今、そこにある危機「ライブエンタメ文化が途切れることなく継続できるように」業界4団体が声明を表明

(写真:アフロ)

業界4団体が共同声明を表明

1月7日に政府から緊急事態宣言が発出され、イベント開催制限について目安となる「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」が改定された。それを受け、昨年来厳しい規制の中で苦境を強いられている、ライブイベント公演事業者を代表して、一般社団法人 日本音楽事業者協会(音事協)、一般社団法人 日本音楽制作者連盟(音制連)、一般社団法人 コンサートプロモーターズ協会(ACPC)、一般社団法人 日本音楽出版社協会の業界4団体が、緊急事態宣言に基づく対象期間である1月12日(周知期間後の適用開始日)から 2月7 日までの間における公演開催について、共同声明を表明した。

○私共公演事業者は、政府及び自治体によって示されたイベント開催制限条件に基づき、経済産業省、文化庁を通じ政府関係当局との協議を踏まえ、感染拡大防止対策ガイドラインを遵守し更なる対策の徹底を行い、公演を開催してまいります。

○収容人数制限について

・一回の公演あたり、公演会場の収容上限を 5,000 人、会場キャパシティに対する収容率を50%とします。

・ただし、政府からの事務連絡に基づき、1月7日時点でチケット販売済の公演及び周知期間中にチケットが販売される公演については上記収容人数制限及び収容率制限は適用しないこととさせていただきます。

・また、同じく、周知期間終了後 (注:新しい目安が適用された日=1月12日)から、新たな目安を超過するチケットの新規販売を停止することとします。

○催物の開催制限(公演時間)について

・20 時までの営業時間短縮(20時までに終演すること)の働きかけには可能な限り応じてまいります。

・ただし、上記についても、政府からの事務連絡に基づき、1月7日時点でチケット販売済の公演及び周知期間中にチケット販売される公演には適用しないこととさせていただきます。

・また、同じくライブの中継・配信のための無観客公演については適用しないこととします。

○なお、上記の開催条件適用につきましては、公演個別に様々な事由から対応が異なる場合もありますことをどうぞご理解賜りたく存じます。

「公演実施基準を守って実施しても、非難が演者に向けられるが、それは筋違い。その非難の矛先を、この声明の発信者に向けるためのひとつの方法が、共同声明」

この共同声明を発表するまでの経緯と、ライブイベント事業者の実情を、一般社団法人 日本音楽制作者連盟(音制連)の野村達矢理事長に聞いた。

「社会的責任を果たす立場として、緊急事態下におけるライブなどの公演実施基準をきちんと守っていることの周知と再認識を促すこと。それと公演を実施した場合、実施したことの非難がステージに立つアーティストや演者に向けられることが多く、それは筋違いであり、その非難の矛先がこの声明の発信者に向かうようにすることもひとつの理由です」。

ライブイベント業界は昨年、新型コロナウイルスの感染拡大が顕著になった当初から、他の業種に先がけて自主的に自らの事業活動休止を行ってきた。昨年5月25日に、緊急事態宣言が解除されて以降、先述した4団体会員社によって全国で無観客公演250公演、有観客公演約7100公演(総動員数約230万人)が開催されたが、ガイドラインの徹底遵守と観客のマナーと協力により「大声を出す」「密集する」「地域間移動」等、感染拡大のリスクになる行動はなくなり、現在に至るまで4団体会員社によるライブイベント会場からの感染者発生は認められていない。しかしそういう情報は広く伝わらずライブやイベントを行うアーティストや演者、その関係者に心ない言葉が浴びせられている。

止血となる緊急経済支援策が必要

写真:アフロ

業界4団体が共同声明を発表する前、1月6日には西村康稔経済再生担当大臣に「緊急事態宣言に対する要望」を提出。その中で、“公演開催自粛期間が長期化し事業機会、就業機会を喪失している業界に対し、止血となる緊急経済支援策を講じていただくこと”という要望がある。先日、時短営業の飲食店とその取引先を支援するため、政府が給付金を支給する方向で調整しているという報道があったが、ライブイベント公演の開催を支えているのも美術、照明音響映像など技術、運営、警備整理、ケータリング、チケット販売、宣伝広告など多岐に渡る多くの事業者、従事者だ。しかしイベント開催自粛期間の長期化によって事業機会、就業機会が極端に減少している。こちらへの支援策に関しては、現状どうなっているのだろうか。

「これまでのライブエンタメ業界に対する政府の様々な支援策とは性質が異なり、簡単に実現するものではないことは承知しています。しかしながら、現状で他業種と比べてもコロナ禍の影響を最も長期間に渡って受け続けている業界団体として、ライブエンタメ文化が途切れることなく継続できるように、そして産業として持続できるように、関係省庁に窮状を正確に伝えることに注力しています」(野村氏)。

昨年「コンテンツグローバル需要創出促進事業費補助金(J-LODlive)」という経済支援プランが成立し、年間約880億の予算が計上された。しかしそれはあくまでもライブを再開した際にかかる経費を援助するというものだ。しかもその申請の煩雑さ、審査~支給までかなりの時間を要するという問題もある。業界4団体はその是正を行政に訴え続けている。このJ-LODliveが業界の命綱であることは変わりないが、しかしそれ以上に問題なのは、ライブが完全に再開されるまでには時間がかかり、それまで食いつないでいくための資金だ。水の中で溺れている人に浮き輪を投げてあげる、そんなシンプルな援助が必要だ。

ライブエンタメ従事者の現在と未来を支援する「Music Cross Aid」基金。寄付を募集中。

写真:アフロ

企業やフリーランスに対するセーフティネットや公的資金の援助はそれなりにあるが、決して十分ではない。そこで、民間でも相互援助のシステムの構築が急務であると、昨年音事協、音制連、ACPCの業界3団体が設置者となって、公益財団法人パブリックリソース財団との提携により、ライブ・エンタテインメント産業を担う事業者・スタッフの現在と未来を支援する基金「Music Cross Aid」を創設。趣旨に賛同する方々から寄付が集まった。まもなく助成の第3回目の公募がスタートするが(公募期間2021年1月26日(火)13:00~2月9日(火)17:00)、第1回の助成総額は個人、団体合わせて1817万円、第2回も4000万円を超えている。利用者の窮状、リアルな声はどのようなものがるのだろうか。

「ライブエンタメに関わる従事者の経済的状況はさらに厳しくなっていくと予想されます。どこの業界よりも早くライブエンタメは自粛を率先して行い、完全再開もまだ見通しは見えていない状況です。ライブエンタメ業界の減収規模は6000億円の市場に対して約1000億円になると見込まれています。通常時に比べて80%ほどの落ち込みです。フリーランスで活動している人たちはUber Eatsなどでアルバイトを始めざるを得ない人たちが多数います。『Music Cross Aid』基金の寄付で集められた金額は、現在1億6000万円ほどです(1月15日現在)。まだまだ足りないと思っています」(野村氏)。

アーティストのメンタルヘルス問題

写真:Paylessimages/イメージマート

コロナ禍では、ライブイベント事業従事者はもちろんだが、アーティストのメンタルヘルスの問題も、丁寧に取り組んでいく必要がある。しかし“接触”を避けることを求められている現状で、アーティスト周辺のスタッフはどのような方法でケアをしているのだろうか。

「個々のマネージメントで対応しています。音制連では、いま集まることができないのでセミナーなどはできないのですが、メンタルケアを題材にした有識者のインタビュー記事などを特集してメールマガジンで会員社などに配布しています」(野村氏)。

アーティストにはライブ会場・作品公開の「場所」の提供や、経済的支援・給付金はもちろん、日本俳優連合が芸能人向けに設置した「こころの相談窓口」のような心身の健康、精神衛生のための、アーティスト専用の第三者的存在の相談窓口も、必要なのかもしれない。

一般社団法人 音楽制作者連盟 HP