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JUJU 話題のドラマ主題歌で見せた新境地「“ままならない曲”を歌ってきたJUJU感は必要なかった」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ソニー・ミュージックレーベルズ

12月15日の放送で最終回を迎える、杉咲花主演の注目のドラマ『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ系)。スタート以来好調だったドラマを盛り上げていたのが、JUJUが歌う主題歌「こたえあわせ」(11月10日発売)だ。ドとリンクした歌詞、流れるタイミング、ドラマと歌が完全にひとつになった相乗効果は、毎回オンエア後のSNSの盛り上がりが物語っている。同曲のオフィシャルオーディオは107万回再生を超え(12/12現在)、そして第9話(12月8日)放送の直前にはドラマの名場面を散りばめた「こたえあわせ」のスペシャルMUSIC VIDEOが公開され、再生数は30万回を超え(同)、さらに数字を伸ばしている。

このドラマは、光と色がぼんやりわかる程度の弱視の盲学校生ユキコ(杉咲花)と、喧嘩っ早いが純粋な不良少年の森生(もりお/杉野遥亮)が運命の出会いを果たした二人の恋の行方を描いている。笑ってグッときて泣けて、時々ハッとするラブコメで、WEB連載の累計閲覧数が2000万PVを超える原作同様、ファンが多いドラマだ。

2020年、4枚組ベスト『YOUR STORY』、カバーシリーズ『俺のRequest』をリリース。“その先”のJUJUを見せるシングル

9話放送後はSNS上では「何この演出泣く」「すれ違う2人辛い!切ない!」「好きなのに別れるなんて辛すぎる」と様々なコメントが飛び交い、盛り上がった。この盛り上がりにひと役も二役も買っているのが、JUJUが歌う主題歌「こたえあわせ」だ。これまでのJUJUの作品とはひと味違う柔らかで優しい歌い方で、ドラマにまさに寄り添うような作品だ。

この曲はJUJUにとっても大切な作品になる。というのも昨年4枚組のベスト盤『YOUR STORY』、そして人気カヴァーアルバム『Request』シリーズの第4弾『俺のRequest』をリリースし、これまでのJUJUをたっぷりと見せ、次のシングルでは気持ちを新たに、新しいステージに向かうんだという意思表示をファンにしなければいけなかった。それが「こたえあわせ」だ。パッケージにはカップリング曲として安全地帯の名曲「じれったい」のカバーや、「やさしさで溢れるように」「この夜を止めてよ」の THE FIRST TAKEバージョンが収録され、JUJUの“これまで”と”これから”が存在しているが、それが「こたえあわせ」のインパクトを、より強くしている。この曲の歌詞にあるようにJUJUは<ひとつの窓からじゃ 見渡せない/景色がこんなにあったの>という言葉に自分の思いを乗せ、届けてくれる。

「こたえあわせ」(11月10日発売)
「こたえあわせ」(11月10日発売)

この作品のプロデュースは、JUJUの昨年のシングルで、やはりドラマ主題歌だった「STAYIN’ ALIVE」を手がけた蔦谷好位置、作詞はシングル「ミライ」の作詞も手がけている蒼山幸子、作曲はYOSHIHIRO(KEYTONE)が手がけている。JUJUはこれまでどちらからいうと“ままならない”恋愛の歌を数多く歌い、その懐の深い歌で感情を際立たせ、共感を得てきた。しかし「こたえあわせ」ではまさに新境地ともいえる歌の表現力を見せてくれている。瑞々しさを湛える歌はどこまでも新鮮で柔らかで、でもその中に凛とした強さもしっかりと存在させてくれている。〈答え合わせを忘れた ふたりは自由で/ぼやけてる未来さえも怖くないよ〉と、何も恐れるものはないんだと聴き手の心を鼓舞してくれる。もちろんドラマの中の二人、ユキコと森生の背中も背中も優しく押してくれている。

「“ままならない曲”を歌ってきたが、今回はその“JUJU感”が全く必要ないと感じた」

先日JUJUと杉咲花の対談が実現したというニュースが大きく取り上げられていた。その中でJUJUは「ユキコさんと森生くんが出会って、お互いが答え合わせをしない毎日に進んでいけるとしたらそんなに素敵なことってないなって本当に思って。JUJUっていうものは、今まで9割9分2厘ぐらい〝ままならない曲″を歌っているのですが、その〝JUJU感″が今回のドラマには全く必要ないなって感じて。今回はたぶん私史上、いちばん出演者お二人のことを考えながらしたレコーディングでした。ドラマを邪魔したくなかったんです。だから、今回は歌の中での言葉の発し方を本当に考えました。自分の中の新しい自分みたいなものを垣間見るレコーディングでした」(抜粋)と語っている。

ユキコと森生はそれぞれ、目が見えることが“普通”、尖っていないのが“普通”という思いがあった。そこからはみ出している二人は、はみ出すこと=悪いこと、という風潮が強い世の中で、生きづらさを感じている。でも、それが普通か普通じゃないのかなんて“こたえあわせ”する必要がないと、JUJUは優しく、そして強く伝えている。

岸谷五朗、奈緒、JUJU、杉咲花
岸谷五朗、奈緒、JUJU、杉咲花

このJUJUの言葉に対して杉咲は「確かに、初めて聴いたときに、今まで聴かせていただいていたJUJUさんの曲からまた少し印象が変わっているように感じました。それが、JUJUさんのお話を伺って、そういうことだったんだって、今思いました。この曲が生まれるまでの道のりを知ることができて、今までになかった聴き方が今日この後からできそうな気がします」と語っている。さらに「『こたえあわせ』の歌詞の中に<今までより夢見るのが怖くない>という部分があるじゃないですか。そこがすごく好きで。このドラマはラストにかけて、ユキコと森生がお互い夢に向かって進んでいく話になっていくのですが(歌詞が書かれた時点で)結末は知らなかったはずじゃないですか。それなのに、こんなにも作品とリンクしてるだなんて、すごいなって思いました。私自身もユキコとして森生のことを思い浮かべるとき、この曲を聴かせていただくことでより思いが膨らんでいく感覚があって、お芝居をする上でもすごく助けていただいています。この曲を聴くことをできるのが心強いですし、最後まで頑張れそうって思っています」(抜粋)と、音楽とドラマがそれぞれ光を当て合い、大きな感動を生み出していることを喜んでいる。

ドラマでは二人が進む道を、JUJUが歌う「こたえあわせ」が眩いばかりの光量で照らし、明るい未来へといざなってくれている。同時に全てのリスナーの心に希望の灯を灯してくれる。

JUJU オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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