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木根尚登 ソロ30周年「“なんかいいね”と言ってもらえる曲を作り続けてきたつもり」【前編】

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
Photo/平野タカシ

ソロデビュー30周年記念ベストアルバム『キネコレ ~NAOTO KINE SONGS COLLECTION~』

『キネコレ ~NAOTO KINE SONGS COLLECTION~』(12月24日発売)
『キネコレ ~NAOTO KINE SONGS COLLECTION~』(12月24日発売)

木根尚登(TM NETWORK)ソロデビュー30周年を記念したベストアルバム『キネコレ ~NAOTO KINE SONGS COLLECTION~』(2022年12月24日発売)が話題だ。1992年12月1日にシングル「泣かないで」でソロデビューを果たし、独自の活動をスタートさせた木根のこれまでの楽曲から厳選した30曲に加え、次の活動に向けた一歩として、ソロデビューシングル「泣かないで」のピアノ弾き語りバージョンを新たにレコーディング。"これまで"と"これから"の木根尚登を知ることができる作品になっている。ソロ30周年を迎え、シンガー、クリエイターとして作品にどう向き合ってきたのか、その仕事の流儀や、今年40周年イヤーに突入するTM NETWORK(以下TM)についてなどロングインタビュー。様々な角度からアーティスト・木根尚登の“これから”にスポットを当てていきたい。

「振り返るのはもうこのあたりでいいんじゃないかな」

――今回の『キネコレ』についての前後編のコメント動画の中で「今まで20周年、25周年、30周年と振り返ってきたけど、振り返るのはもうこのあたりでいいんじゃないかな」とおっしゃっています。

木根 僕の場合はTMもあるので「3人でデビューして、もう39年になるのか」って少し客観的に見ることができますが、ソロに関しては「もうそんなに経ったんだ」くらいの感覚しかなくて。TMの場合は振り返るのを極端に嫌う性質のグループなので、一番やりたくないのが、ただ昔のヒット曲だけをやるライヴで、そこは僕もわかります。小室(哲哉)君主導で「何か、新しいことやろうよ」ということを続けてきたグループで、僕もそれに乗せていただいてこれまでやってきました(笑)。ソロも自分なりに何か新しいことをやろうってその都度考えて、今回も新録を入れたり前に進んできた感じなんです。

「ソロはギター一本で身軽にどこにでもいけるので、ずっと動き続けてきた」

Photo/平野タカシ
Photo/平野タカシ

――木根さんはTMとしてのライヴよりもソロとしてのライヴの方が圧倒的に多いですよね。

木根 そうなんです。ギター1本で身軽ということもあって年に50本やったりして、それもどこかやり尽くした感があって。客観的に見ると、どこに行っても「泣かないで」を歌っている自分がいて。おかげ様でアルバムも10枚以上リリースできて、楽曲もかなりの曲数があるので、手を替え品を替え、過去のものを中心にずっと歌ってきて、それが30年続いたっていうことに、もういいかなって感じたのだと思います(笑)。でもわからないですよ、「もういいかな」って言いながら、また今年も来年も同じようにこの曲でデビューしましたって「泣かないで」を歌っているかもしれないですし(笑)。

――TMとして40年、ソロとして30年、ずっと動き続けてきています。

木根 コロナ禍で3年ぐらいストップしていた時期を除けば、毎年ツアーをやっていました。先ほども出ましたが、僕の場合はコラボライヴとかも含めて身軽にどこにでも行けるというのが大きいと思うし、それもあってずっと動いてきたなと自分でも思います(笑)。

「TMの去年のツアーはすごく楽しかった。3人の仲がまた深まって、新たに同じ方向を見ている感じがした」

――TMとソロ、全然違うものだからやり続けることができたのかもしれませんね。

木根 TMの去年のツアーも新鮮でしたね。当たり前だけどソロとはやることが違うので。ソロはピアノやアコースティックギターでの弾き語りで、TMの場合エレキギターやパフォーマンスが出てくるので、「俺はこれなんだな」って自分の使命として今まで割と淡々とやってきたけど、昨年のツアーはそれがすごく楽しかった。そういう年齢になったのか、なにか抜けたのか、小室さんのむちゃぶりにも「ええ?」って言いながら一生懸命練習してる自分がいて(笑)。10~15年前だったら「できねえよ」って言っていたかもしれないけど(笑)、でも、楽しめた自分がそこにいて。僕達三人はそんな変わってないけど、より仲良しな感じでやっている感はあります(笑)。最近はみんな饒舌になって、今はまた新しく同じ方向を見ているのかなって感じます。

ピアノ“ベーゼンドルファー”へのこだわり。「今年はピアノの弾き語りツアーをやりたい」

――TMは2024年4月21日で40周年なので、今年は40周年イヤーに突入しますが、すごくいい雰囲気で来年を迎えられそうですね。木根さんもコメント動画の中で「今年は楽曲提供した曲をカバーするライヴを考えている」とおっしゃっています。

木根 自分の中で新鮮に感じることをやろうと思った時に、今までのライヴでも提供した曲のカバーを1~2曲歌っていましたが、今回は楽曲提供させていただいた曲を中心に、ピアノで回りたいと思いました。ピアノの弾き語りライヴも今までも単発ではやったことがありますがツアーでは初めてです。

――エレピではなく、生ピアノにこだわるとお聞きしました。

木根 それは、どうしても「ベーゼンドルファー」というピアノで弾き語りをやりたかったからです。今までは恥ずかしい話、ピアノに関してはギターと違って全くこだわりがなかった。でも今回は「ベーゼンドルファー」にこだわりました。調べたら「スタインウェイは、よりパーカッシブなピアノだ」という発見があって。やっぱり音が大きいんです。それでやっと気がつきました。ホールだと「スタインウェイ」が多くて、佐藤竹善さんと二人で回ってるツアー(「木根尚登×佐藤竹善 My Favorite Songs」)で1曲弾き語りがあって、歌が追いつかないぐらいピアノの生の音が大きくて、それはいつも感じていました。でもこんなものなのかな、ぐらいにしか思っていなかったら「スタインウェイ」の音が大きいということに、65歳になってやっと気づきました(笑)。「ベーゼンドルファー」は真逆で、ウッディなしっとりとした音なんです。

――今回のアルバムを聴いて改めて感じたのは、木根さんの曲に一貫しているのは、メロディがとことん優しいということで、ピアノの音色が変わるとそこがより際立って聴こえてきそうな気がします。

木根 僕もやっぱりそう思ったんですよ(笑)。だってピアノの違いとか、そんな情報誰も教えてくれないし(笑)。でもうちのスタッフに、2019年に河口湖円形ホールでファンイベントをやったとき(『The Beginning Of The End in河口湖』)「木根さん、河口湖でベーゼンドルファー弾いてますよ」って言われたけど、気づかなかったし(笑)。でも、確かにあの時はそんなに音が大きいって思わなかったなって思い出したんです。「ベーゼンドルファー」のことを調べていたら“ウィンナートーン”という言葉が出てきて、これはウィーンの音という意味で、「あ、これ、ツアータイトルにしよう」と思って。まだ発表してないんですけど、もう発表しちゃってもいいかな(笑)。

――『キネコレ』では「泣かないで」のピアノバージョンを新録しましたが、この時からピアノモードだったんですか?

木根 そうですね。ギターの弾き語りの比べると、ピアノの弾き語りが大変なことはわかっていますが、あえて挑戦しようという感じです。どんなライヴになることやら…。「こんなことでこのホール使うなよ」って言われたら嫌なので頑張ります(笑)。

「僕は何でもまず最初は“え!”から始まる(笑)」

写真提供/ソニー・ミュージックレーベルズ
写真提供/ソニー・ミュージックレーベルズ

――「泣かないで」はピアノバージョンになるとその表情が全然違ったものになっています。

木根 このアイディアを聞いた時も「え!」って感じでした。僕はまず最初は必ず「え!」から始まります(笑)。去年TMのツアーで小室さんに「エレキ弾いて」って言われても「え!どこの、何を?」みたいな(笑)。「泣かないで」のピアノバージョンも最初は「できるかな」って思ったけど練習してるうちに、いい感じになってきて、やらせていただきました。

――世界観がガラッと変わったし、当たり前ですけど声が他の楽曲と比べたら、生々しくて、それが良かったです。

木根 何よりも30年経って、色々あったことが全て僕の中にあって、それが歌にも出ているのかなって思いました。

【後編】に続く。

エンタバアキバにて木根尚登30周年を記念してポップアップショップの開催が決定。

【木根尚登30周年記念ポップアップショップ】

■2月21日(火)~3月5日(日)

※2月28日(火)定休日

■会場

エンタバアキバ by SHINSEIDO

東京都千代田区外神田1丁目2-7 オノデン秋葉原本館 B1階

平日 13:00~20:00 土日祝 11:00~20:00

otonano 木根尚登スペシャルサイト

木根尚登オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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