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TUBE ツアー完走、37回目の夏を“更新”「久しぶりのこの光景、感動以外のなにものでもない」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供(全て)/BSフジ

6月25日の大阪公演からスタートしたTUBEの全国ツアー『TUBE LIVE AROUND 2022 Emotional Summer』のファイナル公演が、7月19日東京国際フォーラムホールAで行われた。

何回目のコロナ禍での夏なんだろう。前回TUBEのライヴを観たのは確か2019年8月の横浜スタジアムだったと思う。以後、恒例の横浜スタジムライヴは2020年は無観客ライヴ配信で開催、2021年は中止になってしまったが、しかし今年は9月3日に開催することが発表され、ファンは歓喜した。だから今回の『TUBE LIVE AROUND 2022 Emotional Summer』のファイナルは、大団円を迎えた感覚と同時に、横浜スタジアムへと続く道――そんなワクワク感を残してくれた。

待ち侘びたファンからの大きな拍手に迎えられ、前田亘輝(Vo)、春畑道哉(G)、角野秀行(B)、松本玲二(Dr)とサポートメンバーがステージに揃うと、オープニングナンバーは「Remember Summer」だ。海の映像が映し出され、この音と前田の歌を聴いた瞬間、ジリジリと照り付ける夏の太陽と、吹き抜ける潮風を感じた。夏を“更新”しながら貫いてきた“強さ”だ。続いて「めぐりくるSeason」へと、エモーショナルな流れで客席は“静かに熱く”盛り上がる。

前田が満員の客席を眩しそうに眺め「久しぶりのこの光景、感動以外のなにものでもない」と感無量の様子だった。コロナ禍でのライヴでこれだけのお客さんが集まったこと、そして「去年の夏、歩く事さえ困難だった」と本人が語っていたように、自身の頸椎と腰椎の治療とリハビリを経て、このツアーで一年振りにステージに立てたこと、ファイナルまで辿り着いた喜び、様々な思いが胸に去来しての言葉だったのではないだろうか。

「いまさらサーフサイド」は、春シングルらしい初夏の爽やかなサウンドと切ない歌詞が印象的で、夏のDeja Vu」「自由への卒業」は、2020年に発売された、5年ぶりのフルアルバム『日本の夏からこんにちは』に収録され、これまでライヴでは披露されていなかった曲を歌い、客席を喜ばせた。

9月に控えている横浜スタジアムの話題になり、前田は「開催できるのはファンの皆さんと我々の(日頃の感染対策の)努力が実った結果」と改めて感謝し、「感染対策をしながら楽しめるアイディアを皆さんから募集したい」と語りかける。「例えば噴水の水を消毒液にするとか」という言葉に笑いが起こった。

壮大なメロディが胸に沁みる「荒野へ」、春畑のギターとサポートメンバーの勝田一樹のサックスの音が重なりグルーヴが生まれる「自由への卒業」。この曲に限らず、主旋律をユニゾンする二人の音が、TUBEサウンドのひとつの“表情”になっている。客席から「聴きたかった」という空気が流れてきたのは「ひだまり」だ。あまり披露されない名バラードは、TUBEの楽曲の親近感のあるメロディと、前田の解放感を感じさせてくれる声の“成分”をじっくり堪能することができる。ドラムの松本が、自身が出演するMVをバックに歌う「Endless Way」では、「トイレタイムではありませんよ」と自虐ネタ。安定の“松本ワールド”をみんな楽しんでいる。

6月22日に発売された最新シングル「夏立ちぬ」は前田が手がけた、時代の“今”の気分と、夏の風物詩の数々を歌詞に散りばめ、遠くにいる友、そして過去の自分自身に対しても想いを馳せる歌詞が沁みる。

終盤にさしかかり「A Day In The Summer〜想い出は笑顔のまま〜」、新曲「真夏のピュ〜!」(「夏立ちぬ」のカップリング)、「裸足のラッキーガール」とTUBEの王道ノリノリ爽やかソングで、客席はノリノリに。「真夏のピュ〜!」はスクリーン上で振り付けが流れ、これも横浜スタジムでみんなで楽しむ光景を想像してしまう。

本編ラストは「灯台」。前田が、親交がのある映画監督・松本和巳氏が手がけた映画『旅のはじまり』の完成間近の作品を観て、「絶対に使ってほしい」とお願いして、急遽挿入歌になったというエピソードを紹介してくれた。子供たちをテーマにした映画に、この優しいバラードが寄り添う。前田のスケール感の歌が大きな愛を感じさせてくれる。

アンコールは「泣いちゃえば」「夕方チャンス到来」と、花火大会の終盤のようなエモさ全開の盛り上がりで、客席も全力で楽しんでいる。そしてサポートメンバーが捌け4人だけで「ひまわり(Love & Peace ver.)」を披露。前田が「目を覆いたくなるようなニュースがたくさん流れていた頃、この曲が頭に浮かんできてリテイクしました」と、“今”歌うべき歌、届けるべき言葉なんだと、前向きな歌詞をひと言ひと言丁寧に歌う。そしてライヴはまだまだ終わらない。ダブルアンコールにメンバーが選んだのは「Lonely Revolution」。1988年の楽曲が全く色褪せていない。客席では涙を流しながら聴いているファンもいた。この曲の冒頭<High school 退屈な授業を抜け出し>という歌詞があるが、TUBEは高校時代の仲間から始まったバンドで、その仲の良さ、信頼が絆となって、それが音楽に豊かさをもたらしている。また、ステージ上で楽しそうに演奏している4人の姿を観ることを、ファンは一番楽しみにしている。

37年目のバンドの演奏はますますしなやかさを増し、どんなタイプの曲もきちんと聴き手の心の深いところに届けてくれる。前田の歌をとにかく“立てる”松本のドラムと、硬軟自由自在の角野のベースライン、目の前が開けるようなサウンドを紡ぐ、春畑のエモーショナルなギター。4人と、ギターの増崎孝司、サックスの勝田一樹、キーボードの宮崎裕介の欠かせないサポートメンバーとの強固なバンドアンサンブルが、この安定かつ瑞々しさを感じさせてくれる音を作り出し、ライヴを熱くする。その音と、全てを包み込んでくれるような、懐の深さを感じさせてくれる前田のボーカルが一つになって、大きな感動を連れてくる。

さあ次は9月3日の横浜スタジアム(『TUBE LIVE AROUND SPECIAL 2022 Reunion』)だ――そんなワクワク感を残し、ツアーは終了。

7月29日未解禁音源一挙配信

そして7月29日にはTUBEのサブスクリプションサービスへの未解禁音源が一挙に配信された。1985年から2015年にリリースされたオリジナルアルバム33作を含む計500曲で、「サマーシティ」、「虹になりたい」といった代表曲、この日演奏された「Lonely Revolution」、さらに「Heart of Rock'n Roll」、そして「Melodies&Memories」、「女神たちよそっとおやすみ」、「夏よありがとう」などのバラードナンバーなども含まれている。

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音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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