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w-inds.20周年 3人で紡いだ19年、2人で進む未来「まだまだ可能性を探りたい」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ポニーキャニオン

『w-inds. Best Album「20XX “THE BEST”」』(3月14日発売/初回限定盤)
『w-inds. Best Album「20XX “THE BEST”」』(3月14日発売/初回限定盤)

2021年3月14日にデビュー20周年を迎えるダンスボーカルグループ・w-inds.が、同日、ベストアルバム『w-inds. Best Album「20XX “THE BEST”」』を発売する。20周年を前にした2020年、メンバーの緒方龍一が脱退し二人体制となり、思わぬ形でのリスタートとなった。そして12月2日に、二人の思いと強い意志を刻み込んだデジタルシングル「Beautiful Now」を発表し、ファンにメッセージを送った。このシングルも収録されている、w-inds.20年の軌跡とファンへの感謝の気持ちを詰め込んだベストアルバムを手に二人は、思いを新たに前へと進んでいく。橘慶太、千葉涼平にインタビューした。

「このまま終わっちゃうのかなという気持ちになりました」(橘)

橘慶太
橘慶太

「悪いことってこんなに続くんだなあとビックリしました。2人になったものを見せようと思っても見せる場がないし、このまま終わっちゃうのかなという気持ちにもなりました」(橘)

コロナ禍の中で、誰もが先が見えない不安を抱えながら、希望が見えてこない毎日の生活が続く中で、メンバーが脱退というグループ最大の危機と向き合った二人の心中は、如何ばかりだったのかという考えると、こちらまで胸が苦しくなる。橘も当時の素直な思いを語ってくれた。さらに「それを前向きな気持ちにしてくれたのは、w-inds.をまだ続けて欲しい、続けてくれてありがとうという言葉を、ファンの方からいただいた時は本当に救われました。時間をかけてでも、新しいものを作っていかなければ、という気持ちになりました」と、ファンの気持ちと言葉が大きな力になり、背中を押されたことも教えてくれた。

「最初は心の整理がつかなかったし、二人とも前を向いて歩き出すのが難しかった」(千葉)

千葉涼平
千葉涼平

千葉涼平は、w-inds.YouTubeチャンネルで公開されているオフィシャルインタビューの中でリスタートについて「19年やってきたものを形を変えるのは難しいと思った」と、こちらも素直な気持ちを吐露している。

「19年間その形でやってきたからこそ難しいというか。ずっと変動しながらやってきていたら、新しい体制でもやりやすかったかもしれないけれど、w-inds.という確固たる形になっていたので、最初は心の整理をつけるのが難しかったし、二人とも前を向いて歩き出すのが難しかった。そんな中でファンの方達の気持ちや言葉に支えられ、心が固まったというのが正直なところです。起こった状況の中でもベストな道を、今は歩いていると思います」(千葉)。

「去年は常に不安が隣にある生活に加えて、びっくりするくらい体調が悪くて。僕は心身共に健康でなければ楽曲も生まれてこないし、パフォーマンスもできないタイプです。でもそこから抜け出せてからは、どんどんアイディアも出てくるし、純粋に音楽を楽しむことができているので、世の中はまだまだこんな状況ですが、こういう気持ちになれたのは、ファンのみなさんと周りのスタッフさんのお陰です」(橘)。

『Beautiful Now』は「チームw-inds.が一丸となっている感じが出ている」(橘)、“始まりの歌”

“不安”から抜け出して仕上げた曲が、昨年12月に配信された「Beautiful Now」だ。橘が作曲を手掛け、千葉と橘が歌詞を共作した、まさに“始まりの歌”だ。

「いつのように曲を作り始めて、30曲くらいできあがったのですが手応えがなくて。でもスタッフさんと打合せをする中で、グループを続けるか続けないかという話にもなって、続けよう、前を向いて行こう、そういう曲にしようという結論が出てからは、一瞬でできあがりました。あの時だから生まれた曲だなって改めて思いました」。

千葉はできあがってきたこの曲を聴き「サウンドもメロディも胸熱でした」と感動し、歌詞を紡いでいった

「徐々に陰な気持ちから陽の気持ちに上がっていく印象が最初にすごくあったので、それを受けて歌詞を書きました」(千葉)。

「後半に前を向ける世界観だったので、涼平くんの強い意志を感じたし、僕も同じ気持ちだったので、チームw-inds.が一丸となっている印象も受けました」。

「流行りを気にしないで、今の時代に光が差すような曲が作りたかった。自分達もこの曲に励まされている」(橘)

千葉のボーカルから始まるところも、ファンにとっては新体制の始まりを感じる部分ではないだろうか。そして二人の声が重なると「聴いたことがない反応が生まれる」(橘)と、w-inds.の新しいハーモニーを提示してくれている。MUSIC VIDEOは青空と強い光を映し出す映像からスタートしている。二人の心を表しているようだ。

「曲ができたときに映像が頭の中に出てきて、明るい未来を示しているような場所をイメージしていたので、全体的に明るく前向きな感じになりました。これまでどちらかというとオシャレといわれる曲を多く作っていたのですが、流行とか全く気にせず、今の時代に光が差すような曲を作りたいと思っていたので、納得のいく曲ができたし、自分たちも励まされています」(橘)。

「新しい可能性を探って、たくさん失敗して成功体験を重ねていけば、また成長できるはず」(橘)

オフィシャルインタビューの中でも橘は「まだまだ(w-inds.の)可能性を探りたい」と、新体制を表す、真をついた言葉を残している。その思いをまず「Beautiful Now」という楽曲で表現している。

「可能性はいっぱいあると思っているので、デビューした時と同じ気持ちで、これから何が待っているのか楽しみです。明るいのか暗いのかはわからないですが、経験したことがないことは新たな経験値になっていくし、自分を成長させてくれると思います。だから新しい可能性を探って、たくさん失敗して、成功体験を重ねていけば、また成長できると思っているので、成長するためにはいい環境だと思います。20年同じことをやっていると、意識していても緩んでくる部分はあるので、それが環境がガラッと変わってしまったら、やるしかないという気持ちになったというか。今、3月14日のオンラインライヴ(初の配信ライヴ『20XX“THE MUSEUM”』)のリハーサルをやっているのですが、昔の曲もやるので立ち位置も変わるし、涼平君がずっとパフォーマンスをしている訳にはいかないので、パート分けも変えたり、ちょっとの修正では補えないレベルなのでそれが大変です」(橘)。

「自分達が好きなことを楽しみながらやっていないと不健全」(橘)

2018年に発売したアルバム『100』についてインタビューした際「自分たちの信念を貫いたからこそ、今があると思います」という言葉を橘から聞いた時に、その強い気持ちがw-inds.を、そしてw-inds.の音楽を更新し続けて、w-inds.というブランドを守り続けてきた原動力になっているのだと感じた。だから20年間ファンの支持を得続け、やり続けることができたのだと改めて感じている。

「僕達は純粋に好きなものをやりたいという気持ちだけなので、インプットを一生懸命やってきたと思うし、更新したいという気持ちは、言われてみれば強かったのかもしれないですが、純粋に楽しいっていう感覚が大きいです。好きなことを楽しんでやっていないと、そこはいくら隠そうとしても出てしまうものだし、僕はそういうのを結構感じやすいタイプで、例えば他のアーティストを見て『この楽曲は、パフォーマンスしている人たちは本当にいいと思ったのかなあ』という感じがちょっとでも見えるのが好きじゃないですし、本人たちが思い切りパフォーマンスしている姿はすごく感動を生むし、カッコいいと思える。そういう思いが僕は強いので、作る時も自分が全力でいいと思えるということを大前提にしていて、そこを諦めてしまったら何でもよくなってしまいます。だから周りからは面倒くさいと思われている部分もあると思うし(笑)、薄々自分でも感じています」(橘)。

20年の中でグループの大きなポイントになったこととは?

「2013年のそれぞれのソロ活動が、その後のw-inds.につながっていったと思う」(千葉)

20年の中で、グループとしての大きなポイントになったことを、それぞれに聞いてみた。

「2013年に初めてそれぞれソロ活動をした時期があって、最初その話になった時に僕は迷いました。w-indsとしてやってきて、グループとして頑張っていきたいという気持ちが強かったので、その時はあまり個人として何かをやりたいという欲がありませんでした。でもやってみようということで、それぞれがやりたいことをやった時に、色々と学べることや成長する部分が、技術やメンタル面を含めてたくさんあって、踏み出してみなければわかりませんでした。それでw-inds.として戻ってきた時に、グループとして“広がった感”が実感できるくらいがあって、後のw-indsにつながっていったと思っています」(千葉)。

「自分の歌に限界を感じ、2008年にロスで受けたボーカルレッスンによって歌が変わった」(橘)

「僕は『アメあと』(2008年)という曲で、自分の歌の限界を感じて、ロスに行ってセス・リグスという、マイケル・ジャクソンやマドンナのボイストレーナの元で、歌のノウハウを習ったことがまず自分の中での分岐点でした。そこから歌に対する考え方や、テクニック、細かい部分まで気にするようになりました。レッスンを受けた期間は2週間くらいで、それでもこんなに勉強になるのかというくらい、世界一のボイストレーナーのレッスンに感銘を受けました。レッスンもそうでしたが、街でストリートライヴを観て、そのレベルの高さに絶望して。自分は日本だからデビューできているんだなって、日本に失礼ですけど(笑)、でも本当にそう感じました。このレベルで路上でずっとやっているんだというのが衝撃的で、改めてもっともっとうまくならなければ、この人達にも失礼だなと思いました。それが勉強に対する自分のモチベーションにつながりました。意識改革できたことが一番大きかったかもしれません。それを経て歌の引き出しが増えました。もうひとつの変化のポイントがシングル『New World/Truth〜最後の真実〜』(2009年)だと思います。歌の知識を得て、エモーショナルに歌うにはただ感情を乗せるのではなく、テクニック的に感情が伝わる方法を自分で勉強していて、このシングルのタイミングでEDMが流行って、エモーショナルな部分が必要なくなったんですよね。今聴き直してもらうとわかると思いますが「New World」や「Let's get it on」(2011年)は、わざと抑揚をつけず歌うというか、感情を抜いて歌っています。そうすることによって、歌がトラックを目立たせる役割をすることがわかって、それをきっかけにトラックというものへの興味がさらに増して、大切さを再認識できて、歌と楽曲のバランスをすごく気にするようになったことが、自分で楽曲を作る入口になりました」(橘)。

「日本独自のかっこいいダンスミュージックを作りたい」(橘)

一人一人が考え方も含めて力をつけて、w-inds.というグループに還元し、強くなった。2004年頃から、台湾をはじめアジアへ進出したことも大きなポイントになっているという。そこで聴いたサウンドに大いに刺激を受けた。

「台湾に行ったときは、最初は正直日本の音楽の方がカッコいいなと思っていましたが、年を重ねるごとに追いつかれて、カッコよくなっていったところに焦りを感じました。それがなかったら今僕が曲を作っていない可能性もありますし、いい影響を与えてもらいました。今世界では、世界中の作家がコライトして曲を作るスタイルが増えていますが、それもいいと思いますが、僕は日本独自のダンスミュージックというか、日本人作家が作ることを重視していて。海外の作家が作るカッコいいものもいいと思いますが、純日本産のかっこいいダンスミュージックを作りたいです」(橘)。

これから橘が作る楽曲は、千葉のボーカル、二人の声の重なりを念頭に置いて作ることになる。

「涼平くんのマインドが上がってくるとは思いますが(笑)、最初に涼平くんに一緒に歌おうよと言ったとき、5秒ぐらい間がありました(笑)。そこはできれば2秒くらいの間にしてほしかったなあ(笑)。作詞やってみようよって言った時も、機会があればって(笑)。機会なんていくらでもあるだろと思っていましたが、『Beautiful Now』を作った時に、涼平くんの言葉があることによってw-inds.の思いになったというか、w-inds.らしさが大きくなったと思うので、涼平くんのクリエイティビティも必要です。一回苦労を味あわせるために、曲作りの時もずっと隣にいてもらうおうかと思って(笑)」(笑)。

「大変だなあ…(笑)」(千葉)。

ベストアルバム『w-inds. Best Album「20XX “THE BEST”」』は、デビューシングル「Forever Memories」から最新デジタルシングル「Beautiful Nowまでの全シングル47曲が収録される(CD3枚組)。そして二人が選ぶこれまでのライヴツアーごとのベストアクトをまとめた「BEST LIVE SELLECTION DVD」が付いている。

「選曲作業は意外とすんなりいきました。そんな中で涼平くんが『w-inds. LIVE TOUR 2016“Forever Memories”』で、「Forever Memories」を歌う時に作詞・作曲者の葉山拓亮さんが来たくださって共演したのですが、僕が感極まって泣いて歌えなかったあのシーンが一番いいので入れたいと言われて(笑)。でもよくよく考えたら自分達がセレクトして、自分が泣いている場面をこのライヴいいねって入れるのって恥ずかしいなと思って(笑)。それだけはやめさせてくださいとお願いしました(笑)」(橘)。

「このベスト盤を手に、また新しいw-inds.の形にしたい」(千葉)

「二人で新しい曲をたくさん作る年にしたい。そしてみなさんに感謝の気持ちを伝える一年にしたい」(橘)

20周年を記念したベストアルバムを出すことで、新生w-inds.としての気持ちが、さらに前に進む感じになっているのだろうか。

「ひとつ区切りはつけられるので、次に向かいやすいというか。『Beautiful Now』という曲を出せたことも大きいです。それでベストアルバムを手に、また新しいw-inds.の形を作ることができたらいいなと思っています」(千葉)。

「まずは二人で新しい作品をたくさん作る年にしたいです。このベストアルバムがあったり、20周年という区切りの年なので、みなさんに感謝の気持ちを伝える一年にしたいです。そこに前向きな新たな一歩が加われば、最高の一年になるのかなと」(橘)。

w-inds. オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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