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松崎しげる主催・黒フェスで、ももクロ、手越祐也、オーイシマサヨシらが共演「エンタメの灯は消さない」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/オフィス・ウォーカー(以下同)

第7回目は客席を2000席に制限

松崎しげる主催のイベント『黒フェス2021~白黒歌合戦~』が9月6日、東京ガーデンシアターで行われた。7回目を迎えた今年は12アーティストが出演。8000人収容の同会場を、新型コロナウイルス感染対策のため2000人に制限するなど、「エンタメの灯を消さない」(松崎)ために、万全の態勢をとり開催。

ライヴを待ちわびたファンはもちろん、病気やケガから復帰しその元気な姿を見せる場になったり、久々の有観客でのステージになるアーティストも多く、それぞれの思いがこの日のステージでは高い熱量になって会場を包んだ。

mao
mao

豆柴の大群
豆柴の大群

市川由紀乃
市川由紀乃

maoが歌う「夢をかなえてドラえもん」でスタート。その伸びやかな歌声が会場の隅々にまで響き渡り、温かな空気が流れる。一転して豆柴の大群はエネルギッシュなステージで客席の温度を上げていく。白黒歌合戦にちなんだ、白×黒の着物で登場したのは初出演の市川由紀乃。石川さゆりの「天城越え」のカバーを情感豊かに歌い、その表現力に客席が引き込まれていく。女性の情念を表現しロングヒットになっている「秘桜~ひざくら~」も披露した。ここまでの出演者を見ても、ジャンルの枠を超えた、という言葉では足りないほどバラエティに富んだアーティストが登場し、客席の幅広い年齢層のファンを楽しませていた。

森口博子
森口博子

松本伊代
松本伊代

早見優
早見優

森口博子は圧倒的なボーカル力でガンダムソング「ETERNAL WIND~ほほえみは光る風の中~」などを披露し、MCでは笑わせ、さすがのステージ。早見優が当時と全く変わらない「夏色のナンシー」を披露し、続いて7月に背骨を圧迫骨折し、復帰後初ステージとなった松本伊代は「センチメンタルジャーニー」で、やはり当時と変わらない空気感を感じさせてくれた。そしてこの二人に森口博子を加えた三人で、本田美奈子.の「Oneway Generation」を披露。3曲続けて筒美京平メロディだ。改めて稀代のメロディメーカーが作る作品の素晴らしさを堪能できた。

オーイシマサヨシ
オーイシマサヨシ

手越祐也
手越祐也

静かに熱く盛り上がる客席

「アニソン界のおしゃべりクソ眼鏡」と自身を紹介しながら登場したのは、アニソン界で絶大な人気を誇るオーイシマサヨシだ。「君じゃなきゃダメみたい」、「学園天国」のカバーなどポップでキャッチーな楽曲を次々と投下して、客席の全てのファンを楽しませる、オーイシマサヨシ流エンターテインメントショーで盛り上げる。久々の有観客ライヴになった手越祐也が登場。「シナモン」を皮切りに7月から6カ月連続で新曲をリリースし、9月22日からはツアーがスタート、さらに12月にはフルアルバムも発売予定で、加速してきた現在の活動を感じさせる、美しくパワフルで、熱さが伝わってくるステージ。ダンサーを従え、その変わらない圧巻のボーカルで「ARE U READY」や「シナモン」「七色エール」などを披露。手越はライヴ後、SNS上に「音楽してステージ立ってる時が一番幸せだ!」とメッセージ。ファンはもちろんだが、この日のステージを一番楽しんだのは本人だ。

ももいろクローバーZ
ももいろクローバーZ

神奈月&大友康平
神奈月&大友康平

黒フェス皆勤賞のももいろクローバーZはこの夏、百田夏菜子、玉井詩織が新型コロナウイルスに感染し、佐々木彩夏は右末梢性顔面神経まひで入院と、ファンを心配させるニュースが続いたが、元気な姿を見せ変わらないパワフルなステージで盛り上げ、安心させた。メンバーもステージに立てる喜びをかみしめながら「境界のペンデュラム」や「DECORATION」「黒い週末」などを全力で披露し、ファンに元気と勇気を与えた。“モノマネ枠”で登場したのは神奈月。吉川晃司や井上陽水など十八番ネタを次々と披露し、人気ネタのひとつハウンドドッグ大友康平のモノマネをしていると、ハウンドドッグの「ff(フォルティシモ)」のイントロが流れてきて、サプライズで大友本人が登場し客席が沸く。一緒に熱唱し終えた神奈月は、驚きながらも「出番がももクロの後って、おかしいと思った」と嬉しそうに語っていた。

松崎しげる
松崎しげる

「一歩ずつ前に進むことが大切」(松崎)

「ラプソディー・イン・ブルー」の壮大かつメロウなメロディが流れてきて、いよいよ“大将”が登場。このフェスの主催者・松崎しげるだ。71歳になっても、その爆発的なボーカルパワーと表現力はますます冴えわたり、自身のルーツミュージックであるスウィングジャズのスタンダードナンバー「it don’t mean a thing」や、ジェームズ・ブラウン「I Feel Good」をカバー。さらに「リクエストが多い」(松崎)という「スタートライン」や、このフェスには欠かせない「愛のメモリー」を歌い、感動を届ける。「一歩ずつ前に進むことが大切」という松崎の熱くも真摯な思いが、この日の出演者、ステージ、そして客席の隅々にまで伝わっていた――そんな思いに駆られた今年の黒フェスだった。

黒フェスは10月末頃、JOYSOUND「みるハコ」で無料配信されることが決定している。

黒フェス オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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