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GARNiDELiA “芸に恋した”思いを映したアニソンと、“圧巻”のJ-POPカバーが話題

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ポニーキャニオン

新曲を2か月連続リリース

結成13年目に突入したGARNiDELiA(以下ガルニデ)は、昨年、それぞれが初のソロ作品を“楽しみ”(MARiAは今年6月、2枚目のソロアルバム『Moments』をリリース)、そこで得た新しい発想、斬新な音楽をガルニデの音楽に還元させ、11月にアルバム『Duality Code』を発売した。そこには「そうきたか」と思わせてくれる新鮮な歌と音楽が詰まっていた。あれから約10か月。9月30日に「幻愛遊戯」、そして10月19日に「謳歌爛漫」と新曲を連続リリース。ガルニデの新たな世界観を楽しむことができる楽曲だ。この2曲について、そして好評の『Cover Collection』シリーズについて、MARiAとtokuにインタビューした。

「嘘なのかまやかしなのか惑わせられるから、芸能事って惹かれるという部分をクローズアップ」(toku)

「“芸に恋した自分”とアニメの主人公を重ねて歌詞を書きました」(MARiA)

「幻愛遊戯」
「幻愛遊戯」

「幻愛遊戯」は、テレビアニメ『うちの師匠はしっぽがない』の主題歌で、昨年9月にリリースした「オトメの心得」(テレビアニメ『大正オトメ御伽話』主題歌)と同様に、大正時代がテーマになっている。ガルニデならではの四つ打ちのエレクトロポップから、後半はレゲエのリズムに変わって、トランペットが入ってきたり、でもどこか歌謡曲の風情も感じるユニークかつクールな作品になっている。

toku これは歌謡曲っぽく聴こえた方がいいという曲なんです。「オトメの心得」から大正時代もの続きで(笑)、しかも「ビッグバンド風で、オープニングっぽい華やかな感じで」というアニメの制作サイドからリクエストがあって、それも「オトメ~」と共通していたので、どうやって変化をつけるかがテーマでした。でもこのアニメが、落語で芸を極めていくということがテーマで、芸能界の裏的な話もえぐってくる部分があって、逆に『大正オトメ御伽噺』がピュアな世界観だったので、そこが正反対でした。今回はちょっとギラついた感じというか、嘘なのかまやかしなのか惑わせられるから、芸能事って惹かれるという部分をクローズアップしようと。イメージとして「オトメの心得」は昼で、「幻愛遊戯」は夜のギラっとした感じを出してみました。ギラっとしつつもアニメに登場するキャラはポップでかわいいので、その対比も面白いと思いました。

MARiA 昭和のアニソン、『キューティーハニー』のようなキャッチーでポップで、ちょっとセクシーで、みたいな感じを出したかったんです。実は私ももう芸歴でいうと20年ぐらい歌い続けていて、“芸に恋した”自分と、アニメの主人公や登場人物のキャラクターの気持ちとか、自分がステージに立つ思い、やり続けることの大変さとか、そういうところを全部リンクさせて、“主人公・MARiA”、みたいな思いで歌詞を書きました。“芸に恋した”という部分を擬人化しているので、恋愛ソングにも聴こえると思うし、でも芸事への愛が歌われていることがわかってもらえると思うので、ダブルミーニングになっています。

「裏とかプライベートとか関係なく、とにかくそのステージに立っている私が本物ということを伝えたかった」(MARiA)

<化かし化かされていたいの><ワタシのしっぽは掴ませない>――芸能事を極めていくという、アニメの登場人物との共通点があるMARiAだからこそ出てきた言葉たちだ。tokuが作るサウンドからMARiAが感じ取って、歌詞を紡いでいく。

MARiA この歌詞がよく出てきたよねって自画自賛です(笑)。<しっぽは掴ませない>という言葉は、アニメにも合っているし、芸の世界にも通じると思って、ここが日本語の面白さだと思いました。裏とかプライベートとか関係なく、とにかくそのステージに立っている私が本物ということを伝えたかった。私も落語家さんも、その時もしかしたら本当は心の中では泣いているかもしれないけど、元気を与えられる歌を歌ったり、笑ってもらえる演技をして、みんながそこに感化されるから、時間とお金を使ってくれるのが芸の仕事だと思うから、「幻愛遊戯」というタイトルにしました。みんなが見ている私も、もしかしたら幻かもしれないけど、でも、それでいいのが芸能事の世界で。だからリアルだし、結構えぐいことがテーマになっていると思います。

toku  サビは音符を詰めているので、言葉数も多くなって、結果的にラップのような濃密なカッコよさが生まれると思いました。サビ後のラストはキメたかったので<掴ませない>という否定的な言葉でビシッと締まっている感じで、思っていた通りの曲ができました。

MARiA 難題を振ってきたな、この人と思いました(笑)。最後の締めが難しすぎて「ここをキメないと、この曲やばい」と思って。でもハマりました。

toku 長年の関係から、何か言わなくても音から意図を汲み取ってくれます。

「謳歌爛漫」は『踊っちゃってみた』シリーズの最新楽曲であり、みゆめ・MARiA・217としての最後の楽曲

「謳歌爛漫」
「謳歌爛漫」

「謳歌爛漫」はMARiAが長年展開している、人気動画シリーズ『踊っちゃってみた』の最新楽曲であり、ダンサー・みうめの引退に向けて制作された、217との3人での動画シリーズのフィナーレを飾る作品でもある。ガルニデに海外ファンが注目し始めたきっかけのひとつになっている動画シリーズだけに、このラストを飾る曲も話題を集めている。

MARiA 10年ぐらいずっと続いてるプロジェクトのフィナーレというテーマがあったので、最初にtokuに“花火”をテーマに歌詞を書きたいから、「なんか、ドカンという派手な感じ」っていうイメージのサウンドにして欲しいってリクエストしました(笑)。それを音にするのもすごいですよね(笑)。2018年の「極楽浄土」という曲が、このシリーズをさらに盛り上げてくれたのですが、この時も和装で、和の踊りが映える感じにしたいから、和と四つ打ちのEDMの融合的な感じねって投げたら、tokuが書いてくれて。

toku 今回は今までの曲のメロディ感やカウンターメロディを入れる感じで作っていきました。

MARiA みうめが卒業するのでエールソングにしたいということは、言ってなかったけどメロディがそんな雰囲気で、歌詞を書いていて「泣けるやつじゃん、これ」って、書きながらちょっとエモくなって泣いてしまいました。3人のスケジュールを合わせるのも、衣装を作るのも本当に大変だったけど、世界中の人に喜んでもらえて、最初はこんなにも続くと思っていなかったので、色々思い出してグッときてしまいました。

toku 踊れると思ってなかった。

MARiA そもそもね(笑)。だからこんなに再生数が伸びると思っていませんでした。アニメで私達の曲に触れた海外の人も多いと思いますが、それプラスこの「踊っちゃってみた」シリーズによって、その距離がさらにぐっと近づいた感覚はあります。

J-POPカバーシリーズ「Cover Collection」に注力する理由

ガルニデがもうひとつ力を入れているのが、J-POPのカバーシリーズ「Cover Collection」だ。今年だけでも「CITRUS」(Da-iCE)、「春よ、来い」(松任谷由実)、「別の人の彼女になったよ」(wacci)、「廻廻奇譚」(Eve)、「フレンズ」(レベッカ)をデジタルシングルとして配信している。アレンジ、衣装、セット、照明に徹底的にこだわり、ガルニデらしさ全開の“圧巻”のカバーになっている。

MARiA もちろん低コストでコンパクトにやった方が楽だし、でも「いや、うちらがやるのに、ビジュアルプロデュースしないのはどうなのかな」というところから始まって(笑)。、曲のコンセプトに合わせてガラッと印象が違うのもGARNiDELiの楽しみのひとつだと思っているので。アレンジも含めて、ちゃんとやりすぎてます(笑)。

toku 普通にちゃんとレコーディング~ミックスまでやっています(笑)。楽曲に対してやっぱりちゃんとリスペクトしたいし、「我々はこういう解釈です」というところまで行き着くには、やっぱり“ちゃんと”やるべきだという思いが、最初の「紅蓮華」(LiSA)からありました。

MARiA カバーってピアノ1本と歌だけとか多いじゃないですか。でもうちらは違う。自分達の曲もカバーしてもらっているので、そう考えるとすごく頑張ってカバーをやってくれるとやっぱり嬉しいし、感謝の気持ちがすごく大きいです。tokuも言っていますが、カバーをするということに対して最大限のリスペクトが必要だし、自分達の曲が面白おかしく扱われてメロディが大幅に変わっていたりすると、やっぱり「あれ?」ってなります。だからできる限り、原型は崩さないで、そこにいかに私達らしさを入れていくか、だと思っています。と言いながらも、好きに、楽しくやっていただけることが嬉しいんですけどね。

toku 「フレンズ」の間奏のギターソロは完コピしてもらいました(笑)。曲への向き合い方がみんなそれぞれ違うから、そこがカバーの面白いところでもあるんですよね。

MARiA 一日で3曲収録するので、衣装も大量に持ち込んで、セット用の小道具とかもいくつも必要で、もうひーひー言いながら毎回撮っています(笑)。

toku 地獄絵図だよね(笑)。

MARiA でもカバーってすごく勉強になります。例えばレベッカの「フレンズ」とEveの「廻廻奇譚」は、約40年の時間差があります。これを一日でレコーディングすると、歌詞の長さ、情報量が全然違う、音楽の移り変わりを実感できます。曲の作り方や歌詞の詰め方が異次元。今の曲は尺的には短いのに、歌詞の情報量がすごいです。

小室哲哉×MARiAのコラボが話題

先日MARiAと小室哲哉のコラボソング「Trust On Me -Theme of E.T.E-」(トラストオンミー テーマオブエタ)が配信スタートし、MVも公開され、大きな注目を集めている。

「来年はとにかく盛りだくさんだということは宣言しておきます」(toku)

年末には一年を締めくくるライヴ『GARNiDELiA stellacage 2022 -stella ship- OSAKA and TOKYO』を行なう。12月16日大阪BIG CAT、12月18日東京EX THEATER ROPPONGIで、2022年のガルニデを総括し、来年以降の展望を提示する。

MARiA 今年あまりライヴができなかったので、今年を締めくくるという感じで、と言ってはいるものの、この9月からは来年に向けての助走期間だと思っていて。だからライヴは「来年も行くぜ」というテンションだと思います。

toku 来年は、とにかく盛りだくさんだということだけは宣言しておきます(笑)。楽しみにしていてください。

GARNiDELiAオフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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