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イギリス発の人気ジャズフェスが日本上陸 パワースポット・秩父に、今一番聴きたいアーティストが集結

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ユニバーサルミュージック

イギリス発のヨーロッパ最大規模の野外ジャズフェスティバル『LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL』、5月日本初上陸

ヨーロッパ最大規模の野外ジャズフェスティバル『LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL』が、5月15日(土)、16日(日)に埼玉・秩父ミューズパークで開催されることが発表された。このフェスは、毎年7月にイギリス・イースト・サセックスで開催されるジャズ、ソウル、ファンクなど、洗練された音楽を楽しむことができるフェスとして世界的人気のフェスで、日本では初開催となる。出演アーティストは現段階(3月28日現在)で、15日にDREAMS COME TRUE / Ovall (Guest:佐藤竹善, さかいゆう and more) / 黒田卓也 aTak Band /SIRUP / iri、16日は SOIL&“PIMP”SESSIONS(Guest:Awich, SKY-HI and more) / Nulbarich / WONK /Vaundy / Answer to Remember(Guest : KID FRESINO, ermhoi, Jua, 黒田卓也)と、今聴くべき、そして観たいアーティスト達がラインナップされている。“アーティストが出たいと思うフェス”としての存在感を、早くも放っている感がある。このフェスの魅力、そしてコロナ禍での開催決定ということで、様々な困難と対峙しながらここまで組み立ててきたイベント実行委員会に話を聞いた。

『LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL』はアジア初開催として、昨年5月豊洲PITでロンチイベントの開催を予定していた。ロバート・グラスパーをヘッドライナーにミュージックソウルチャイルド、セルジオ・メンデスの海外勢を含め約20組のアーティストがパフォーマンスやDJを披露するはずだった。しかし公演は中止に。日本だけではなく本国イギリスでも同様で、2020年は中止、2021年の開催にも慎重な姿勢を示している。

「自制しながらみんなで共有し、その中で最高の音楽と雰囲気を楽しんでいただきたい」

「去年はロンチイベントと捉えていて、ホップ、ステップ、ジャンプではありませんが、今年正式開催ということで、本国とも話をしていました。昨年同様いい季節の5月に開催したいと思っていました。この時期、会場の秩父ミューズパークはツツジや芝桜などの花が満開で新緑も出てきて、本当に気持ちがいい公園なので、来て下さる皆さんにリフレッシュしていただきたいです。ただ、感染拡大予防の観点から、どうしてもお客さんに不自由さを感じさせてしまうことが前提になってしまいます。ソーシャルディスタンス、マスク着用義務、声を出さないで欲しいとか…。自制しながらみんなで共有し、その中で最高の音楽と雰囲気を楽しんでいただきたいです」。

5/15のヘッドライナー・ドリカムは特別編成でパフォーマンス

初日のヘッドライナーはDREAMS COME TRUEだ。約1年半振りの有観客ライヴで、この日は配信イベントでしか見ることができなかったアコースティック編成に、馬場智章(サックス)、DJ MASSを迎えた”LOVE SUPREME”特別編成でのパフォーマンスを披露する。このイベントへの出演についてメンバーの中村正人は「新しい『音楽する』環境の構築に、この一年半、全力で取り組んできた我々にとっても大きなチャレンジだ。ポップスを生業とするDREAMS COME TRUE。でもその人生は波乱万丈、まさにJAZZそのもの。32年前、イギリスで1stアルバムを制作したのも何かのご縁か。このコロナ禍で苦し紛れに発明したアコースティック風味なアレンジを施した楽曲を、ゲストに馬場智章、DJ MASSを迎え、さらに攻めたバンド編成で音楽します。どんなステージになるかやってみないとわからない。『JAZZフェスにドリカムかよ』とか言うなよな。コロナ対策して、心を広くして、お楽しみに」とコメントしている。できることを最大限楽しんで、最高のものを作り上げるという、コロナ禍でアーティストが出した答えだ。

ドリカムの出演について担当者は「ポップアーティストのドリカムではなく、ソウル、ファンク、R&Bに寄ったジャズアレンジでのスペシャルセッションになります。ドリカムの音楽の“真髄”を楽しんでいただけると思います」と語ってくれた。さらに「ドリカムだけではなく、長らく有観客ライヴを行なっていなかったアーティストは、このフェスから再開してみたい、再開してみよう、そんな気持ちになってくれたのではないでしょうか」とも語ってくれた。

5/16は、SOIL&"PIMP"SESSIONSがAwich、SKY-HIと豪華ステージ。

今、世界中の音楽ファンが夢中になっている“音楽ジャンルのクロスオーバー”の波は、当然日本にも押し寄せている。ジャズやクラシックのマナーを備え、高い演奏技術で人々を熱狂させる新世代のミュージシャンが次々と登場し、ジャンルを軽々と越えた表現を楽しんでいる。このフェスでもシーンを牽引するドラマー・石若駿率いるAnswer to RememberOval(ゲスト/佐藤竹善、さかいゆう)WONKといった、世代を超え、音楽に敏感なファンを夢中にさせるアーティスト達のパフォーマンスに注目が集まる。トランぺッター黒田卓也が錚々たるミュージシャンと結成した aTak Bandや、バンド史上初のジャズカバー作品『THE ESSENCE OF SOIL』をリリースした、ワールドワイドな活動を続けているSOIL&"PIMP"SESSIONSのステージでは、AwichとSKY-HIのゲスト参加も発表された。この豪華セッションを新録の季節、野外で聴けることを想像をするだけでも、ワクワクしてくる。黒田Answer to Rememberのステージへのゲスト出演が発表されており、こちらも楽しみだ。

最新曲『ASH feat. Vaundy』ではVaundyとのコラボレーションや、ヨルシカ・n-bunaによるリミックスと、常にその音楽を更新させ、進化させているNulbarichの“現在地”も楽しみだ。そしてYouTube、サブスクリプションサービスのトータル再生回数が4億5000万回超えを記録するなど、今最も注目を集めている現役大学生アーティスト・Vaundyの登場も注目を集めている。SIRUPiriは、リリースもツアーも決定し、新たなパフォーマンスに期待。まさに、音楽のジャンルというよりは、その繰り出す音楽に“ポップネス”を大いに感じさせてくれるアーティストが揃っている。

「“ジャズフェス”と謳っているが、そこにとどまらないフェスになっている。20代、30代の若い人達に楽しんで欲しい」

「新進気鋭のアーティストと、メインストリームを走り続けているアーティストが一同に会する“ジャズフェス”と銘打ってはいますが、そこにとどまらないフェスということを伝えたいです。ジャズのブランディングをきちんと感じてもらいつつ、今音楽を聴いている20代、30代の若い人達に音楽を楽しんで欲しいという思いが、根底に流れています。若い人達が聴いて楽しいジャズ、ジャズという解釈はドラムとベースとピアノだけではないといことを伝えたいと思っています。そういう意味ではAnswer to Rememberが象徴的な存在になるのかもしれません。石若駿さんはKingGnuの常田大希さんが率いるプロジェクトmillennium paradeに参加したり、ここにはWONKのメンバーも参加しています。石若さんはミュージシャンから愛されるミュージシャンで、そんな彼がセッションジャズバンドのようなスタイルでゲストをたくさん呼んでプレイするというのは、普通のフェスではなかなか観ることができないと思います。参加するミュージシャン一人ひとりが本当に素晴らしい方ばかりです」。

様々なアーティストが極上セッションを繰り広げる「LIVE STAGE」に加え、このフェスのもうひとつの“聴きどころ”は「DJ STAGE」でのDJたちのプレイだ。5/15(土)松浦俊夫 / 大塚広子 / YonYon / 矢部ユウナ / 柳樂光隆(Jazz The New Chapter)、5/16(日)沖野修也(KYOTO JAZZ MASSIVE/KYOTO JAZZ SEXTET) / DJ Mitsu the Beats / Licaxxxの8組が発表されている。

“パワースポット”で“ジャズ”。

若い人達に良質な音楽を聴いて欲しいと、学生にはディスカウントチケットが用意されている。

「ジャズを題材にしたマンガ『BLUE GIANT』は今も高校生、大学生に人気で、その音の世界観をぜひライヴで体験して欲しいと思い、一日券は一般が11000円ですが、それを大学生・高校生は6000円、小・中学生は3000円に設定させていただきました。それから会場がある秩父市は三峯神社などを中心に、関東屈指のパワースポットとしても有名です。女優・土屋太鳳さんが西武鉄道のCMに出演していましたが、秩父のパワースポット巡りが女性に人気で、”パワースポット”で”ジャズ”、というのを是非アピールしたい(笑)。そして秩父市には世界的に有名なウイスキー・イチローズモルトがあります。本当はそこに“ウイスキー”という言葉を加えたかったのですが、今年は我慢していただいて…。都心から車で約100分、電車でも池袋駅から約80分と、日帰りでも十分往来しやすい秩父で、自然の中で感染対策を徹底し、音楽をベースにみなさんで色々な思いを共有できたら嬉しいです」。

コロナ禍での開催ということで今回は国内アーティストのみ、そして動員の規制、会場のエリア展開も当初の予定とは異なる形での開催になるが、来年以降、“完全体”での『LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL JAPAN』が開催できる日を心待ちにし、まずは今年、記念すべき第1回目を楽しみたい。

『LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL JAPAN』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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