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小松菜奈、坂口健太郎出演のCMソングが話題 要注目の2人組Bialystocksの音楽の世界に迫る

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ポニーキャニオン

小松菜奈、坂口健太郎出演のCMソング「頬杖」が話題

現在オンエア中の小松菜奈と坂口健太郎が出演しているランドリーウォーター『ソフラン エアリス(Airis)』のCMから流れてくる、春らしい柔らかで優しい歌声と音楽が気になる人、多いのではないだろうか。

甫木元空と菊池剛が奏でる唯一無二の世界観に夢中になる人が続出

注目のアーティストBialystocks(ビアリストックス)の「頬杖」(4月7日配信リリース)だ。甫木元空(ホキモト ソラ/Vo、G)と菊池剛(Key)が奏でる唯一無二の世界観を持つその音楽についてインタビューした。

メジャー1stアルバム『Quicksand』(2022年11月30日)
メジャー1stアルバム『Quicksand』(2022年11月30日)

Bialystocksはメジャー1stアルバム『Quicksand』(2022年11月30日)を発売。それを携えた初の全国ツアー『Bialystocks “Quicksand” Tour 2023』(東名阪3ヵ所)のファイナル、2月18日の恵比寿リキッドルーム公演を観た。

このアルバムはJ-POPやR&Bを基点にジャンルを自由に横断し色々な風景、心情

を描写。ストーリー性を感じる普遍的なメロディと、先鋭的なアレンジがクセになる一枚だ。ハイトーンで伸びやか、ソウルフルで、でもどこか憂いも感じさせてくれる甫木元の声は、ライヴでもこの情景豊かなアルバムの世界観に、さらに匂いと肌と耳を刺激する風のような感覚を加え、会場に映し出していた。歌と映像と照明、手練れミュージシャンが作り出すアンサンブルが交差し、観客は静かに熱狂している。どこまでも心地よくクールな特別な「場所」に足を踏み入れたことを、意識させてくれた。

映像作家でもある甫木元が初監督・脚本・音楽を手がけた映画『はるねこ』の生演奏上映をきっかけに結成

甫木元空
甫木元空

Bialystocksは映像作家でもある甫木元が初監督・脚本・音楽を手がけた映画『はるねこ』(プロデュース:青山真治/2016年)の生演奏上映をきっかけに結成されたという、特殊な経歴を持つバンドだ。だからこそ総合芸術でもあるライヴの演出、構成へのこだわりはひと筋縄ではいかないのでは――勝手にそう思って甫木元に聞くと「ライヴは歌と演奏でもう手一杯で、それどころじゃなくて(笑)。舞台監督、照明、PA、楽器の方、それぞれが個性的なクリエイターなので、色々なプラン、アイディアを出してくれて集団制作していく感じです」と教えてくれた。

ライヴで感じたのは楽曲の再現性が高いということ。そこへのこだわりはあるのだろうか?

甫木元 アレンジは音源もライヴも基本的に菊池が主導してくれています。ライヴで決して音源の再現にこだわっていることはなくて、レコーディングの時熱量も含めて、これくらいの温度感、テンション感がいいんじゃないかと話をしながら作ります。ライヴでは逆に曲順も含めて『この曲はこの位置にあるから、今回はこうしてみようか」という感じで変化を加えていきます。

菊池 レコーディングの時は、ライヴのことは後で考えようという感じなので、ライヴアレンジは、音源で作ったものを出発点にして、そのままでもよければそのままやるという感じです。そういう意味では、再現性が高い曲もあると思います。

菊池剛
菊池剛

二人の出会いについては前述したが、甫木元は映像作家でフォークミュージックに影響を受け、菊池はジャズと、それぞれが異なるルーツを持つ二人だが、最初はそれぞれがお互いをどう捉え、どうやって音楽制作をしていったのだろうか。

「音楽の好みはバラバラだけど、方向性、好き嫌いは似ていると思う」(菊池)

菊池 ピアノはずっと弾いていました。中学生のときはスキマスイッチが大好きで、高校生の時にはマイケル・ジャクソンにもハマっていましたが、でも当時は音楽よりテニスに一生懸命でした。そんな中でフランク・シナトラやジャズを聴くのが好きになって、19歳の時ニューヨークに留学したのですが、「ニューヨークといえばジャズだろ」的な感覚で、ますますジャズにのめり込んでいきました。甫木元に最初に会った時は「声高いな」って思ったのですが、元々中性的な男性ボーカルってそんなに好みじゃなくて(笑)、でも彼の声にはビビッと来ました。曲を作る最初の段階では、声をあまり意識しないようにしていて。その方が思わぬ展開というか質感が出てくると思います。そこから少しずつ声に合わせて修正していく感じです。

「色々な人と出会う中で、自分にできることが少しずつ見つかっていく感覚」(甫木元)

甫木元 彼は自分とは違うものを持っているという意味で、出会った時はハッとしました。まずは書くメロディがすごくいいなって思って、それがすごく印象的でした。菊池とは好きなものは全然違うし、特に音楽については僕がいつも教えられています。僕はその時々でやりたいことっていうのがちょっとずつあるというか。大学に入って、たまたま先生に映画監督の青山真治さんがいて、とても影響を受けて映画を撮って、音楽に関しては、菊池と知り合ってという感じで、色々な人と知り合う中で、自分にできることが少しずつ見つかっていく、という感覚が一番近いです。親が合唱の先生をやっていた影響で、小さい頃から自分の声は記録として録音していましが、自分の声なので新鮮味は感じていなかったです。でも青山さんに声のことを言ってもらえて、それでバンドで歌い始めて、自分の声のことを自覚したのはそこからです。

菊池 音楽の好みはバラバラですけど、方向性、好き嫌いは似ていると思います。大雑把にいうとチャラいものは好きではないし、流行を追いかけることも苦手だし。親しみやすいもの、間口が広いものが好きなところも似ていると思います。

甫木元が書く、映像を切り取ったような抽象的な歌詞と、菊池が書く親しみを感じるメロディが、抜群の距離感と温度感を作り上げている。

甫木元は、現在住んでいる高知県を舞台にした2作目の長編映画『はだかのゆめ』の監督を務め絶賛される。

現在高知県四万十町在住の甫木元は、2作目の長編映画で高知を舞台にした『はだかのゆめ』で監督を務め、絶賛された。

甫木元のルーツや体験を基に紡がれたこの映画と同名の主題歌を、監督自らが手がけ、歌うという珍しいスタイル。独白に近い歌詞と歌が、甫木元の思いをさらに深いところまで届け、映画の世界観をさらに広げ、心に残してくれる。このバラードはアルバム『Quicksand』に収録されているが、菊池が手がけた、フランク・シナトラの楽曲ばりの美しいストリングスとサックスをフィーチャーしたアレンジが印象的だ。

Bialystocksで歌詞を手がける甫木元に、歌詞を作る時の脳と脚本を書く時の脳は違うのか?という野暮な質問をぶつけてみた。

甫木元 そんなに違わないと思います。歌詞は、あまり意味に引っ張られないように気を付けていて。両方共とにかく読み直して、次の日読んで「何で昨日こんなの書いたんだろう」って思わないものに直している時間が長いです。でも映画の脚本は、それは作品ではなく設計図みたいなものなので、それでいうと全然違うものかもしれないです。小説はちょっと近いかも。文章や読み物に関しては歌詞にちょっと近い部分があると思います。

菊池 曲に歌詞が乗ると、新鮮な日本語みたいなものが甫木元は好きだわかるので「なるほど、はめてきたな」と思うときもあるし、音的に納得がいかないときは、レコーディングしながらでも歌詞を変えてもらいながら曲を完成させます。

『関ジャム』の“プロが選ぶ年間(22年)マイベスト10曲”で音楽プロデューサー・蔦谷好位置氏が「灯台」を2位に挙げる

今年1月に放送された人気番組『関ジャム 完全燃SHOW」』の“プロが選ぶ年間マイベスト10曲”で、音楽プロデューサー・蔦谷好位置氏がBialystocksの「灯台」を2位にセレクト。「甫木元の抽象的で映像的な歌詞と、菊池の見事な作曲編集能力が結実した傑作。永劫に続いていくかの如くメロディーが高揚していくラストは圧巻」と絶賛していた。

ヒゲダン他多くの注目アーティストを擁するポニーキャニオン/Irori Recordsからメジャーデビュー

デビュー前から各種音楽メディアやストリーミングサービス、ミュージシャンなど各方面から注目を集めていたBialystocksは、2022年11月30日ポニーキャニオンの、Official髭男dismやスカート、Homecomings、Kroi、SOMETIME’S、TOMOOといった注目アーティストを擁するレーベル・IRORI Recordsからメジャーデビューした。メジャーデビューというのは、バンド結成当時からひとつの目標としてあったのだろうか。

菊池 時代的にも自分達で全てできる環境があるというのはわかっているのですが、我々は自主性に欠けているので、誰かにプレッシャーをかけてもらわないと永遠に曲も作れないタイプで(笑)、それと色々な“きっかけ”みたいなのを与えてくれる人がいた方がいいなって思いました。

甫木元 知っている人はもちろん、ネットを介して全世界で聴いてもらえる環境ではあると思います。でも逆にこの時代だから小さなムラがたくさんできている気がして、道が狭くなっているような感覚も、コロナ禍で感じました。だからもう少しダイナミックな動きも必要なのかと。そんな時に声をかけていただいて、レーベルとして何か新しいことをやろうとする気概が伝わってきました。既存の方法やスタイルではなく、一緒に何か新しいものを作っていこうという部分で、味方になってくれると思いました。

「頬杖」は初のCMソング。「制限や制約の中から、思いもしなかったアイディアが生まれてきて、新しい経験ができた」(菊池)

最新(10th)デジタルシングル「頬杖」は、初のCM書き下ろしソングだ。春らしい空気を纏い、どこか郷愁感を感じさせてくれる曲は、印象的なコーラスワークと交差するグルーヴィーなベースラインが心地いい。Bialystocksの音楽、甫木元の耳に残る声は早くも話題だ。映像作家でもある甫木元は、CM映像とどう向き合い曲を作っていったのだろうか。

甫木元 最初に「爽やか」「春っぽい」とか「新商品感」という大枠のイメージをいただきました。その柔軟剤のイメージに、パッと聴いて爽やかな感じや、ちょっとした疾走感やテンション感を出すところが一番大変でした。映像を観て逆に「合いすぎないようにしよう」と思ったのですが、歌詞は最初寄せすぎて書き直したりしました。

菊池 初めてのCMソングということで、戸惑った部分もありましたが、制約や制限の中から思いもしなかったアイディアが生まれてきたり、そういう経験ができたことがよかったです。

6月から全国ツアー開催

Bialystocksは春・夏の大型フェス、イベントに出演するほか、6月11日東京・キネマ倶楽部を皮切りに福岡、北海道、愛知、大阪を回る全国ツアー『Bialystocks 2nd Tour 2023』を行なう。9月10日には追加公演として EX THEATER ROPPONGIで行うことが発表された。

Bialystocks オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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