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モノンクル 人気アニメのEDに続き『Xperia1 IV』CM曲を手がけ、広がりを見せるその音楽

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ソニー・ミュージックレーベルズ

2月に発売した人気テレビアニメ『ヴァニタスの手記』のエンディングテーマ「salvation」が大きな注目を集めたモノンクル。枠やジャンルを超えた独自のハイブリッドなポップミュージックを提示し続けてきたモノンクルにとって、初のアニメ提供曲だ。

3月10日には今年初のワンマンライブ「モノンクル "salvation" RELEASE PARTY」を東京・WWW Xで開催。心待ちにしていたファン、そして「salvation」をきっかけにモノンクルの音楽に興味を持った新規ファンが駆け付け、その熱く、クールな音楽に体を揺らしながら楽しんでいた。一番楽しんでいたのは吉田沙良(Vo)と角田隆太(B)だろう。二人にインタビューし、この日のライヴのこと、そして5月11日に配信されるデジタルシングルで「SONY Xperia1 IV」グローバルタイアップ曲「Higher」について話を聞いた。

3月のライヴは新曲「salvation」を始め19曲を披露し、久々のライブを楽しみに待っていたファンに目一杯届けた。そしてなにより歌うこと、演奏することを本人達とバンドメンバーが心から楽しんでいたのが伝わってきた。

ライヴPhoto/木原隆裕
ライヴPhoto/木原隆裕

吉田 曲をあんなにたくさんやったのは初めてです。すごく気合が入っていたので準備にもすごく時間をかけたし、今までで一番シンプルに楽しくて、お客さんが一緒にノッてくれて嬉しかったです。

角田 確かにリハが多かったこともあって、いい意味でこういうライヴになるだろうなっていうイメージを持って臨めたし、実際にある程度イメージ通りのライヴになったことは僕たち的には新鮮でした。今までどうなるかやってみるまでわからない即興的な場面が結構あったんですが(笑)、今回はあえてほとんどそういうシーンをなくしたことで、今までとは違う捉え方でライヴが出来ました。お客さんの顔がよく見える照明だったので、マスク越しでもすごく楽しそうにしてくれているのが伝わってきて、やりやすかったです。

「コンセプトを聞いて“ロケーションフリー”、“空で全部が繋がっている”というイメージが湧いてきました」(角田)

デジタルシングル「Higher」
デジタルシングル「Higher」

アニメのタイアップの次は、「SONY Xperia1 IV」グローバルタイアップという、大きなプロジェクトの一翼を担う楽曲のオファーが舞い込んできた。 “想像を超える体験を届ける” Xperiaの新製品のタイアップソングが新曲「Higher」だ。キャッチーで構成が面白く、不思議な感覚を与えてくれるクールなポップスだ。

角田 この曲は「SONY Xperia1 IV」のタイアップソングであると同時に、その中に入っている音楽録音機能「Xperia Music Pro」のイメージソングにもなっていて、二つのプロジェクトそれぞれには、もちろん根底に同じものが流れていながら音楽的に頂くオーダーは別のベクトルのところもあったりしたので、それを一つにまとめる感覚の作業は印象的でした。だから構成が面白いと言っていただいたのも、そういうところが“組み合わさって”いるからかもしれません」。

角田隆太(B)
角田隆太(B)

「Xperia Music Pro」は、レコーディングスタジオのクオリティをスマホに入れて、どこでもレコーディングスタジオになるというコンセプトの音楽録音機能だ。

角田 コンセプトを聞いて“ロケーションフリー”、“空で全部が繋がっている”というイメージが湧いて、空に昇って行くと世界がどこでも繋がっている、というストーリーが思い浮かんできました。

言葉を届けたい、届けようという強い思いがモノンクルの音楽からはいつも伝わってくる。

吉田沙良(Vo)
吉田沙良(Vo)

吉田 それはすごく意識しています。最近は曲の作り方も変わってきて、歌詞やテーマを決めてそこから制作していくというやり方が以前より増えたので、当然言葉に重きを置きながらモノンクルらしい音楽を、言葉と音楽のバランスを考えながら作っています。

後半、途中で曲調が変わってアコギ1本のモノラルのような音になって、まるでデモ音源のような感じになる部分がある。そこからまた戻ってエンディングに向かう。ハッとさせられ、印象的に残る部分だ。

角田 デモ音源のようというのはまさにその通りで「Xperia Music Pro」の“レコーディングスタジオを持ち歩く”というテーマを聞いた時にすぐ思い浮かんだアイディアでした。

吉田 製品としてパッケージされるものでも、ちゃんとした環境で録っていなくたっていいし、ちょっとおうち感があっていいし、雑音が入っていてもいい。それでも良い音楽になる、というメッセージを込めました。

「どんな活動をしてても全てはモノンクルのために、というところは常に根底にあります」(吉田)

ボーカルの吉田沙良は、先日ソロとして「夢の中で作った曲を仲間と映像化した」『逅彁-i say-』を発表。独自の世界を具現化させ、モノンクルとは違うクリエイティヴを見せてくれている。

吉田 あれは完全にアートの方に振り切って作ったというか、最初は仲のいいカメラマン、映像作家、メイクさんと火鍋を食べようってなって、どうせなら何か撮ろうと(笑)。本当に遊びで始まって、曲は私が夢の中で聴いた曲なんです。パッと起きて、「コードを覚えているうちに現実に落とし込まなきゃ」と思って、角田さんに夢の中で鳴っていたコードをギター弾きながら探してもらいました。こんなこと初めてでした。

角田 沙良の“灰汁”の部分というか、毒の部分というか、無意識の中から浮き上がったものがこういう形をしているんだ、っていうのがものすごく面白かったです。コードについても明確なディレクションがあったし、ほとんど僕は手伝い以上のことは何もやってなかったです。

吉田 私も面白かったです。でも実は夢の中では、メロディを考えているのにうまく思いつかなくて、角田さんに「ここがどうしても浮かばないんだけど考えてくれる?」って頼んだら最高なメロディを作ってくれたっていう夢だったんです。だから実際は角田さんが作ったって言った方がいいかもしれません(笑)。不思議な曲になりました。自分自身が曲を作って全てをプロデュースするということが初めてで、自分がどんな人なのかということを、みなさんにもっと知ってもらう機会を持つというのは必要だと思ったしそういう機会になればいいなと思いました。自分と向き合って表現をすることで、シンプルにリスナーからどんな反応があるのか楽しみだし、それで開く新しい扉も必ずあるので、視える世界が広がるんだなと思います。あと、どんな活動をしてても全てはモノンクルのために、というところは常に根底にありますね。

角田 あと、音楽の制作の過程で、モノンクルの場合僕がパソコンの前に座って大方作った後に沙良が気になったところを少しいじってゆく形が多かったんですけど、今回はビートを組むところから全部自分でやって試行錯誤しながら形にしていたので、特にこの曲を作った後から沙良が作曲やアレンジにより具体的にアイデアを持つようになったし、作品を生み出していくことに凄く前向きで積極的になったと感じています。

YouTubeの人気コンテンツ「With ensemble」初のライヴに出演

モノンクルは今年の夏から秋にかけてライブやイベントに精力的に行なっていく。5月28日には、アーティストとオーケストラによるここだけのアンサンブルを届ける、YouTubeの人気コンテンツ「With ensemble」が初めて行うライブ『LIVE With ensemble Vol.1 MONONKVL×Omoinotake』に出演する。ヴァイオリニストでmillennium paradeのメンバーとしても活動する常田俊太郎をプロデューサーに迎え、ヴァイオリン×2、ヴィオラ、チェロ、ピアノという編成の演奏で、この日だけのオリジナル・アレンジで披露する。ジャズを起点に、ロック、ポップス、ブラジル音楽、そしてクラシック、あらゆる音楽が二人のフィルターを通して、モノンクルの音楽に昇華されている。今回のライブは、弦とピアノの豊潤な音に、吉田の芳醇な歌が重なるとモノンクルの音楽が、さらに深い味わいものになりそうだ。

角田 Omoinotakeさんの音楽は、弦楽四重奏と絶対合うだろうというのがわかるし、「With ensemble」の素晴らしいチームとまた一緒にやれることが、今から楽しみです。

吉田 YouTubeの方では何曲かやらせていただいていますが、あの編成でBLUE NOTE TOKYOで、しかもOmoinotakeさんと一緒にできるなんて楽しみすぎます。モノンクルのステージには更にあの編成にコーラス隊が入ります。この日のためだけの特別アレンジで挑むので、かなりゴージャスな感じになると思うし、最近やっていない生音のライブなので、すごく貴重な夜になると思っています。

角田 こういう編成は、本当にごまかしが効かないんですよね(笑)。

吉田 だから怖いんです(笑)。頑張ります。

モノンクル オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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