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横浜銀蝿40th「全員で249歳、また4人で自分達のロックンロールができて幸せ」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/キングレコード
『ぶっちぎりアゲイン』(<夜露死苦盤>/2月19日発売)
『ぶっちぎりアゲイン』(<夜露死苦盤>/2月19日発売)

今年結成40周年を迎えた横浜銀蝿が、嵐・翔・TAKUに加え、37年ぶりにJohnnyが合流し、オリジナルメンバーで「横浜銀蝿40th」として完全復活した。2月19日にはオリジナル&ベストアルバム『ぶっちぎりアゲイン』をリリース。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響でライヴツアーは延期となり、思うように活動ができなくなったこともあって、2020年限定だった完全復活期間を、2021年12月31日まで延長することが発表された。さらに9月24日はシングル「昭和火の玉ボーイ」をリリース。同曲のカップリングの「ツッパリ High School Rock'n Roll (在宅自粛編)」のMUSIC VIDEOをリモートで撮影したり、無観客配信ライヴを行なったり、積極的に動いている。そんな4人に、改めて“完全体”での復活についてインタビューした。

――「横浜銀蝿40th」として完全復活した今年、思いもよらない事態になってしまいました。

翔(Vo&G)
翔(Vo&G)

翔 今回37年ぶりにJohnnyが戻ってきて一緒にできるというのが目玉だけど、Johnnyが加わるということは、今まで社長兼プロデューサーとして指揮を執ってきた経験者が加わるということなので、またみんなでどうやってトップまで行くかを、綿密に組み立てての復活だったので、こうなってしまって大ショックです。今年は本来ならオリンピックというビッグイベントがあって、それによってコンサート会場も使えなくなるというので、Johnnyが色々な調整をしてツアーを組んでくれて、俺たちもそのために楽曲を集めてレコーディングして、態勢を万全にしていただけに残念です。

――多くのアーティストが無観客配信ライヴにシフトしました。

翔 俺達もやりましたけど、本音をいうと配信ライヴは嫌なんですよ。当たり前だけどライヴ感がないというか、お客さんと作る空気がライヴを作っていくものだし。

「もう表舞台に立つつもりはなかったから、20年以上ギターを弾いていなかった」(Johnny)

――こうして4人を前にすると、本当にオリジナルメンバーが揃ったんだなと、懐かしい感じと新鮮な感じ両方伝わってきます。まずJohnnyさんにお聞きしたいのですが、98年の最初の復活の時は、やはり本業が忙しかったというのが大きな理由なのでしょうか。

Johnny(Vo&G)
Johnny(Vo&G)

Johnny そうですね、色々なタイミングが合わなかったというのが本当のところです。キングレコードに入社して、やっぱりすぐには合流できないじゃないですか。当時自分の中では仕事でいっぱいいっぱいだったっていうのもあったし、サラリーマンの仕事がうまくいかないからって銀蝿の活動に逃げる、みたいに思われても嫌だったし。そういう意味で色々とタイミングが合わなかったっていう。

――今回いよいよ満を持してという感じですね。

Johnny もう表舞台に立つつもりはなかったんです。でも2018年の暮れに翔くんと久しぶりに会って、そこから話が進んでいって、それまで20年以上ギターを全く弾いていなくて、一生懸命練習しましたが、本来なら3月からライヴが始まってたことを考えると、怖いですよ。だからステイホーム期間は神様が俺にくれた時間だと思って、ずっと練習していました。

翔 昔よりもレベルアップしてますよ(笑)。俺達は4ピースのロックンロールバンドだから、やっぱりギターサウンドが肝で、Johnnyのギターはソロのフレーズもそうだし、イントロや間奏も大切なところはやっぱり欠かせない。これだけ長くやってきてる中で、Johnnyが作った音がみんなの耳に残っているから、その音もますますカッコよくなっていて。40年前、ツイストを踊りながらギターを弾いていたJohnnyが37年ぶりに戻ってきて、ファンがステージを観た時、ちょっと動けなくなってたらダサいよねって自分に言い聞かせて、すごく練習したみたいです。

Johnny 昔から練習って嫌いなんですけどね(笑)。バンドはリズム隊、ドラムとベースがしっかりしていれば大丈夫なんですよ。

TAKU 昨日も8時間くらい弾いてましたもん(笑)。

「そこにJohnnyがいるだけでこれだよねって感じ」(翔)

――やはり4人が揃うと音の雰囲気も、バンドの空気感も違いますよね。

翔 不思議ですよね。Johnnyのパートを別の人がコピーして同じように弾いたとしても、やっぱりそれは違うんですよね。だから人が弾く、演奏するということはやっぱ面白いですよね。ボーカルひとつにしてもそうだし、コーラスの混ざり具合とか、TAKUと嵐さんと俺と3人でハマってたとしても、そこにJohnnyが入ることによって銀蝿になるっていう。

嵐 それはあるね。3人で20年やってたじゃん。だから余計わかるよね、実感として。

翔 そこにJohnnyがいるだけでこれだよねっていう感じ。みんな歳は取ってるけど、いい意味で色々なものが見えてきたじゃないですか。みんな音楽に携わって40年間やってきて、バンド解散してソロでやったり、レコード会社に転職したり、色々なことをやりながらも、でもずっと音楽業界にいたから感触というか空気がわかる。それでまた合流してるから、仕事の組み立て方もそうだし、練習のやり方もわかってるし、今こんな時期だからリモートで「ツッパリ High School Rock'n Roll (在宅自粛編)」みたいなのを作ってみようかっていう提案がTAKUから来たり、昔の銀蝿の悪巧みじゃないけどそういうノリも変わらずあって、やっぱり日本一にこだわっていたバンドなので、そこは変わらずこだわっていきたい。

――リアルタイムで観ていたものとしては、本当にたくさんのものを残して駆け抜けて行った、という印象でした。でもそれが2018年のドラマ「今日から俺は!!」(日テレ系)の主題歌として『男の勲章』がリバイバルヒットして映画化もされ、再び横浜銀蝿に一躍注目が集まりました。

翔 本当に面白いですよね。“今日俺”でJohnnyが作った「男の勲章」が時を超えて甦って、ドラマから映画にまでなって、その中で「ツッパリ High School Rock'n Roll(登校編)」がフルコーラスで流れたり、すごいなと思います。今俺たち4人足したら全員で249歳です。嵐さん65、Johnnyと俺が62、TAKUが今年60になって。でも一応ロックンロールができて、新譜出してステージに上がって、本当に幸せだなと思うし、こんなバンド他にいないだろうって思いますよ。

「横浜銀蝿がなくなったら、何も残らない」(嵐)

――嵐さんが横浜銀蝿というブランドをしっかり守ってくれているという感じがします。

嵐(Vo&Dr)
嵐(Vo&Dr)

嵐 だってコレなくなったら、何も残らないから(笑)。

翔 意外に執念深いんだよね(笑)。

――今年リリースした『ぶっちぎりアゲイン』は、とにかく今が楽しいんだという空気が充満していて、Johnnyさんが帰ってきた嬉しさを素直に表現する曲があったり、でも経験に裏打ちされた言葉がどれもメッセージとなって届いてきて、楽しくも聴き応えのある一枚になっています。

翔 俺とTAKUはずっと曲を作り続けていたけど、Johnnyと一緒にできると思ってなかったから、Johnnyが加わることによって歌いたいことや鳴らしたいサウンドが一気に変わって、アルバムの曲は全部新たに書き下ろしました。みんなが曲を持ち寄った中で、「男の勲章」の続編とでもいうべき「大人の勲章」は、今絶対にオレたちが歌うべきだから入れようってなって。「Again」という曲はJohnnyとまた一緒にできることになって、ファンへのメッセージを書きたくなりました。83年の12月31日に解散してからの物語を、俺たちはこんな気持ちでやってきて、37年ぶりにみんなで再び行こうぜってって言いたくて、Johnnyが戻ってこなければこの歌は歌えなかった。

Johnny 当時から、こんなことやったらどう思われるかなとか、人の目を気にしてやっていなかったし、自分たちはこれがかっこいいなとか、これやりたいなっていうことをやっていただけで。それがどう評価されようと、媚びを売らずにやってきました。今回も、全く同じです。こんなことこの歳でやったらどう思われるかな、カッコ悪いかなとかは一切考えず、今60過ぎの自分たちがこれ歌いたいなとか、こんなのやりたいなっていう、これカッコいいなって思ってることを素直にやって。音楽の作り方は80年代のデビュー当時と全く変わらないです。

――嵐さんが書かれた「これからもよろしくな」はファンだけではなく、メンバーへの愛あるメッセージでもありますね。

嵐 そうですね、ファンの人たちにも伝えたかったし、横浜銀蝿40thをやる時にみんなにこれからもよろしくなって言いたかったので、それをテーマに曲を作りたいなって思ってたんですよ。

「若ぶる歌を書くのも変、悪ぶるのも変、期待に応えなければという思いよりも、リアルかどうかが大切」(TAKU)

「一番最初に4人で奏でた『横須賀Baby』のデモテープを、車の中で聴いた時の感動は今も忘れられない」(Johnny)

――メンバーそれぞれの思いが一曲一曲から溢れているし、貫いてきたロックンロールが深く深化している一枚になっていると思います。

翔 サウンド面で言うと、基本的には4人でやっていて、もちろん色々な音が入っている曲もありますが、4つの音以外のものを入れずに、あえて昭和の感じで作ろうと。聴いた時にシンプルだなって思えるものを作りたかったんです。コーラスとギターの被せで、こんなにシンプルにやっているロックンロールなんだという感じを全体的に出したかった。

TAKU(Vo&B)
TAKU(Vo&B)

TAKU 俺は今回一番気をつけたのがリアルかどうかということ。期待に応えなくちゃいけないとか、銀蝿だからこうしなきゃいけないということに心が絶対縛られるんですよ。当時は、女の子と知り合ってウキウキしながらドライブで海岸線を飛ばして、ということを歌にすればそれがリアルだった。でも今はそんなことやらないから、そういう若ぶる歌を書くのも変だし、悪ぶるのも変だし。みんながこう期待してるんじゃないかなっていうのを想像で応えるのって痛いだけだし。還暦になったんですけど、そうすると、今までごめんねと、今までありがとうって、そういう気持ちだけが自分の中にあることに気がついて、それを歌にしたり、その気持ちが溢れ出ればいいなというところからスタートしました。だからそういう意味では作り終わって聴いていてみたら、自然とみんな似たような境遇というか、気持ちで、それはすごく出せたと思います。

Johnny 今回レコーディングしながら思い出したのが、デビュー曲の「横須賀Baby」でした。デビューした時は色々な手が加わってそれらしい曲になっていますが、一番最初に4人で奏でた「横須賀Baby」を今聴くとチープなんですけど、それを録って帰りの車で聴いた時の感動は今もハッキリ覚えていて。やっぱりこれなんだよなって。あの感動をもう一回味わいたいので、確かに色々な音が入った方がいいかもしれないけど、でもあの時の4人で奏でた感じをこの40周年でやりたいなというのは強くありました。

「『昭和火の玉ボーイ』は昭和の面白さを伝えたかった」(翔)

――シングル「昭和火の玉ボーイ」はオヤジギャグ満載で、今、逆に新鮮です。

「昭和火の玉ボーイ」(9月24日発売)
「昭和火の玉ボーイ」(9月24日発売)

翔 俺とJohnnyは昭和33年生まれなんですよ。で、昭和33年に生まれたやつは30年生きると63年じゃないですか。昭和64年に平成になって31歳から平成元年になって、次の30年間、60歳になった時までが平成でした。平成31年に令和元年がきて、俺たち令和2年だから62なんです。目まぐるしい年まわりというか、わかりやすいというか、俺たち半分昭和時代に生きて、またここから30年生きて大往生で死んじゃうのかなとか色々思うと、昭和の一番楽しかった30年にこだわりたい気持ちがムクムク出てきて(笑)。特にそんなことを歌えるのは昭和33年生まれの俺とJohnnyがいる横浜銀蝿だろ、みたいな。それで昭和の面白さを伝えようと思いました。あの時代のバイタリティーは今の時代にはないし、ガッツとか根性がいいものと思われていた、そんな時代を生きてきた熱い昭和の男の歌です。

「媚びを売らずにやるということが、音楽をやる上で一番大切なこと」(Johnny)

――Johnnyさんはアーティスト活動後、レコード会社で作り手として音楽の移り変わりを見てきていると思いますが、そんな中で横浜銀蝿というバンドを俯瞰で見て、改めてどう捉えていますか?

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Johnny 若い時はとにかくいいものを作るんだという思いが一番前にありましたが、立場が上っていくにつれて、仕方ないんですけど売り上げとか、数字がメインになってきて。目標数字を達成した時の嬉しさはそれはそれでありますが、今回久々にバンド活動をやってみて、純粋に自分がカッコいいなって思ったことを素直にできる、音楽の基本ってそうだよなって改めて思いました。デビューした当時も30回以上オーディションに落ちて、でもその時に、今でいう俺みたいな業界の人に「君たち面白いけどちょっと今の時代じゃないよね」って言われて。そこでその人たちの言うことを聞いて、じゃあちょっと変えてみようかってやっていたら、多分今の銀蝿はなかったと思う。あの時俺たちはこれがカッコいいと思ってやり続けていて、例え売れなかったとしても、後悔はなかったと思うんですよね。やっぱりさっきも言いましたが、基本は自分がカッコいいなって思ってることを、媚びを売らずにやるということが音楽をやる上で一番大切なことかな。だから多分どんなことでも、自分がカッコいいと思ってやらないと、カッコ悪いんですよね。ディレクターになった当時、アーティストを抱えている事務所の人が「Johnnyさん、ロックンロールバンドにしてください」ってバンドを連れてくるのですが、本人達はロックンロールが好きじゃないのに、それをやらせようとして。演奏は銀蝿より全然うまいんだけど(笑)、でもやっぱりカッコ悪いんですよ。自分達がカッコいいと思ってないから。自分がカッコいいと思ってやっていないと、絶対人はカッコいいと思ってくれないです。今はロックンロールが流行りじゃなくて、今俺達みたいに同じことをやり続けているのが世の中の主流じゃなくても、これからどうなるかなんてわからないじゃないですか。これから主流になるかもしれないし。それを、本来とは違ったことをやってこけコケたら後悔するし、売れてもちょっと違うかなって思うと思うし。だから時代は追いついてくると思っています。

「生涯現役。不良って目標を決めないと走らない」(翔)

――オリジナルアルバムも発表して、シングルもリリースして、来年にはZeppツアーも予定されていますが、来年一杯で横浜銀蝿40thとしての活動は終わるということですが、続けていきたいという思いは?

嵐 来年より先のことは、ちょっと考えられない。

翔 生涯現役だから。大体不良って目標を決めないと走らない。

TAKU モットーは生涯現役だから、ここまでって決めておかないと、そこまで走らないっていう。

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このインタビューの後、12月23日に『横浜銀蝿40th 2020完全復活ライブ「THE 配信!」コンプリートDVD BOX』を発売することが発表された。さらに2021年3月17日にニューアルバムをリリースすることが決定した。ニューアルバムのスペシャル企画として、「横浜銀蝿40th ぶっちぎり大投票 ~みんなで決める銀蝿ベストテン~」の開催が決定。これは「横浜銀蝿のヒット曲の数々を40thの“いぶし銀サウンド”で届けたい!」という思いが発端となった企画で、これまで横浜銀蝿が発表してきた全131曲のオリジナル楽曲の中から、ファン投票によってベストテンを決定する。12月23日に予定しているYouTube Live生配信特番での投票結果の発表を経て、全10曲をライヴレコーディングし、ニューアルバムの初回限定盤に収録される。

横浜銀蝿40th オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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