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GARNiDELiA 「自分達の曲より気合が入った」こだわりのJ-POPカバー集が話題

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ポニーキャニオン

J-POPの新旧の名曲カバー集は、ガルニデ流のこだわりが詰まった傑作

「春よ、来い」「フレンズ」「DEPARTURES」から「廻廻奇譚」「CITRUS」まで、新旧の名曲をGARNiDELiA(以下ガルニデ)ならではの解釈でカバーした楽曲を収録したアルバム『GARNiDELiA COVER COLLECTiON』が3月22日に発売され、好調だ。ガルニデのカバーへのこだわりを、ボーカルのMARiAとコンポーザー・tokuにインタビューした。

「自分達のオリジナル曲を作るよりも気合が入っています(笑)。人様の曲をカバーするということは、それぐらいの気合が必要だということです」。

MARiAが開口一番そう語ってくれたように、J-POPをカバーするということについて、アレンジはもちろん衣装、メイク、MUSIC VIDEOの細部に至るまで二人のこだわりが詰まっている。カバーを始めたきっかけは2020年、コロナ禍でツアーが中止になり活動がままならなくなった時、ファンに楽しんでもらう何かを、という思いから始まった。

「とことん凝ってガルニデらしいカバーを作る」(MARiA)

MARiA コロナの影響でツアーもストップして何もできなくなって、リリースもすぐできる状態ではなかったので、でもファンには何か発信したいと思って。時間ができたこともあって「今人気のある曲のカバーとかやってみる?」って、本当にノリで始まった企画なんです。最初にカバーしたのは『白日』(King Gnu)、『Pretender』(Official髭男dism)、『紅蓮華』(LiSA)でした。当時のカバー動画はマイクを立てて、それに向かって弾き語りみたいな感じのものが多くて、「でもそれだと、うちらがやる意味ないよね」ってtokuと話して。ビジュアルのプロデュースも含めてガルニデだから、とことん凝ってガルニデらしいものを作ろうと。

「原曲のファン、ガルニデのファン、両方にフィットするものを」(toku)

そうしてスタートしたカバーだが、当然凝れば凝るほどアレンジも含め大変になっていく。

toku オリジナルは誰もが知っている曲で、そこへのリスペクトもあるし、その曲のファンも僕達のファンもいるので、その両方にフィットするものというところが基点でした。毎回おっかなびっくりで大変です(笑)。もう自分達の曲を作る時と労力は変わらなくて。

原曲を紐解いて気づいたこと

多くの人から今愛されている、時代を超え愛され続けている名曲の数々をガルニデ流にアレンジすることで、tokuは名曲と真摯に向き合い「売れるべくして売れたんだな」と、気づきと刺激を受け取った。シンガー・ソングライターの曲、職業作家たちが作り上げた曲、J-POPの名曲に流れる“ヒットの成分”を嗅ぎ取っていった。

toku どの曲もひとつひとつのコードを確かめていくと、「このメロディにこのコードをつけているのがやっぱり神だね」って気づきます。他のコードをつけてみても「いや、これには勝てない」というのがわかります。アナライズして思ったところはたくさんあって「やっぱり売れるべくして売れた曲たちなんだな」ということが改めてわかります。J-POPってJ-POPたるDNAみたいなものが、どの曲にも通底している感じがしていて。コード進行がみんなシンプルで、でもメロディがそう聴こえさせないところに持っていけるのがメロディメーカーの才能だと思います。特に「Pretender」にはそれを感じました。

MARiA 労力はオリジナルを作るのと同じというのは、横で見ていて感じました。本当に大変そうでした(笑)。カバーのMVは一日で3曲収録するので、当日はもうドタバタです。

toku 1日で3曲撮れるということを最初で証明してしまったのでそれからは…(笑)。

MARiA あまりの大変さに「弾き語りでよかったんじゃないかな」って思い始め(笑)。

toku もちろん弾き語りは弾き語りでその良さはあると思いますが、我々は別方向でこういう見せ方をしようと決めたので。

「廻廻奇譚」と「フレンズ」を同じ日にレコーディングして、改めて気づいた時代の変化

tokuが名曲と向き合い“ヒットの成分”を紐解き、MARiAは昭和から令和まで、時代を彩った名曲を歌ったことで、J-POPの歴史、音楽の変遷を実感し、それがボーカリストとして、そして作詞をする上でも大いに刺激を受けたという。

MARiA 最近の曲の難易度といったらもう…。「廻廻奇譚」と「フレンズ」は、同じ日にレコーディングをしましたが、音数、言葉数、構成があまりに違いすぎて変になりそうでした(笑)。「廻廻奇譚」の曲の中の情報量といったら…歌詞の書き方から何から「時代は変わったな」って感じました。最近の曲は小説っぽい書き方の曲が増えた気がします。「廻廻奇譚」は早口になるけど、言葉を立たせなければきちんと伝わらないので、テクニックが求められる歌でした。キーが高いところも低いところも、同じ声の質感を感じるのがキャラだし面白いところだなって。Eveさんに「どうやって歌ってるんですか?」って聴きたかったくらいです。この曲と「白日」はレンジがとにかく広いのでやっぱり難しかったです。レコーディング中もかなり作戦を立てて臨みました。

toku でも「こうなるだろう」っていざ歌ってみても、思い通りにいかないことも多かったです。

「ガルニデでここまで考えてレコーディングしたことがない(笑)」(MARiA)

MARiA だから、「声色、もうちょっとこういう感じがいいかな」とか試行錯誤しながら、時間をかけてやりました。ガルニデでここまで考えてレコーディングしたことがないです(笑)。だからレコーディングの時、研究会みたいになってました(笑)。「これがこの時代の音の作り方なんだ」とか、歌詞の表現の仕方も作詞家さんが書いた詞なのか、アーティストが書いた歌詞なのかでその違いを感じたり。「自分もこういう表現の仕方がしたい」って思ったり、めちゃくちゃインプットできました。歌い方も「ガルニデではこんな歌い方はしないかな」という歌い方も織り交ぜながらやったので、それはソロ活動で培ったものがすごく生きていて。ここでも新しい表現の仕方を吸収できました。

toku アレンジ面でいうと「BREAK OUT!」(相川七瀬)は難しかったです。ギタリストが作った “ザ・ロック”という感じの曲なので、それを「シンセでどうやろうか」と。強いリフが印象的なので、その勢いをおしゃれにすると勢いがなくなって別物になってしまうので、それをシンプルにするにはどうしたらいいか悩みました。

MARiA 確かに一番悩んでたよね。

toku 楽しかったですけどね。

ミュージックビデオも徹底的にこだわった。一曲一曲の世界観を大切にして衣装、ライティングにも手を抜くことなく取り組んだ。

MARiA 『フレンズ』とかはあの当時っぽい感じが出したくて、画面をブラウン管サイズにしてみたり。MVもどこまで自分達の色を表現できるかを一番考えました。「春よ、来い」も「飾りじゃないのよ涙は」も知らない人がいないし、色々なアーティストがカバーしているモンスター級の曲ばかり選んだので、逆にどこまで崩していいのか、tokuも悩んでいました。でも絶対自分達の色になっていると思うので、そこは自信があります。先ほども出ましたが、MVは一日3本撮りなのでスタイリストさんとヘアメイクさんが本当に大変だったと思います(笑)。

4年振りのワールドツアー開催。「海外のファンの、あのものすごいパワーをまた“浴びられる”と思うと楽しみ」(MARiA)

ガルニデは今年約4年振りとなるワールドツアー『GARNiDELiA stellacage 2023 -stella ship- Re:CoNNeCT』を開催する。5月から9月にかけて日本各都市と上海、北京、重慶、成都、深セン、韓国、台湾、香港、シンガポール、フィリピンなど世界約20都市以上を巡る大規模ツアーだ。

MARiA 日本のファンの方はもちろん、海外のファンの方にも早く会いたかったので、これだけ回れるのは嬉しいです。でも4年ブランクがあるので心配な部分もあります。ブランクはあったけど、時間は進んでいて自分も年を重ねてきたので、そこだけが唯一の心配といえば心配です。でも海外のお客さんのパワーがものすごいのでそれをまた“浴びられる”と思ったら、めっちゃ楽しみです(笑)。

toku たぶんツアーやりながら、曲もたくさん作らなければいけないスケジュールになると思うので、恐怖です(笑)。

MARiA ツアーを回っていると「もっとこういう曲欲しいね」という感じが出てくると思うので、それはすごくいいことだなって。そのライヴの中で生まれた感情を、鮮度が落ちないうちに曲に落とし込めるのは嬉しいなと思っています。tokuは超大変ですが…(笑)。

toku 音楽のスレイブしています(笑)。

「ONLY」(4月20日発売)
「ONLY」(4月20日発売)

走り続けるガルニデは4月20日に最新曲「ONLY」(テレビアニメ『贄姫と獣の王』ED主題歌)を配信リリースした。

GARNiDELiA オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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