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川島海荷 デビュー15年の“現在地”「正解に拘らず、自分で決めつけすぎず、柔軟にやっていけたら」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト

世界で初めて舞台化される名作『ぼくの名前はズッキーニ』に出演

川島海荷が出演する舞台『ぼくの名前はズッキーニ』が、2月28日東京・よみうり大手町ホールでスタートした。2002年にフランスで発刊され、世界中でベストセラーとなったジム・パリスの同名の小説は、アニメ映画化され、アカデミー賞長編アニメーション部門の候補になり注目を集めた。今回、世界で初めて舞台化され、主人公・ズッキーニを辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)が演じ、ズッキーニが養護施設で出会うカミーユを演じるのが川島だ。川島にこの舞台への意気込みと、昨年も自ら企画した二人芝居『PINT』の舞台に立つなど、舞台への出演が続くデビュー15年を迎えた女優の“現在地”を聞かせてもらった。

物語は、事故で母親を亡くし、孤児になった“ズッキーニ”ことイカールが養護施設「みんなのいえ」で、仲間や優しい大人たちと出会い、前を向いて生きようとする姿が描かれている。

「一つひとつのセリフが刺さるというか、名言のようなセリフばかりで、稽古をしていても日常的な会話の一つひとつにメッセージが込められているような感じがしていました。演出のノゾエ(征爾)さんが私たちのキャラクターを見て、現場でセリフを足したり、直したりしていて、キャラクターをより引き立たせるために常に変化している状況です」。

「子供を演じるにあたって、そこまで子供らしさにこだわらず、感じ方は観てくれる人に委ねています」

稽古の合間にインタビューに応じてくれた川島が、作品の密度が高まっていく様子を教えてくれた。養護施設で生活する子供たちが物語の中心だが、大人が子供を演じていることもあるが、“子供すぎない”ところ、その塩梅が面白い空気感を生み出している。

「子供が子供っぽくなく、社会を俯瞰して見ているような印象です。特に私の演じるカミーユという役は子供らしくなくて、素直でもなく、でもそれは彼女がそれまで育った環境が影響していて、周りに気を遣いながら生きてきた子だと思うので、ふと出る子供らしさは愛らしいし、根底にはピュアなものを持っています。なので、子供を演じるにあたってもそこまで子供らしくということにこだわらず、固めないで、観てくれる人に委ね、自由に受け取って欲しいです。カミーユのような子供を見て、大人も気づかされることが多いと思います。私自身がそうです。子供からの目線ってより核心をついていると思いました。原作を読んだり、映画を観たときは、どちらかというと子供目線で見ていて、まず感じたのは子供の強さでした。子供って思った以上に強いし、大人みたいに邪念が入って諦めたりする事があまりなく、物事に素直に向かっていく姿は力強いと思いました。でも稽古に入ると施設の先生や、近くの親以外の大人の温かさ、言葉に出さない愛情、何も見返りを求めずに、心から愛してくれている気持ちを感じて、子供達にとってこういう事って本当に大切だなって実感できました。あまり絶望的だと苦しくなるというか、稽古を重ねて気づいたのは、施設の中の大人たちが支えてくれているんだなということです。そして実際にこの舞台自体も支えてくれていると思います」。

「カミーユという役への感じ方の変化や、キャラクターとして成長していく部分を、私自身も大切にしたい」

演出のノゾエ征爾からは、カミーユという役を演じるにあたってどのような指示があったのだろうか。

「指示が一切なく稽古が始まったのが印象的でした(笑)。ノゾエさんが『遠回りしながらやりたい』と言っていたのも印象的で『色々な失敗を試して、気づいたら完成しているという演出です』と言っていただけので、たくさん失敗していいんだという気持ちで稽古に臨んでいます。その中で台本を直してくださったり、指示ではなく『こうやってみる?』『こういうのやってみる?』という感じで本当に色々試しながら作っています。物語が進んで、時間が経つに連れて、それぞれのキャラクターも中身や考え方は変わっていくので、最初と最後のカミーユという役への感じ方の違いや、キャラクターとして成長している部分を、私自身も大切にしたいです」。

川島は昨年12月、新井郁との二人芝居『PINTに出演。脚本・演出をバナナマンや東京03のコントを手掛けるオークラが担当し、その独特の世界観に身を委ねた。同じく昨年予定した舞台『アンナ・カレーニナ』は残念ながら全公演中止になってしまったが、女優として今は舞台を経験し、その引き出しを増やしていくという考えなのだろうか。

「『PINT』は稽古がほぼなかったくらいの感覚で、台本ギリギリで、スピード感という意味では鍛えられました(笑)。最後の最後、本番の何日か前に長ゼリフが来た時は眠れなくなりました。毎回セリフを間違える、忘れる夢しか見なかったです(笑)。たぶん心配性なんだと思います。普段は緊張しなさそうとか、表情に出ないって言われますが、実はビビりまくっているのだと思います(笑)。すごく新鮮で楽しかったですが、次は10年後でいいかなって(笑)。それはまず自分自身を鍛えなければいけないからです。二人でやる集中力というか、常に舞台にいるという形で8公演やらせていただいたのですが、もうバテバテでした(笑)。これを何十公演もやっている方はすごいなと思いました。私自身、舞台をたくさんやってきた訳ではなくて、舞台を見る機会も年々増えて、この役者さんすごいとか、生で実感できる逆にシビアな世界だなと思うので、その中で学ぶ事は大きいとわかって、怖がらずやろうという気持ちになりました。新しい世界に踏み込む気持ちで、何か吸収できたら、という前向きな気持ちに変わりました」。

「今は舞台に立てる事がただただ嬉しい」

コロナ禍で出演予定だった舞台が中止になるなど、表現者としてどんな思いで自粛期間を過ごしていたのだろうか。

「やっぱり娯楽は私の生活には欠かせないと思って、それを仕事として、作り手として関わらせていただけているのが嬉しかったです。自粛期間中もドラマを見て気が紛れたり、日々の楽しみがあると救われて、生活に彩りが加わるし、そういうのって絶対になくなってはいけないと思いました。自粛明け、劇場に舞台を観に行けたとき、映画館に行けた時に、これがない生活は無理だと思いました。エンターテインメントが気がつかないうちに私の生活の基盤になっていました。私も元々は日本のドラマがすごく好きで、その憧れから始まった仕事だったので、デビューしたての頃の事を思い出しました。緊急事態宣言中にこの公演は幕が開きますが、スタッフさんも演者も全員強い覚悟と決意を持って臨んでいます。今は舞台に立てる事がただただ嬉しいです。観てくれる人が楽しんでくれて、笑ってくれたり。テレビでは見ている人の反応はわからないので、よりモチベーションが上がるし、笑ってくれる人がいるのを信じよう、頑張ろうという気持ちになりました」。

「気持ちは常に新人。正解がない仕事なので、30年経ってもきっと同じ事を言っていると思う」

キャリア15年だがまだ26歳。まもなく27歳になる。しかし「これだけ長くお芝居をやらせてもらっていますが、まだまだ知らない世界がたくさんあります」と舞台は常に刺激的で、得る事が多いようだ。

「15年って聞いても何も変わっていない気がしていて。でも新人と言われなくなったときに、新人じゃないんだと悟りました(笑)。でも気持ちはずっと新人、初心を忘れずに、です。お芝居だけではなくて、本当に色々なことをやらせてもらったので、お芝居というものに向き合って頑張ろうと思います。15年経ってこれなので、30年経ってもきっと同じ事を言っていると思います(笑)。完成形がない仕事なので、歳を重ねるごとにやる役が違ったり、視点が違ったりというのは大変なところでもあり、楽しいところです。あまり正解に拘らず、自分で決めつけすぎず、柔軟にやっていけたらいいなって。年的には型にハマって柔軟さが失われる年だと思います(笑)。若いイメージで止まっているとか、若く見えるって言われたりしますが、正直自分でも何歳かわからなくなっていて(笑)。この舞台中(3月3日)に27歳になるのですが、色々な27歳がいると思います(笑)」。

■ 『ぼくの名前はズッキーニ』

2021年2月28日(日)~3月14日(日) 東京都 よみうり大手町ホール

2021年3月19日(金)~21日(日) 大阪府 COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール

『ぼくの名前はズッキーニ』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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