Yahoo!ニュース

ミュージカルスターと“超シンガー”が競演 無観客開催の『Sound In “S”』SPライヴ

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/BS-TBS

ポップス、演歌、ミュージカルスター、垣根を超えた豪華競演が実現。『Sound Inn “S”』SPライヴは、無観客で開催

“時を超えた、ここでしか聴くことの出来ないサウンド”がコンセプトの音楽番組『Sound Inn “S”』(BS-TBS)が、2015年の放送開始からこの4月で6年目に突入する。改めて視聴者に感謝の気持ちを表すと共に、2月27日に『Sound Inn “S”スペシャルライブ2020』と題して赤坂BLITZで豪華アーティストが共演するライヴを開催する予定だった。チケットは完売していたが、新型コロナウイルスの影響により、ライヴは無観客で行われた。

Little Glee Monster(以下リトグリ)、島津亜矢、そして濱田めぐみ中川晃教朝夏まなと田代万里生というポップス、演歌シーンを代表するアーティストと、ミュージカルスターが一堂に会し、圧巻の“歌”と、日本の音楽界を代表するサウンドプロデューサー、ミュージシャンが作り上げた贅沢な“音”が、誰もいないフロア、客席に響き渡っていたが、出演者、スタッフ全員の熱い思いは、カメラを通して視聴者にしっかり届くはずだ。濃厚だった2時間のライヴを1時間にギュッと凝縮したものが、3/21(土) に放送される(19:00〜20:00 )。そのライヴの一部をレポートする。

中川晃教
中川晃教

この日の進行はミュージカル大好き芸人・ジャングルポケット斉藤慎二が担当し、トーク部分では出演者の素顔を引き出していた。トップバッターの中川晃教は、園田涼のアレンジで、ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』から、おなじみの「君の瞳に恋してる」を披露。中川は同ミュージカルで主役のフランキー・ヴァリを2016、2018年と演じており、歌い慣れた歌ではあるが「今日のためのだけのバンドアレンジ」を、楽しみながら歌っていた。

Little Glee Monster
Little Glee Monster
画像

リトグリは人気曲「世界はあなたに笑いかけている」から。佐々木貴之のアレンジで新鮮な表情を見せる同曲で見事なハーモニーを聴かせてくれる。その素晴らしさに感動したジャグルポケット斎藤が「一緒にハモリたい」と“リトルグリー・ジャングルポケット・モンスター”を結成するシーンも。Earth, Wind & Fireとコラボしたことで注目を集めている「I Feel The Light」は、この日が「生バンドでテレビで歌うのは初めて」ということで本人達も楽しみにしていたようだ。アレンジは笹路正徳。佐々木貴之のギターのカッティングが極上のリズムを作り出し、ホーンとストリングスが絡むソウル風のアレンジが印象的だ。

濱田めぐみ
濱田めぐみ
中川晃教×濱田めぐみ
中川晃教×濱田めぐみ

濱田めぐみは堀倉彰の壮大なアレンジで「As if we never said goodbye」(『サンセット大通り』から)を披露。情感豊かに歌い、その圧巻の表現力で聴き手に120%“伝える”。濱田はミュージカル『フランケンシュタイン』で共演経験のある中川とコラボし、同ミュージカルからメドレーで、「その日に私が」を坂本昌之のアレンジで歌った。

朝夏まなと
朝夏まなと

朝夏まなとは2019年出演したミュージカル『天使のラブ・ソングを〜シスター・アクト〜』(デロリス・ヴァン・カルティエ役)から、「シアター・アクト」を本間昭光のアレンジで披露。

田代万里生
田代万里生

田代万里生は荻野清子のアレンジで、ショパンの「別れの曲」に、田代がファンに感謝を伝えるために自ら歌詞を書いた、「ともに描いた夢~別れの曲~」をダイナミックに、そして繊細に歌い、観る者、聴く者を一気にその世界観に引き込む。

夢のスペシャルコラボが実現

中川晃教×田代万里生
中川晃教×田代万里生

このライヴならではのスペシャルコラボも観どころのひとつだ。まず中川と田代が選んだ曲は、ミュージカル『ジキル&ハイド』から「時が来た」。笹路正徳のアレンジで、本来ソロ曲である同曲を二人で歌うという珍しいスタイルで、エネルギッシュに歌い上げた。

田代万里生×朝夏まなと
田代万里生×朝夏まなと

朝夏まなとと田代万里生の夢のコラボにも注目だ。ミュージカル『エリザベート』から「闇が広がる」を本間昭光のアレンジで歌ったが、朝夏は2016年宝塚歌劇団・宙組時代に同作品でトート役を演じ、田代はフランツ役を4度演じており、ファンにとってはまさに“夢の共演”だ。ミュージカルに詳しい斎藤が一番興奮していた。本間の耽美的かつロックなアレンジに乗せ、二人ともパワフルな歌声を披露し、名演になった。

島津亜矢
島津亜矢

“歌怪獣”を異名をとる島津亜矢は、以前にもこの番組に出演しその圧倒的な歌唱力を披露したが、この日は彼女のカバー曲の中でも特に人気の、中島みゆきの「時代」を歌った。坂本昌之の手による、美しいストリングスが絡むジャズテイストのアレンジに乗せ、島津が情感豊かに歌う。歌が本来持つ温度感や表情が、島津の声、歌によってより鮮やかに導き出される。

ライヴ収録前に、番組プロデューサーが「お客さんはいませんが、出演者、スタッフ全員の熱い気持ちを届けたい」と、この日立ち会っていた全員にメッセージしていたが、演者と作り手の思いがパフォーマンスになって表れ、素晴らしい瞬間を捉える事ができた。一夜限りの最高のライヴを、テレビで楽しみたい。

■放送日(BS-TBS)

3/21(土) 19:00〜20:00

4/18(土) 18:30〜19:00

■5月(放送日未定)にCS/TBSチャンネルで完全版を放送

その後、Paraviで完全版の見逃し配信

BS-TBS『Sound Inn “S”』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

田中久勝の最近の記事