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浅香唯 2度目のビルボードライブ公演は「今まで見たことがない私を感じていただけるはず」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
Photo/Masataka Yoshida

2度目のビルボードライブ公演を、6月17日大阪、24横浜で開催

浅香唯が昨年秋に続き、2度目のビルボードライブ公演を6月17日大阪、24日横浜で行う。毎年12月に開催しているバースデーライブが、ファンとのコミュニケーションを深める、ファンと「近い」場所だったが、もっと近い距離で、もっと深く歌の世界観を伝える場所になったのがビルボードライブだ。「実際に客席との距離が近すぎて、最初は緊張しました」と語る昨年のビルボード公演を振り返ってもらいながら、今年の同ライブへの意気込みを聞かせてもらった。

「コロナ禍で配信ライブをやって、私にとっていかにファンの人の存在が大きかったかということを、改めて感じました」

浅香へのインタビューは約3年振りだ。前回は2020年、50歳で迎えた35周年のタイミングでリリースしたCD-BOX『YUI ASAKA 35th Anniversary~君がずっと見ている~』について話を聞かせてもらった。この時浅香は「RIZAP」へのCM出演でも話題を集めていた。あのCMに出演することを決断した瞬間から「とても強くなったし、怖いものがなくなったというか、何でもできそうな気がした」と語ってくれた。それがビルボードライブへも繋がっているのかもしれない。コロナ禍で、強くなった浅香。配信ライブなどでファンを励まし続けた。

浅香 誰かの心の支えになったり、誰かの喜びになったり、それが私達の仕事だと思っていましたが、最悪、それがなくても生きてはいけるということは、うっすらわかってはいたけど、ガンと突きつけられた感じがしました。がっかりした半面、でもこのタイミングでYouTubeやInstagramなどをスタートさせて、SNSで新たなコミュニケーションが生まれたり、いい部分もありました。「気づき」の時期だったと思う。ちゃんと自分に向き合える時間もたっぷりあったし、配信ライブをやって、私にとっていかにファンの人の存在が大きかったかということも、改めて感じました。私はいつも、ここにいるみんなと一緒にとにかく楽しむ、みんなを楽しませるという、気持ちの通じ合いみたいなものが楽しみでライヴをやってきました。でもそれができない配信ライヴでは「誰に向かって笑ってるんだ」って、素に戻ってしまう瞬間がありました。

初めてのビルボードライブは「いつもにも増して、女優になったような気持ちで、一曲一曲その主人公になりきって歌っていたと思います」

そんな中で新たな試みとしてビルボードライブを提案された時は、どう思ったのだろうか。

浅香 ビルボードって錚々たるアーティストがライブをやっていて、敷居が高いイメージがあるので、最初は「私がやっていいの?」という感じでした。でも50歳を過ぎてからはなんでも「迷うなら、やる」って決めました。とても歴史を感じるステージなので、そんな会場で何をやるべきか。とても悩みましたが、初めてなので「ビルボードさんはじめまして、浅香唯です。私の曲、聴いてください」という自己紹介的な意味で、私の代表曲をやろうと。最初のステージを終えて感じたのは、先ほども出ましたが、私はライヴではとにかくみなさんを楽しませたい、笑顔になって欲しいという気持ちが強くて、でもビルボードで歌ったときは、いつもにも増して本当に歌詞の世界の人を、すごく大事にしてたなって。私は女優さんではないけれど、女優になったような気持ちで一曲一曲その主人公になりきって歌っていたと思います。

「去年は、今まで私のライブを観たことがなかった人が『ビルボードで観てみたい』と駆け付けてくださいました」

いつもと違う雰囲気の会場と浅香のパフォーマンスに、ファンも最初は戸惑っていた。

浅香 私のライブはファンの皆さんと一緒にノリノリで楽しむ、騒ぐ感じなのでビルボードでは、みなさん「うん?ちょっと雰囲気が違うぞ」って戸惑っている人もいました。私もこのお話をいただいた時、最初は戸惑ったのでそれは当然です。でもあの時ビルボードという会場で初めてライブを観た方も多かったようで、今まで私のライブを観たことがなかった人が「ビルボードだから観てみようかな」と思って来て下さった方もいました。代表曲を中心にしたセットリストだったので「80年代に戻れて楽しかったし、元気もらいました」という声をたくさんいただきました。いつもライブに来て下さっている方からは、おなじみの曲がアレンジが変わって「違う雰囲気になっていて楽しめた」と言っていただけました。去年の恒例の12月のバースデーライブの時に、限定でグッズとして法被を販売して、それを買ってくださったファンの人たちが「ちょっと雰囲気、違いますよね?」って、今回のビルボードライブに法被を着て行くかどうか迷っているという声を聞きました(笑)。「是非着て下さい」とラジオでもお話しました。ユニフォームですから(笑)。

「昭和の古き良きいいメロディラインの曲は、ただ古いだけではなく、今でも若い人たちの心に刺さっていることが嬉しい」

昨年6月、浅香の作品全157曲のストリーミング配信がスタート。最近はTikTokやSNSで若い人たちの間で歌謡曲が人気で、浅香の楽曲も再び注目を集めている。

浅香 TikTokやYouTubeで、初めて「セシル」を聴いて「震えました」という若い人たちからのコメントがあって驚きました。実際に娘もカラオケの十八番が山口百恵さんの『プレイバックPart2』で、本当に昭和の歌謡曲が若い人たちも受け入れられているんだなと実感したし、もっと実感できたのは、去年の12月のライブに若い世代の人達がかなり来て下さったことです。昭和の古き良きいいメロディラインの曲は、ただ古いだけではなく、今でも若い人たちの心に刺さっていることが嬉しいです。私の曲も含めて、もっとあの頃の曲に興味持ってもらえたら嬉しいです。

恒例のバースデーライブは「門外不出、SNSで外に漏らさないで欲しい(笑)」、ビルボードでのライブは「年相応の表現がしっかり出せたら」

浅香とファンとの年一回の「約束の場所」が12月のバースデーライブだ。浅香が「とにかく喜ばせたい」という思いを強くして臨んでいるライブで、それはビルボードでのライブも同じだ。どう差別化していきたいと思っているのだろうか。

浅香 12月のバースデーライブに関しては、もう本当に門外不出というか、何をやっていたかできればSNSとかで外に漏らさないでほしい(笑)。それぐらい50歳を過ぎたシンガーが着ぐるみを着たり、みなさんが笑ってくれるのなら「あり得ないよね」ということもやっています(笑)。でも曲に関しては当時のアレンジに再現性を追求しているので、一瞬にして80年代の空気になるし、あの頃に戻れる空間になっています。ビルボードでは、もちろん昔の曲もやりますが、年相応の私の表現がしっかり出せたらいいなと思っています。6月のビルボードは、私はデビュー当時からイメージが夏なのに、今まで夏にライブってあまりやってこなくて、もったいないなって思っていたので、そういう意味でも嬉しいライブなんです。去年初めましてご挨拶はしたので、今回は私の本当の姿、もうちょっと奥底にある女性らしさを感じて欲しいです。あまり見つけられないかもしれないですけど(笑)、12月のライブではあまり感じないかもしれない大人の女性の雰囲気や、「今まで見たことがないよね」って言っていただけるものを届けたいです。

再来年は40周年を迎える。

浅香 私はあまり先のことを考えないタイプですが、2025年のデビュー記念日、6月21日が土曜日なので、これは神様に「なんかやれ」って言われている気がしています(笑)。

浅香唯 オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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