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注目のシンガー遥海 期待の大器の初CD作品は「赤裸々な自分を見せた」決意の一枚

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ソニー・ミュージックレーベルズ/アリオラ・ジャパン

初CD作品『CLARITY』をリリース

『CLARITY』(10月16日発売)
『CLARITY』(10月16日発売)

昨年、世界的なオーディション番組『X FACTOR UK』にチャレンジし、惜しくも敗退しながらも英ウェンブリーアリーナの観客を総立ちにさせた、世界基準の注目のボーカリスト・遥海が、10月16日に自身初となるCD作品『CLARITY』をリリース(配信は10/23~)。4月に配信リリースした初のオリジナルEP『MAKE A DIFFERENCE EP』から2曲、新曲3曲で構成されているが、「CDは形として残るものなので、どこか緊張感があって別モノです」(遥海)と語っているように、配信作品とは違う捉え方で、記念すべき初CDの発売を喜んでいる。『MAKE~』の発売タイミングでのインタビューで「今年はそれまでやってきたことを“点”とするならば、それを“線”にしていきたい」と語っていた彼女だが、ライヴを重ね、ボーカルグループLove Harmony’s Inc.としても活動するなど、着実に進化を遂げている。そんな進化した姿を、10月18日東京・Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREで行われたワンマンライヴ『HARUMI ONEMAN LIVE “ACCEPTANCE” 2019』で、見せてくれた。

Photo/上飯坂一
Photo/上飯坂一

いつにも増して、“伝えたい”という強い気持ちが伝わってくるライヴだった。『CLARITY』に収録されている新曲から、ライヴではおなじみの人気曲、カバーまで、そのボーカルパワーと表現力を存分に聴かせてくれた。オープニングの「DARE ME」からアグレッシブなダンスナンバーを6曲続けて披露。そして新曲の、力強くもせつないバラード「記憶の海」、さらに「Rewind」「君のストーリー」とバラードを立て続けに披露。“圧倒的”なボーカルパワーというのは、ダンスナンバーの時の凄まじいエネルギーの元になるのはもちろん、バラードを歌う時に感じさせてくれる、儚さや切なさを表現する時に、より威力を発揮することを、彼女の歌は教えてくれる。

「2002」(アン・マリー)、「Masterpiece」(Jessie J)のカバーを披露。「Masterpiece」の一節に<I'm still working on my masterpiece>“「最高の作品」を作ろうと頑張っているんだから”とあるように、彼女は『CLARITY』の中に収録されている「記憶の海」を始め、新進の作家陣とコライトし、作品を作り上げた。その制作過程を含め、『CLARITY』という作品について、そして現在の自身が立っている“位置”についてまで、インタビューした。

初めてコライトで楽曲制作。「『記憶の海』は初めて弱い自分を曝け出した曲」

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「海外の作家の方と日本の作家の方がコライトする場に呼んでいただいて、『どういう歌が歌いたい?』と言われて、ちょうど映画『アリー/スター誕生』を観たばかりだったので、劇中で歌われていた「I’ll Never Love Again」のようなシンプルだけど、グサってくる歌が欲しいと思っていました。内容はどうする?ってなって、その時、失恋をして落ち込んでいたので(笑)、『自分の好きな人が、記憶でしか存在しないくらい遠い存在になっちゃった』という話をして、みなさんとこういう感じ?とかディスカッションしながら作っていきました。それで、『こんな感じかな?』ってピアノでイントロを弾いてくれた瞬間にこれだ!って思って、鳥肌が立ったのを覚えています。海が見える場所で作ったので「記憶の海」になりました。だから「Don’t You Worry」は楽しい片思い、「記憶の海」は終わった片想いの曲です。カッコよくて強い女性アーティスト像が理想でしたが、弱い自分を見せられるのも、弱い自分を受け入れるのも強さなんだなと思うことができて。「記憶の海」は初めて弱い自分を曝け出した曲で、女性にも男性にも共感もらえると思います」。

「どんな歌も歌えるシンガーとしての引き出しを増やしたい」

彼女が求める歌を、作家と一緒に作っていき、どんどん形になっていく過程を目の当たりにして、大きな刺激を受けたようだ。

「自分の知識というか自分の感覚が、こういう感じで形になっていくというのを目の当たりにして、ワクワク感が凄かったです。しかも一人で作ったんじゃないっていうところがまたいいと思います。みんなのアイディアが一つになって完成した時は、喜びも倍以上というか。歌いたい曲のストックはたくさんあって、ファンの方や友人からのアイディアや意見も聞いて、もっと自分というシンガーの強み、それはどんな歌も歌えるというところだと思うので、そういう部分の引き出しをもっともっと持ちたいという意識が強くなりました」。

『MAKE~』にも収録されていた英語詞の「Don’t Break My Heart」は、初めてミュージックビデオを作った作品でもあり、「海外でも通用するシンガーになりたいので、この曲は、海外の人に『遥海は今までどういう曲を歌ってきたんだ?』って聞かれたときに、自信を持って紹介できる楽曲」という、彼女が大切にしている一曲だ。「君のストーリー」もそうだ。「ファンのみなさんの手元に置いて欲しいというか、心が挫けてしまった時にいつでも聴ける曲にしたいと思いました。自分にも向けて歌っている曲です」。「Rainbow」は、ライヴに欠かせないエネルギッシュなナンバーだ。「人生で色々なことがあっでも、最終的には必ず虹が出てくるという、明日への希望を感じられる歌です」。

「Don’t You Worry」は、「Don’t Break My Heart」と対をなすような、かわいらしい女性が描かれている。「『Don’t Break My Heart』と違う感じの、もう少し日本リスナーの皆さんに寄り添える曲がいいなって思って、英語と日本語を混ぜて歌いたいと思いました。洋楽っぽいサウンドなのに、日本語だけだとちょっと違うなって思って。今回の作品の中でも特にこだわって歌った曲です。かわいらしさから凛としたところまで、女性の色々な思いを描いている曲です。レコーディング中も『今日はかわいくなった気分です』って言いながら歌っていました」。

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またボーナストラックには『東方Project創作 ダンジョン探索RPGゲーム「不思議の幻想郷-ロータスラビリンス-」』から「Ignis」と「Alnair」が収録されている。他の楽曲とは全く違う歌を聴かせてくれている。「まさに自分をゲームの世界に連れて行ってくれました。こういう自分もいるんだという新しい発見がありました。4声くらい重ねていて、『Ignis』は、張り上げて歌っているいつもの歌い方とは違う歌い方なので、物足りないかな?と思いましたが、完成したものを聴くと、しっかり表現できていて安心しました」。

「クリアでピュアで、赤裸々な自分を出しているアルバム」

「クリアでピュアで、赤裸々な自分を出しているアルバムだから」、『CLARITY』と名付けた。以前はライヴ前は、「怖い」「緊張する」というワードをよく口にしていたという彼女が、その弱さも全部を受け入れた上で、今、意識改革を行っている。「私は絶対に表に立って、ずっと歌い続けていきたいので、今、根っこを強くしなければいけないと思っていて。根が強ければ木は簡単には倒れないと思うんです。シンガー遥海と、草ケ谷遥海という自分との境目がよくわからないまま、人前で歌ってきた気がしていて。でも7月のワンマンライヴから見えてきたものがたくさんありました。私というシンガーは、どんなシンガーなのかを確固たるものにしなければいけないなって。それまでは、どこに向かえばいいのか、今ひとつ自分でも迷っている部分があって、とりあえず頑張っていれば大丈夫と思って歌ってきました。でもこうなるために頑張るという道がはっきり見えてきました。みなさんに聴いてもらうためには自分を磨いて、もっと精神的に強くなって、どんな歌もしっかりと表現できる、伝えることができるシンガーになりたい」。

2020年2月にワンマンライヴを行い、さらに進化した姿を見せ、“飛躍”の年にする

まさにライヴでカバーした『Masterpiece』の歌詞、<'Cause I'm perfectly incomplete I'm still working on my masterpiece私はこんなもんじゃない 「最高の作品」を作ろうと頑張っているんだから>――が、現在の遥海の心模様なのかもしれない。

2020年2月10日に、渋谷WWWでワンマンライヴを開催することを発表している。これからも様々な歌を歌い、進化した姿を見せてくれるはずだ。これまでの実績から、元々大きな期待が寄せられている遥海だが、来年は大きな飛躍が期待できそうだ。その可能性を感じさせてくれるのが、初のCD作品『CLARITY』だ。

遥海 オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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