なごり雪」、そして「時の流れに身をまかせ」という、リスナーからのリクエストを基にセレクト、構成された時代を超え愛される70~80年代の昭和歌謡の名曲カヴァー集だ。

誰もが知る名曲の数々を、亀田誠治、川口大輔、小林武史、島田昌典、武部聡志、蔦谷好位置、松浦晃久という、シーンを牽引する豪華プロデューサー陣がアレンジ。昭和歌謡の多くは、いわゆる職業作詞家・作曲家・編曲家、それぞれのクリエイティブが高い熱量で交差し、わずか3分程の短い演奏時間の中で、圧倒的にドラマティックな世界観を作り上げているのが特徴だ。名曲に名イントロや名フレーズあり――オリジナルの匂いや温度感を活かしながら、どう“今”を纏わせるか。音楽プロデューサー達の腕の見せどころであり、このアルバムの聴きどころのひとつだ。

「曲ひとつひとつの物語を届ける語り部でありたい」

もちろん中心にあるのはJUJUの歌。JUJUの歌をどう伝えるかがアレンジの肝になっている。一曲一曲その歌の表情の豊さに驚かされる。時に強く歌いあげ、そして柔らかく、さらにウィスパーボイスで囁くように歌い、一瞬で聴き手を曲の世界に引き込む。情緒があって聴き手が想像できる余白があるのが昭和歌謡。行間に浮かぶ感情までを丁寧に掬い上げ、伝えてくれる。JUJUは常々「曲ひとつひとつの物語を届ける語り部でありたい」と、自らのシンガーとしての“使命”とを語っている。それはオリジナルでもカヴァーでも同じだ。JUJUが主人公ではなく、曲の中に存在する主人公の思いを、スナックJUJUのママが歌う。だからママが歌う昭和歌謡のカヴァーは、登場人物の心の本質的な機微に触れ、伝えることができているからどこまでもドラマティックだ。

このアルバムの先行シングルとして「なごり雪/あゝ無情」を10月に発売。「なごり雪」は松浦晃久が、美しいストリングスを纏わせたアレンジを構築。切々と歌うJUJUの感極まっているような歌が印象的だ。「あゝ無情」は蔦谷好位置がプロデュースを手がけ、オリジナルの疾走感あるギターロックにクールさを加えたアレンジに仕立てている。全くタイプが違う2曲から伝わってくるのは、JUJUの歌謡曲へのたっぷりの愛情だ。オリジナルアルバムを引っ提げてのツアーとカヴァーライヴ、そして恒例のブルーノート東京でのジャズライヴと、様々な歌を歌い続けてきた20年。それぞれの音楽がそれぞれに相乗効果をもたらし、自身も気づいていなかった新しい引き出しを開け、歌が常に更新され続けている。ここにJUJUのシンガーとしての強さがある。

2023年は「スナックJUJU」初の47都道府県・自身最多となる全53本の“出店”

JUJU自身も幼少の頃から、親や親戚に連れられてスナックに通い、子供心ながらに大人たちが楽しそうにおしゃべりして、飲んで、歌って、踊るあの“紫色”の世界は魅力的でわくわくする場所だったと感じ、それは忘れられない大切な思い出になった。そんな憧れの場所を具現化したのが「スナックJUJU」だ。6年振りとなるJUJUの全国ツアー<ジュジュ苑スペシャル『「スナックJUJU 2023」 〜47都道府県出店!! “あのママ”がJUJU20周年を勝手に前祝い全国ツアー〜』が5月からスタ―トし、今年8月にデビュー20周年イヤーを迎え、ママと“同級生”であるJUJUの前祝いとして、初の47都道府県・自身最多となる全53本の“出店”となった。

人生相談あり、デュエットあり、客席とのやりとりも含めて隅々にまでママのサービス精神、細やかな心配りが行き届いている。どこまでも居心地のいい空間はまさに“いきつけ”のスナックそのもの

その6月のNHKホール公演と8月末の東京国際フォーラムホールA公演を観たが、バンマス石成正人(G)率いる“流しのミュージシャンたち”=手練れのミュージシャンが集結したスーパーバンドの、“歌心”を感じさせてくれる演奏に乗せ、ママの歌が“紫色”の世界を作り出していた。人生相談あり、デュエットあり、客席とのやりとりも含めて隅々にまでママのサービス精神、細やかな心配りが行き届いている、どこまでも居心地のいい空間はまさに“いきつけ”のスナックそのものだった。客席はJUJUが「昭和歌謡の世界って大人による大人のための潔い世界。大人心の妙がありましたね」と語るように、艶のある、粋な世界を感じさせてくれる歌に酔いしれていた。

JUJUの日=10月10日の京都公演には大泉洋が飛び入り出演。アルバム『スナックJUJU ~夜のRequest~「帰ってきたママ」』にも収録されている安全地帯の「じれったい」をデュエットし客席を喜ばせた。この模様は『SONGS』(NHK)でオンエアされ、話題を集めた。さらに先月放送の『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』(TBS系)でも「スナックJUJU」が開店。「異邦人」「なごり雪」を生演奏で披露した。

2024年2月17日「スナックJUJU 東京ドーム店」開店

「スナックJUJU」はまだまだ終わらない。「2024年2月17日、水道橋にお店を構えることになりました!あの数々の名勝負が生まれる球宴の場で、夢幻のような、狂乱の宴をご用意して皆さんをお迎えしようと思っております!」と意気込んでいるように『ソニー銀行 presents ―ジュジュ苑スーパーライブ― スナックJUJU 東京ドーム店 ~ママがJUJU20周年を盛大にお祝い!!一夜限りの大人の歌謡祭 』を行なう。小田和正、鈴木雅之、NOKKOという豪華スーパーゲストを迎え、JUJUが子供の頃から憧れていた、眩しく巨大な大人の社交場が生まれる。

JUJUオフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

田中久勝の最近の記事