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森口博子×鮎川麻弥 “ガンダム・ディーヴァ”が初コラボ「二人が歩んできた笑顔と涙の人生のブレンド」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
鮎川麻弥と森口博子

“50代で再ブレイク”、森口博子『GUNDAM SONG COVERS』がロングヒットに

『GUNDAM SONG COVERS』(8月7日発売)
『GUNDAM SONG COVERS』(8月7日発売)

森口博子が8月7日に発売した“ガンダムソング”をカバー&セルフカバーしたアルバム『GUNDAM SONG COVERS』が、オリコンウィークリーアルバランキングで3位を獲得し、現在までに8万枚を超え、ロングヒットになっている(10月25日現在)。森口は28年2ヶ月ぶりのベスト10入りとなり、この記録は「オリコンアルバムチャートTOP10入り インターバル記録」女性アーティスト歴代1位となり、50代で再ブレイクと、大きな話題となった。このアルバムでは、豪華ミュージシャンと初めて一発録りや、多重録音にチャレンジ。さらに進化したそのボーカルは、ガンダムファンはもちろん、ガンダムを知らなかったリスナーも絶賛し、ロングヒットにつながった。

森口博子×鮎川麻弥、“ガンダム・ディーヴァ”のデュエットが実現。「ここは他の誰にも譲れないという思いだった」(森口)

さらに10月23日には、1985年から1986年にかけて放送されたテレビアニメ『機動戦士Zガンダム』の前期オープニングテーマ「Z・刻をこえて」を歌った鮎川麻弥と、後期オープニングテーマ「水の星へ愛をこめて」を歌った、森口博子の“ガンダム・ディーヴァ”が初デュエットした「追憶のシンフォニア/果てないあの宇宙へ」(SANKYO「フィーバー機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」搭載曲)が発売され、大きな注目を集めている。今年35周年を迎えた鮎川と来年35周年を迎える森口に、「絆から生まれた」(森口)という今回のコラボについてインタビューした。

「今回のコラボの事を発表してから、私はエゴサーチが趣味なので(笑)、早速エゴサをしてみると、『夢のコラボ、待ってました』っと言ってくださっているファンの方が多くて、本当に嬉しかったです。『Zガンダム』は作品自体も人気が高かったし、(鮎川)麻弥さんの「Z・刻をこえて」も、私の「水の星へ愛をこめて」も、みなさんから30年以上愛されてきました。この『逆襲のシャア』も元々『Zガンダム』の要素も含まれていて、その流れもあって、今回私たちに声をかけていただいて、とても興奮しています。ここは誰にも譲れないという思いです(笑)」(森口)

「博子ちゃんとの絆が、年月と共に太くなっている中で、この作品にたずさわれることはすごく意味があって、深い思いがします」(鮎川)

森口と鮎川は、毎年開催されるアニソンのライヴ『スーパーロボット魂』で共演している。ガンダムファミリーとしての絆を感じながら、一緒に歌っていた。

「デビュー当時博子ちゃんは17歳で、私の中では『人を笑わせるのが大好きです』っ言っていたあの頃のままなんです。でも、34年のキャリアの色々なTV・ラジオのお仕事に対するノウハウは凄いと思うし、頑張っていてとにかく経験豊富で眩しい存在です。私は私で、所属していた事務所がなくなるというトラブルがあって、ミュージシャンとしての活動をフリーでやってきました。そして、CMソングやバックコーラスをやらせてもらってきた中で、こうして平成を経て、令和にまたガンダムと再会することができて嬉しいです。しかも博子ちゃんとの絆が、年月と共に太くなっている中で、この作品にたずさわれることはすごく意味があって、深い思いがします」(鮎川)。

『KING SUPER LIVE』で共演。「ファンの皆さんの滾るような歓声を私たちは細胞まで染み渡らせ、レコーディングに臨んだ」(森口)

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「9月に東京ドームで行われた『KING SUPER LIVE』で、麻弥さんと『Z・刻をこえて』、『水の星へ愛をこめて』をメドレーで歌わせていただいて、そこで3万7千人のファンの皆さんの滾るような歓声を、私たちは細胞まで染み渡らせて、今回のレコーディングに臨みました。あの時の二人の“呼吸”と“高揚感”をそのままスタジオに持っていったので、それが歌にも出ていると思う」(森口)。

『KING SUPER LIVE』での、それぞれの作品でお互いがハモリ合うシーンが、今回の作品への伏線となっていた。そして多くのファンを持つガンダムの楽曲ということで、期待値が大きい分、やはりプレッシャーを感じていたのだろうか、という質問をぶつけると、「いい曲だし、難しいから逆に燃えてきてスイッチが入っちゃう感じでした。ボーカリストとしても試されてるような感じにも受け取れて、ここにきてこういう曲が来たのかって感じでした(笑)。昭和に出会った私たちが、令和になってこのような熱い楽曲を歌わせてもらえるというのは、本当にありがたいのひと言、感謝しかないです」(鮎川)。「私もそうです。喜びと感謝に満ち溢れてワクワクしています。ファンの方の反響も大きかったので、生で歌ったらどうなっちゃうなんだろうというワクワクがありました」(森口)と、心から楽しみながら歌ったことを教えてくれた。

「滾ってます、50代のロックいかがですかって(笑)」(森口)

「追憶のシンフォニア/果てないあの宇宙へ」(10月23日発売)
「追憶のシンフォニア/果てないあの宇宙へ」(10月23日発売)

森口がリードボーカルをとる「追憶のシンフォニア」は、ギターとホーンが高らかに鳴り響くサウンドと、親しみあるメロディが印象的だ。鮎川がリードボーカルをとる「果てないあの宇宙へ」は、同じくギターが炸裂する疾走感あふれるロックで、両曲とも二人の情熱的な歌と、スリリングな掛け合いに、引き込まれる。

「滾ってます(笑)。50代のロックいかがですかって(笑)。ガンダムソングは特にアップテンポの曲に限ればやっぱりはギターが肝で、バラードはストリングスが人間の感情のうねりをより表します。今回はアップテンポなので、ギターの泣き節上昇系はマストだなと。そこはリクエストしました」 (森口)。

「この熟女のコラボでのロックというのには、すごく意味があると思うんです。『逆襲のシャア』の背景と、それぞれ私たちの音楽業界の中で生き抜いてきた、積み重ねてきた歌魂がリンクしている部分があります。若い人たちのロックとは違う重みのある、厚みがあるところを表現できる、それを今回は全面に出せたかなって」(鮎川)。

「このコラボって、麻弥さんと私が歩んできた、笑顔と涙の人生のブレンドだと思っているので、ファンの皆さんの人生も含め、一緒に色々なことを経験して、同じ景色を見て乗り越えてきたものがいっぱい詰まっている、50代のロックです」(森口)。

非常に熱量の高いシングルだ。30年以上歌い続けてきた2人、紆余曲折あった歌手人生を経て今がある、人生経験豊富な2人が歌うからこそ、説得力を持って伝わってくる歌詞だ。二人の人生が歌に投影され、それがパワー、熱量になっている。

「どんなことがあっても歌っていこうっと決めた。どんなジャンルのお仕事も全力で打ち込んで頑張っている博子ちゃんを見て、私も頑張ろうっていつも思っていました」(鮎川)

「先輩であり、大切な仲間の麻弥さんと年齢を重ねるって、大人になるってすごく素敵なことだなって思えるコラボでした。世間からみるとおばさんかもしれないけど、いい意味で大いに結構(笑)。こんなに素敵なことに挑戦できて、大人になるってすごくいいことだなって思えます。20代の時はこの歌は歌えなかったかもしれないです」(森口)。

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『鮎川麻弥 35th Anniversary Best~刻をこえて~』(7月24日発売)
『鮎川麻弥 35th Anniversary Best~刻をこえて~』(7月24日発売)

「人生人それぞれ、みんないい時ばかりじゃないじゃないですか。私の中で音楽、歌というのは呼吸をすること、ご飯を食べることと同じなので、事務所がなくなって、アーティスト活動ができなくなった時も、歌手を辞めるという選択肢はありませんでした。私は歌を歌って生きていくんだからって思って、今できること、一人でできることをやろうと前を向いて歩こうと思っていた時に、CMソングのお話をいただけたり、本当にありがたかったです。その後も、谷村新司さんや加山雄三さんのバックコーラスをやらせていただいたり、必ず助けてくださる方が表れて、ここまでやり続けることができました。自分で信じた道を必死に、淡々とやってきました。私も博子ちゃんと一緒で歌うこと、音楽が好きでそれをやっていたい、それだけなんです。博子ちゃんは年下ですけど、苦労している分、仕事のやり方や熱量、姿勢は見習うべき部分がたくさんあって、本当に尊敬しています。どんなジャンルのお仕事も、全力で打ち込んで頑張っている博子ちゃんを見て、私も頑張ろうっていつも思っていました」(鮎川)。

今年35周年を迎えた鮎川は、これまで200を超えるCMで歌を歌ってきた。その品の良さと温もり、清涼感を感じさせてくれる彼女の声は、CM業界から依頼が後を絶たない。しかし顔もクレジットも出ないCMもあるが、「花王エマール」「第一三共」等のCMで、彼女の声は誰もが一度は耳にしたことがあるはずだ。CMの歌入れの現場では、その場で様々なリクエストが出されるという。「例えば『民謡ぽく歌ってもらえますか』とか、民謡はやったことがないけれど、やったことないって言えないし、まず、こんな感じですかってやってみます。そこで新しい自分の引き出しが増えたりすることもあって、勉強になりました。その時代は私にとってはある意味修行で、神様からもらったいい勉強のチャンスだったと思っています」(鮎川)。

「これまで色々な方が手を差し伸べてくれて、その誰一人が欠けても今回のコラボには辿り着けなかった」(森口)

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「50代のロックってひと言でいっても、相当なエネルギーが必要です。それをここまで歌えるというのは、麻弥さんがこれまで積み上げてきたキャリアがあってこそで、そうじゃなかったら、絶対成立しない企画です。そこを私は尊敬してるし、よく後輩の皆さんが『森口さんみたいに、ずっと歌えるように頑張ります』って言ってくれますが、その先には麻弥さんの背中があって、大先輩の水木一郎さんや堀江美都子さんの背中もあります。でもZファミリーの麻弥さんが、ずっと綺麗な歌声を届けてくれているのは、私も麻弥さんの年齢になった時にこうなりたいという目標でもありますし、こんなに激しいロックを2人でできたことが、本当に幸せ。麻弥さんにも色々あったように、私にもリストラ宣告があって、福岡に帰されそうになったり。でもどうしても歌いたかったので、どんな仕事でもやります!と泣きながらお願いし、バラエティをやらせていただきました。そんな中、『機動戦士ガンダムF91』のテーマソングに恵まれ、初めてのベスト10、「紅白歌合戦」出場「全国ツアー」につながり、10代、20代、30代、40代、50代とガンダムのテーマソングをシリーズごとに歌わせていただき、歌手・森口博子の軸を作っていただきました。そして今回『GUNDAM SONG COVERS』が、オリコンウィークリー3位にランクインして、28年2ヶ月ぶりにベスト10入りとなり、歌い続ける力となりました。ファンの皆さんやスタッフの皆さんと歴史を積み重ねていく中で、夢には締め切りがないと実感しました。色々な方が手を差し伸べてくれて、その誰一人が欠けても、今回のコラボに辿り着けなかったです。という意味では、麻弥さんも私も同じ方向に向かうことができていて、ベクトルが同じということが、素晴らしい共鳴を生んでいるんだなって思います」(森口)。

強さとしなやかさを併せ持つ、2人の50代女性シンガーが生き様をぶつけている渾身の一作といえる。

「生き様って、若い時は男性のための言葉だと思っていました。でも女性にも必要な言葉だし、これからも、自分の生き様を歌で語れるような生き方をしたいなと思います」(鮎川)。

森口博子 オフィシャルサイト

鮎川麻弥 オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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