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城 南海  “新しい自分”を発信する新作への期待と不安、そして自信

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ポニーキャニオンアーティスツ

3年ぶりのオリジナルアルバムで「ニュー城 南海を見せたい」

5thアルバム『one』(12月18日発売/通常盤)
5thアルバム『one』(12月18日発売/通常盤)

城 南海の約3年ぶりのオリジナルアルバム『one』には、10周年を迎え、その締めくくりであり、20代最後の作品ということで、新しい城 南海を提示したいというシンガーとしての強い思いが込められている。以前のインタビューで「殻を破りたい」と語っていたように、2019年夏には洋楽カバーライヴ、秋にはクラシックコンサートと新機軸のパフォーマンスを披露し、そしてこのアルバムには見たことも聴いたこともない城 南海が存在している。アルバム『one』に込めた思いを城に聞かせてもらった。

以前、「10年は歌い手としてはまだまだひよっこ」と語っていた城だが、様々な活動を経験し、余裕と同時にこれからやらなければいけないことも見つかったと思うが、そんな中で「ニュー城 南海を見せたい」というコンセプトのもと取り組んだのが『one』だ。楽曲提供した作家陣には辛島美登里、川村結花、松本俊明、富貴晴美、河野丈洋、藤井尚之、YOU、などの名前が並び、全曲のアレンジは大島賢治(ex THE HIGH-LOWS)が手がけている。

豪華作家陣が、今までにはないタイプの歌を提供。「今までの私の歌を好きでいてくれる人に響くのか、不安もあった」

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「10年経ったからこそ、こういう歌が歌いたいとはっきり意志表示できるようになりましたし、今回はRe-Bornという気持ちと、チャレンジしてみたいという気持ちもすごく強かったので、提案してくださったものに対しても、貪欲に歌ってみました。今回楽曲を提供してくださった、デビュー曲『アイツムギ』以来お世話になっている川村結花さんや、富貴晴美さん、そして今回念願叶って辛島美登里さんにも書いていただけました。皆さんから『こういう曲はどう?』って色々なラブレターをいただいて、そこから化学反応が起こって、曲ができあがっていきました。今回一曲一曲が、自分にとっては初めてのタイプの曲だったので、そういう意味ではプレッシャーがありましたが、30歳になることだし、等身大の言葉、リアルなものを作ってみようということになりました。歌い上げすぎないように、自然と声が乗る無理のないキーという部分も意識して作ったので、今までの私の歌を好きでいてくれる人に響くのかなという不安もあったし、そういうチャレンジの中でどう表現していくかというプレッシャーはありました」。

「30歳という年齢に憧れていた。今だからこそ歌える曲ばかりだと思う」

30歳になるということも、本人の中では大きなものになって、“次へ”という思いを強くしていった。

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「30歳ってずっと憧れていて、ちゃんと大人になるというイメージがあって。20歳の時は全然自分の考えがまとまってなかったし、あの頃と比べると30歳って一人の人間としても女性としても、歌手としても大人にちゃんとなれるんじゃないかなと感じていて、憧れがずっとありました。そうなれるかどうかわかりませんが(笑)、今回の作品は今だからこそ歌える曲ばかりだと思います。いい意味で問題作だと思うし(笑)、自分でも面白いアルバムになったと思います。女の情念を歌っている一曲目の『クレムツ』、そして2曲目の『行かないで』という流れから、このアルバムがどんな作品になるのかを、感じ取っていただけると思います」。

『THE カラオケ★バトル』(テレビ東系)の絶対女王として君臨し、その歌のうまさ、表現力の素晴らしさは誰もが認めるところだが、そんな彼女が「新しい自分を出したいと」意欲を見せるのだから、作家陣も力が入る。

「このアルバムが10周年の集大成」

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「シングル『ONE』は、大島さんが曲を書いてくださって、今まで歌ったことがない、立てノリの曲で、どういう風に歌を乗せていくか迷いました。ちょっと突き放すような歌い方を今までやった事がなくて、こういう表現の仕方もあるんだって、一歩踏み出してみてわかりました。去年、洋楽のカバーライヴ『ウラアシビ~10th Anniversary~』をやって、クラシックコンサートではクイーンの曲も歌って、あの時、洋楽のビートを勉強することができて、全部がつながっているんだなって感じました。やってみたいことがどんどん花開いている感じがしていて、このアルバムが10周年の集大成だと思っています」。

城独特のこぶし(グイン)も、今回は抑えめにし、ナチュラルに表現。歌から薫り立つ世界観を大切に歌った。色々な思いの中で作った『one』の中で、特に印象的な作品を教えてもらった。

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「まずはやはり『ONE』です。初めて友情をテーマにした歌で、MusicVideoには普段から仲がいい、お友達の西田あいちゃんに出演してもらったり、この曲をいただいて、改めて友情について考えました。“私が友達と思っていても、向こうはそう思ってなかったらどうしよう”とか。それと『ボーンフィッシュ』は富貴さんと色々お話をさせていただいて、まるで心の中を見透かされたような歌詞になっていて、でも応援歌に仕上げて下さっていて、不安と夢を抱える、今の自分にはぴったりだなと思いました。富貴さんからは『この曲を歌う時は踊って欲しい』とも言われました(笑)。それは私が次のステップへ行くため必要なことだと言ってくれて、鋭い目線と分析力を持っている方なので、富貴さんからのラブレターだと思っています。『タピオカ』は、松本俊明さんから曲をいただいていて、この曲で、声遊び、言葉遊びをしたみたいと思って、辛島さんに歌詞をお願いしました。失恋ソング以外をリクエストして完成したのがこの曲です。タピオカからこんなに不思議で、美しい世界が広がるんだって驚きました。コーラスも重ねて、自分が思い描いていた、曲の中で遊んでみたいという願望が実現できました。『東京』では私が作詞をさせて頂いています。10年以上前に初めて作詞した『紅』という作品のアンサーソングで、『紅』では奄美の景色を描いて、そこから東京に来て10年経って、今の私だからこそ書ける歌詞だと思っています」。

ビジュアルはYOUが担当し、今まで見たことがない城 南海を演出

「るるる」で作詞を手がけたYOUは、今回、ジャケット写真などビジュアル面も担当した。ジャケットには今まで見たことがない城が、写しだされている。

『one』(初回限定盤)
『one』(初回限定盤)

「今回、ニュー城 南海を打ち出していきたいので、YOUさんにスタリングとビジュアル面をお願いしました。撮影の時はYOUさんの私物を使わせていただいたり、スタジオで音楽を流しながら『ヤバみ~』って楽しみながらやっていただきました(笑)。YOUさんの指示で色々なポーズをとったので、翌日は全身筋肉痛でした(笑)」。

「色々な経験をし、引き出しが増えていると感じる今こそ原点に返って、これまでとは違うアプローチで向き合ってみたい」

新しい自分を求め、そして同時に今年は“原点回帰”したいと語る。

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「今年はもう一度原点に返りたいと思っています。日本が世界中から注目される年になるし、夏には、『奄美大島・徳之島・沖縄島北部および西表島』が、世界自然遺産に登録されるかもしれないということも大きくて。私の中ではルーツでもある奄美と奄美の音楽を大切にしたいという思いはずっとあったのですが、その中で、色々なカバーをやってみたり、様々な音楽と取り組んできて、そんな中でまたルーツや日本語の美しさに向き合うと、以前とは違う引き出しもできているはずなので、また違うアプローチで向き合うことができると思ったからです。それを自信を持って、世界に発信していきたいです」。

城 南海 オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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