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今の音楽シーンを牽引する14組のアーティストから、加藤ミリヤへのリスペクトと愛が溢れるトリビュート盤

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ソニー・ミュージックレーベルズ

初のトリビュートアルバム『INSPIRE』は、加藤に影響を受けたアーティスのリスペクトが熱量になって伝わる“熱い”一枚に

『INSPIRE』(10月28日発売)
『INSPIRE』(10月28日発売)
AI
AI
仲宗根泉(HY)
仲宗根泉(HY)

加藤ミリヤの初トリビュートアルバム『INSPIRE』が10月28日に発売され、好調だ。2004年のデビューから15周年を迎え、これまで数多くのアーティストに影響を与え、リスペクトされている彼女の初トリビュートということで、豪華な顔ぶれが揃った。「15周年イヤーという節目の時に、自分がこれまで書いてきた楽曲をひもといてみたい思いから、錚錚(そうそう)たるアーティストの皆様にご参加いただきトリビュートアルバムを作っていただきました」とコメント。まずは「STRONGER feat.加藤ミリヤ」(2010年)で共演したAI、「YOU...」(2014年)で共作した仲宗根泉(HY)「Fighter/Gift」(2014年)でコラボレーションした中島美嘉、そして「I’ll be there with you feat. AI &青山テルマ」(2014年)や「One Day feat.加藤ミリヤ,AI」(2016年)でもそれぞれフィーチャリングし合った青山テルマ、“盟友”ともいえる女性アーティスト4組。そして瑛人yama幾田りらLiSAKizuna AI春茶アイナ・ジ・エンド阿部真央、「Love Forever」というJ-POP史上に残る名曲を共に作り上げた清水翔太という、現在の音楽シーンを牽引する14組のアーティストが顔を揃え、“それぞれの加藤ミリヤ”を歌に込め、共演。新鮮かつ、もの凄い熱量を放っている一枚になっている。

それはアーティストの顔ぶれもさることながら、瑛人とyamaによる「Love Forever」のプロデュース・アレンジを川谷絵音(ゲスの極み乙女。、indigolaEnd、ichikoro、ジェニーハイ)、中島美嘉「リップスティック」のアレンジをKanSanoが手がけているのを始め、豪華アレンジャー陣が顔を揃えているからにほかならない。聴きどころがいくつもある作品だ。

今をときめく瑛人&yama、幾田りらが大ヒット曲をカバー

瑛人
瑛人
幾田りら
幾田りら

今年の顔といってもいい、「香水」で大ブレイクした瑛人と、「春を告げる」がバイラルチャート急上昇し注目を集めた注目のシンガー・yamaによる「Love Forever」は、川谷絵音がプロデュース・アレンジを手がけるという、興味をそそられるコラボからこのアルバムの幕が開く。yamaのハイトーンの中性的な声と、瑛人の声との相性が抜群で、ユニゾン部分では極上の“響き”が感動を呼ぶ、素晴らしいマリアージュだ。中毒性のあるダンサブルな仕上がりになった名曲について瑛人は「ミリショーのver.と、ヤマエイ(yamaさんと瑛人)のver.両方聴いてもらって、好きになってもらえたらうれしいです」とコメントしている。

瑛人と同様に、今年を代表するアーティストの一組・YOASOBIのボーカル・ikuraとしても活躍する幾田りらは、加藤の作品の中でも特に人気の一曲「Aitai」をカバー。この曲で加藤ミリヤというアーティストに出会ったという幾田は「たとえ傷ついて苦しくとも、好きな人を想う気持ちをどう表現するか、私なりに想いを巡らせながらレコーディングに臨み、言葉の一つひとつに心を込めて歌わせていただきました」という言葉通り、その圧倒的な透明感のある声の中に感じる、影の部分にスポットライトが当たり、それが切なさとなって伝わってくる。

絶好調LiSAが「WHY」をカバー。「高校生のミリヤさんのソングライティングの素晴らしさに改めて驚きました」

LiSA
LiSA
Kizuna AI
Kizuna AI

現在、映画『鬼滅の刃』主題歌「炎」が大ヒット中のLiSAは「当時高校生の自分が、素直に言えないけど確かにあるわがままのような気持ちを、代弁して歌ってくれる楽曲でした。大人になって楽曲をカバーさせていただくにあたり、楽曲に向き合い解読しながら、高校生のミリヤさんのソングライティングの素晴らしさに改めて驚きました」と「WHY」をPABLOのアレンジで披露。“わがままのような気持ち”をよりロックなアレンジで強調し、LiSA色の「WHY」が完成した。「普段はミリヤさんのセツナチューンな曲を聴いていましたが、自身がEDMをメインに楽曲を展開していることもあり、今回は踊りたくなるアップな曲『HEART BEAT』をカバーアレンジさせてもらうことに!」と語っているのは、世界中から注目を集めるバーチャルタレント・Kizuna AIだ。トラックメイカーPSYQUIが作り上げたサウンドは「私らしくポップでダンサブルなアレンジ」というように、中毒性の高い一曲だ。

アイナ・ジ・エンド
アイナ・ジ・エンド

YouTube総登録者数が約125万人を超え、10~20代の若いファンから熱狂的な支持を集める春茶は「つねに自分は独りなんじゃないかと孤独を感じることもたくさんあって、どこか暗闇に取り残されてしまったようなそんな気持ちになったとき、心から深くつながれる人っていうのは、“手探りで探し続けた希望とか未来を、そっと与えてくれる光のような存在”なんだなと、この曲を聴いたときに感じました」と「Lonely Hearts」に、キュートさの中に不思議な落ち着きを感じさせてくれる、独特の声で新しい息吹を吹き込んだ。BiSHのアイナ・ジ・エンドは「学生時代、ボロボロの失恋をしたときに、何の曲を聴いても心が浮遊していました。そんなとき、この曲に救われました。ミリヤさんの声色の存在感や、歌詞、演奏の中にある、何気ない刹那。当時と何も変わらず、この曲が大好きです」と、「20-CRY-」をKoki(odol・森山公希)のアレンジで歌っている。剥き出しになった歌で、聴いた人全ての心を包み込む。

中島美嘉
中島美嘉
阿部真央
阿部真央
青山テルマ
青山テルマ

中島美嘉はKan Sanoのアレンジで「リップスティック」を歌っているが、まるで彼女のために加藤が書き下ろしたような感覚になってしまうほど、中島の世界観と歌が調和している。とにかくその歌に身委ね、心ゆくまで圧巻の表現力を楽しみたいのが、仲宗根泉「愛が降る」、阿部真央「Last Love」、そしてAI「勇者たち」だ。強くて繊細な加藤の歌を、リスペクトしながらも、それぞれの思いをひと言ひと言に込め、聴き惚れてしまうほどのカバーを作り上げている。お互いを大切な存在とリスペクトし合っている青山テルマは、ひとりひとりの個性こそ美しいと歌ったダンスナンバー「UNIQUE」を、SUNNYBOYの手によるトラックに乗せ、ラップ部分はオリジナルに変えて歌っている。青山の低音部分がドラマティックに響き、言葉が心に突き刺さる。

清水翔太
清水翔太

アルバムのラストを飾るのは、お互いがそれぞれのキャリアの中でなくてはならない存在になっている清水翔太が歌う「愛は変わらず」だ。この曲は加藤の初期のアルバム『TOKYO STAR』(2008年)に収録されていて、この曲について清水は「『TOKYO STAR』というアルバムが出た頃で 僕はデビューするかしないかくらいの時期だったと思います。僕にとって希望とワクワクしかない時期で、そんな気持ちを盛り上げてくれたアルバムでした。その中のひときわ静かに、ゆっくりと、マイペースに輝く一曲に惹かれました。僕は勇気を出して先輩に、あの曲好きです!と伝えました。 今でも大好きな曲です」とコメント。そして「清水翔太節ガッツリにやらせてもらいました!」という言葉通り、リスペクトと愛に溢れたトリビュート盤のラストを飾るに相応しい、思わず“絶品”と唸りたくなる素晴らしい一曲になっている。

初のカバーアルバム『COVERS~』は影響を受けたアーティストの楽曲を、豪華アレンジャー陣が作る極上のサウンドでカバー

加藤の15周年のアニバーサリーイヤーは、このアルバムを皮切りに、11月25日には初のカバーアルバム『COVERS-WOMAN & MAN-』を発売、さらに11月29日には10年ぶりの日本武道館公演『加藤ミリヤ 15th Anniversary MILIYAH BUDOKAN 2020』開催する。『COVERS~』は、コロナ禍の中、STAY HOMEを続けるファンを励ますために、Instagramに毎日弾き語りカバーを投稿し話題となり、ファンからの要望に応えたものだ。

カバーアルバム『COVERS -WOMAN & MAN-』(11月25日発売/初回生産限定盤)
カバーアルバム『COVERS -WOMAN & MAN-』(11月25日発売/初回生産限定盤)

DISC1では女性ボーカル楽曲をカバー、DISC2では男性ボーカル曲を原曲キーでカバーしている。ここでも魅力的なアーティストの名前が並んでいる。DISC1では女性ボーカル楽曲をカバー、DISC2では男性ボーカル曲を原曲キーでカバーしている。ここでも魅力的なアーティストの名前が並んでいる。DISC1には、宇多田ヒカル「Can You Keep A Secret?」、安室奈美恵「Don't wanna cry」などが収録されている。DISC2には、King Gnu「Teenager Forever」、藤井風「優しさ」をはじめ、加藤が大いに影響を受けた男性アーティストの名曲がズラリと並んでいる。トリビュート盤の最後を飾った清水翔太の作品は、「花束のかわりにメロディーを」をカバーしている。またトリビュート盤同様、豪華なクリエイター陣がアレンジャーとして名前を連ねていることでも、注目が集まっている。長岡亮介(ペトロールズ)、King Gnu常田大希の実兄でありヴァイオリニスト・常田俊太郎、ピアニスト清塚信也、YENTOWNのChaki Zulu、多国籍音楽集団のALI、さらにBTSの楽曲にも参加しているSUNNY BOY、そしてトオミヨウなど、最新型かつ最上級の音を楽しむことができる。

時代を創りながら、時代を駆け抜けてきた加藤ミリヤの歌が、15年という時間が作りだした“潤い”をまとい、豊かな薫りを漂わせながら、また多くの人の背中を押してくれそうだ。

加藤ミリヤ オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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