昨年結成40周年 ゴンチチ「僕達の名前は知らなくても、音楽だけが生きてるというのが一番カッコイイ」

写真提供/ソニー・ミュージックダイレクト

『Assortment』(12月25日発売)
『Assortment』(12月25日発売)

昨年結成40周年、デビュー35周年を迎えた、ゴンザレス三上とチチ松村によるインストゥルメンタル・アコースティック・ギターデュオ、ゴンチチ。その優しく温もりのあるメロディと演奏は、TVやラジオ、CM、映画音楽等、我々の日常の中に寄り添うように存在し、自然と耳にしている。まさに彼らの音楽は“Very Special Ordinary Music”といえる。そんな二人から12月25日に『Assortment』という名のグッドミュージック集が届けられた。“選りすぐったものを寄せ集める”という意味のこのアルバム、映画用、タイアップ用に書き下ろした楽曲、そして新曲と、メンバー自らがセレクトした11曲が詰め込まれている。このアルバムについて、そしてゴンチチのこれからについて二人に話を訊いた。

『Assortment』は約1年ぶり、通算26枚目のアルバムだ。松村のエッセー「私はクラゲになりたい」を原案にしたラブストーリーの映画『クラゲとあの娘』(2014年)に提供したサントラを中心に、タイアップ用に書き下ろした楽曲や新曲で構成されている。

「配信限定の曲や映画音楽もすごく気に入っているので、いつかアルバムにしたかったんです。そこに新曲を入れたいと思って「LOVE」という曲とバッハの曲が好きだったので『ゴルトベルク変奏曲第18変奏』をやろうと決めて、制作がスタートしました」(三上)。

ゴンチチの音楽はこれまでも映画音楽に数多く起用されている。竹中直人監督・主演の『無能の人』のサウンドプロデュースを手掛けたり、是枝裕和監督の映画『誰も知らない』や、同監督作品『歩いても 歩いても』でも音楽を担当し、サントラもリリースされている。映像をより印象的に伝える際に、何色にも染まるゴンチチの音楽は大きな力になっているのだ。

「僕らが映画音楽をやらせていただく際はいつもそうなんですけど、監督がゴンチチの音楽を好きでいてくださることが多いので、細かい指示みたいなものよりは、大体こういうシーンでこういう音楽みたいな、大雑把な感じで発注を受け、後は適当に使ってくださいとお渡しします。映像を観ながら作ることはないですね」(松村)。

「聴き流すこともできるけど、よく聴くと色々なトゲを潜ませています」(三上)

ゴンチチの音楽は優しさに満ちあふれているが、リスナーの心に必ず爪痕を残す“強さ”もある。どんな風景や情景にもマッチするが、一緒に流れていかず、しっかりと心と耳に残る。だからより想像力掻き立てられ、一度聴くとクセになってしまう。

「自分たちは、ギター音楽というよりも、自分たちが作るひとつの音楽と思いながら曲を作っています」(松村)

「デビュー当時から癒し系音楽と言われていましたが、僕らはもうちょっと違うものを狙ってたというか、求めていました。聴いているとすごく気持ちよくて、聴き流すこともできるんですけど、よく聴くと色々なトゲを潜ませていて、そこを僕たちは意識してます。音楽の深さというか、絶対にグッとくる部分はあると思います」(三上)。

「あえて僕個人は、“温泉音楽”って呼んでました。薬にもなるし、気持ちもいいし」(松村)。

「癒しだけではなくて、ちょっとだけ上がる感じっていうのが、僕らは好きなんです。ちょっとだけ非日常というか」(三上)。

「その時の旬の音にどうしても敏感になるけど、それを排除して、ずっと聴いてもらえるものを目指し、作ってきた」(三上)

聴き手の心に突き刺さる、穏やかさの中の“トゲ”はどのように作っていくのだろうか。

「その時の旬の音というものにどうしても敏感にはなるのですが、僕達はそれを排除していました。それよりも、ずっと聴いてもらえるかなということはいつも考えています。松村さんはだいたい曲の中に、どこか一か所光るものが欲しいというタイプで、僕は最後まで整っていないとダメなタイプで、だからこの2人じゃなければできない成立しない音楽なんです」(三上)。

「ずっと聴いてもらえる“音色”が大切だと思います。三上さんは細部にまでこだわるので、最後まで粘っていいものを作ろうという意志がすごいです。誰にもわからないような1000分の1くらいのリズムのズレとかを、自分で納得するまでやる人です。僕はそこにはついていけない感じで、お任せするしかない(笑)」(松村)。

「例え僕達の名前を知らなくても、匿名性みたいな感じで、音楽だけが生きてるっていうのが、一番カッコいいと思います」(三上)。

「バッハの『ゴルトベルク変奏曲第18変奏』をやろうと決め、すごく練習して、この年になっても、こういうこともできるんだという発見もあった」(松村)

昨年、7年ぶりのオリジナル・フルアルバム『we are here』をリリースし、この作品では、原点回帰を思わせてくれる、アコースティックギターとシンセやサンプラーなどデジタルを融合させたサウンドを聴かせてくれたり、様々なミュージシャンと制作を楽しんだ。それが二人のミュージシャン魂に火を点けたようだ

「7年も出していなかったのも変な話ですが(笑)、もう一回しっかりやっていきたいと思いました。それで今回の『Assortment』で、バッハの「ゴルトベルク変奏曲第18変奏」をやったのですが、すごく練習して、この年になってもこういうこともできるんだという発見もあったので、これからも色々な事ができそうな気がします」(松村)。

「この曲は難曲でした。僕がやりたいと言ったのですが、難しすぎて泣いていました(笑)。でもやめようとは言えないし(笑)。でもまだまだ面白い事がありそうだし、若いミュージシャンのエネルギーは素敵だと思いますので、そこから自分達も触発されて、楽しいことを見つけていきたいです」(三上)。

「デジタルは“美味しい音だらけ”。でもどこかに焦点を当てたような音ではなく、色々なところに焦点を当てた、奥行きを感じる音を求めていきたい」(三上)

時代はデジタルに変わる中、その変化をどう受け取り、ゴンチチの音楽はこれからどう変わっていくのだろうか。

左からゴンザレス三上、チチ松村
左からゴンザレス三上、チチ松村

「マスタリングに代表される、現在の音作りの趨勢ってあると思いますが、実は今回もマスタリングをやっていただいて感じたのは、ちょっと現代風になっているということでした。パキっとした感じというか、聴きやすすぎるというか。でもゴンチチが目指してきた音と、ちょっと乖離していた気がして、でも今の音に耳を慣らそう、理解しようと何度も聴きましたが、どうしても気になってしまって。結局もう一回マスタリングをやっていただきました。それが時代とのずれだとは思いますが、ある程度時代との距離感を保ちつつ、自分達の音楽をやっていかなければ、埋もれてしまうと思います。デジタルは“美味しい音だらけ”なんですが、でも美味しいところばかり、どこかに焦点を当てたような音ではなく、色々なところに焦点が当たって、奥行きを感じるような音を、僕達は求めていきたい。先ほども出ましたが、僕達は時代をいくつか超えても聴いてもらえる音楽を作っているつもりです。昔のジャズのモノラル音源は、デジタルで聴いても全く違和感がないです。あの強さは、何も通していないからこそだと思う。音楽の本質に辿り着いているミュージシャン達の演奏、出す音は、媒体なんて関係ないと思わせてくれます。デジタルにすればするほど、この人たちのビートはすごいと思わせてくれます。そういう音楽を目指しています」(三上)。

「出会ったのが昨日のことのようで、あっという間の40年」(松村)

40年を振り返ってもらうと「出会ったのが昨日のことのようで、あっという間の40年でした」(松村)、「いつでもどこでも二人で初めて音を出した時の感覚に戻れる」(三上)と、奇跡の出会いは、必然でもあったようだ。そして「二人ともとにかく音楽が好きだというのが続いている理由だと思います。お互いコンビを続けていこうとか、そういうことは考えたことないんですよね。音楽を作ったり演奏してる時がとにかく幸せなんですよ。幸せがいいなと思うから、ずっとやっている感じです」(松村)と、その幸せを感じさせてくれる音楽を、これからも聴かせてくれそうだ。まずは年明け1月からスタートする全国ツアー『ゴンチチ新春生音三昧 2020』で、幸せの“音色”に包まれたい。

ゴンチチ『Assortment』特設サイト