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高橋幸宏 50周年を迎え、ソロ最初の黄金期、80年代前半の先鋭的なライヴ音源&映像に集まる注目

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ソニー・ミュージックマーケティングユナイテッド

“ユキヒロ×幸宏 EARLY 80s”――80年代前半にリリースしたソロ作品のリイシュー

今年6月6日、高橋幸宏は古希(70歳)を迎えた。そしてサディスティック・ミカ・バンドにドラマーとして参加し、本格的な音楽活動をスタートさせて50周年というひとつの節目を迎えた。昨秋より“ユキヒロ×幸宏 EARLY 80s”と銘打ち、80年代前半にリリースしたソロ作品のリイシューを進めている。その第4弾となるBOXセット『IT'S GONNA WORK OUT ~LIVE 82-84~』が9月14日に発売され、話題を集めている。

初の全国ソロツアー『YUKIHIRO TAKAHASHI 1982 WHAT, ME WORRY?』

まずDisc 1&2には4枚目のソロアルバム『WHAT, ME WORRY?』を引っ提げての初の全国ソロツアー『YUKIHIRO TAKAHASHI 1982 WHAT, ME WORRY?』の、1982年7月26日の新宿厚生年金会館公演の音源を収録。このライヴには細野晴臣(B/Key)、土屋昌巳(G)、立花ハジメ(G/Sax)スティーヴ・ジャンセン(D)という豪華なツアーメンバーに、さらに坂本龍一、鈴木慶一、加藤和彦がゲスト出演。「WHAT, ME WORRY?」「IT'S GONNA WORK OUT」を始めとしてニューアルバムから、そしてそれまでのソロアルバム『音楽殺人』『ニウロマンティック~ロマン神経症~』からも選曲。曲もステージセットも、そして衣装も全てがスタイリッシュで、80年代前半の音楽シーンで吹き始めた、新しいムーヴメントの“薫り”を楽しめる。高橋のキャリアの中でも、重要なライヴとして位置づけられるこのライヴを、砂原良徳の手によるマスタリングで、最新の音で楽しめる。

Disc 3はソロとしては初のライヴアルバム『tIME and pLACE』の最新デジタルリマスター版だ。1983年のアルバム『薔薇色の明日』リリースに伴うツアーから、立花ハジメ、鈴木慶一、ビル・ネルソン、デヴィッド・パーマーを迎えた8月の渋谷公会堂のライヴを収録。ボーカル、歌詞も含めてアルバム全体に漂う、高橋のロマンチシズムをライヴでも感じることができ、“静”と“動”のリフレインが作り出す独特の世界に引きつけられる。Disc 4には82年の渋谷公会堂、箱根森林公園でのライヴ映像作品『BOYS WILL BE BOYS』と、83年の映像作品『新青年』からセレクトしたライヴ映像のHDリマスター版を収録。ライヴには立花ハジメ、鈴木慶一、ビル・ネルソン、デヴィッド・パーマー、アイヴァ・デイヴィス、スティーヴ・ジャンセン、細野晴臣ら豪華メンバーが参加。当時の最先端の音を存分に楽しむことができる。

ドラマーであり、そしてこれまでに20作を超えるソロアルバムを発表している、シンガー・ソングライターでもある

ドラマーであると同時にシンガー・ソングライターである高橋幸宏。そのドラムプレイは、正確無比のリズムを刻みながら、少ない音数から繰り出される多彩な表現力は、他の追随を許さない。そのドラムテクニックと音楽的なセンスは、サディスティック・ミカ・バンドやYMOとして行なったヨーロッパツアーやアメリカツアーで、現地のファンを熱狂させ、成功させた大きなカギになっている。そしてその音楽センスを強く感じるのは、ソングライターとしてのワークスの数々だ。その作品を聴けば明らかだが、初期のソロアルバム一枚一枚から感じる色彩の豊かさ、そこに展開される独特の空間とその薫りには驚かされる。広い視野と進取の精神。これこそが高橋のドラムとソングライティングに共通しているものではないだろうか。

前述したサディスティック・ミカ・バンドやYMOという、世界に名を知らしめた歴史的なバンドをはじめ、高橋と鈴木慶一しか構築、表現できない大人のダンディズムを感じるロックのTHE BEATNIKSや、SKETCH SHOW、pupa、METAFIVEなど様々なセッションに参加。ドラマーとして“深化”していきながら、同時に様々な音楽と対峙した。そこに自身のアンテナにその時反応している音楽の世界を昇華させながら、これまでに20枚を超えるソロアルバムを発表している。ソロアルバムをここまで作っているドラマーは他にいない。

そんな高橋の迸るエネルギーと溢れる才能が最初にスパークしたのが80年代前半だ。最初の黄金期、そんな見方もできる。それはこの『IT'S GONNA WORK OUT ~LIVE 82-84~』を聴き、観れば伝わってくるはずだ。その後のアーティストに大きな影響を与えた高橋幸宏の作品群とドラムプレイ。クールさと瑞々しさを湛えた“EARLY 80s”の高橋のセンスに包まれる。

音楽活動50周年記念ライヴ『LOVE TOGETHER 愛こそすべて』開催

9月18日には高橋の音楽活動50周年記念ライヴ『LOVE TOGETHER 愛こそすべて』がNHKホールで行われた(本人は病気療養中のため不参加)。ゲストに細野晴臣を始め、大貫妙子、小原礼、小山田圭吾、木村カエラ、坂本美雨、サンディー、鈴木慶一、スティーヴ・ジャンセン、立花ハジメ、東京スカパラダイスオーケストラ ホーンセクション、Hana Hope、林立夫、原田知世、矢野顕子(映像出演)、LEO今井他多彩なゲストが出演し賑やかに行なわれた(11月5日(土)WOWOWで放送&配信予定) 。

「LOVE TOGETHER」
「LOVE TOGETHER」

さらにこのライヴに先立って、ライヴの音楽監督を務めた高野寛が書き下ろしたライヴのテーマソング「LOVE TOGETHER」が配信リリースされた。レコーディングメンバーは高野と細野晴臣、堀江博久、ゴンドウトモヒコ、大井一彌、Smooth Ace with SOTARO、そしてメインヴォーカルは高野、鈴木慶一、坂本美雨、そして大貫妙子という4名がリレーで歌い繋いでいる。アーティスト名“WALKING TO THE BEATS”は高橋の曲のタイトル「Walking To The Beat」に由来している。高橋と親交の深い仲間たちが、高橋にエールを贈る曲だ。

先日、高野寛とYMO、高橋幸宏の熱烈なファンであることを公言している、櫻坂46・小池美波が、高橋幸宏の魅力を語り合うスペシャル対談動画(前編)が公開され、こちらも話題だ。

“ユキヒロ×幸宏 EARLY 80s”シリーズを通して、高橋の輝かしい50年のキャリアを振り返るとともに、音楽シーンを牽引してきたその先進的な音楽に今一度触れたい。そして高橋幸宏という名のセンスに脱帽するはずだ。

otonano『ユキヒロ×幸宏 EARLY 80s』スペシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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