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東京ドームで4万5千人の男性限定ライヴを行うUVERworldは、なぜ『男祭り』にこだわるのか?

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
「『男祭り』への想いと呪いにとどめを刺したい」(TAKUYA∞)

UVERworldにとってはなくてはならない、男同士の戦いの場“男祭り”とは?

2018年12月21日横浜アリーナ(写真提供/ソニー・ミュージックレコーズ)
2018年12月21日横浜アリーナ(写真提供/ソニー・ミュージックレコーズ)

UVERworldというバンドが創り出す熱量は、年々高く、強く、そして大きくなっている。結成19年、デビュー14年、その音楽と、活動の軸となっているライヴと貪欲な姿勢こそが、リスナーの胸を熱くする源だ。昨年12月21日には昼間に日本武道館で『女祭り』を、さらに夜には横浜アリーナで『男祭り』を開催するという、前代未聞の同日、異なるアリーナでのライヴを行い、大きな注目を集めた。そして、先日UVERworldからまたまた驚きの発表があった。12月20日に東京ドームで、45,000人の男性限定ライヴ『男祭り』を開催するというものだ。6人VS45,000人の男性という前代未聞のライヴ。しかし2011年から始まった『男祭り』は、UVERworldにとってなくてはならない男同士の“戦い”の場であり、<男共よ、強くあれ>というメッセージを、真っすぐに伝える場でもある。UVERworldがなぜにそこまで『男祭り』にこだわるのか、そして今充実の時を迎えているUVERworldがこれからどこへ向かおうとしているのか、ボーカルのTAKUYA∞に聞いた。

2018年12月21日横浜アリーナ
2018年12月21日横浜アリーナ

「2010年に東京ドームでライヴをやったのですが、2012年にZeppNamba(大阪)で『男祭り』をやった時は満杯にならなかったんです。東京ドームに42,000人も集まってくれたのにも関わらず、男限定にすると2000人になってしまうような状況で、そこをなんとか男女比をイーブンにするというのが、最初の目標でした。2011年に地元・滋賀のライヴハウスで最初の『男祭り』をやった時は230人で、そこから毎年2回『男祭り』をやって、とりあえず日本武道館までやろうと思って、それで武道館が実現した時にステージ上から「いつか東京ドームでやろう」という言葉が出て、そこにいた男性crew(ファン)たちと約束しました」。

東京・芝 増上寺で行われたイベントで、12月20日東京ドームで『UVERworld KING’S PARADE 2019 男祭り FINAL』を行うことを発表
東京・芝 増上寺で行われたイベントで、12月20日東京ドームで『UVERworld KING’S PARADE 2019 男祭り FINAL』を行うことを発表
左から真太郎(Dr)、彰(G,Pro)、TAKUYA∞(Vo)、克哉(G)、信人(B)、聖果(Sax,Ma)
左から真太郎(Dr)、彰(G,Pro)、TAKUYA∞(Vo)、克哉(G)、信人(B)、聖果(Sax,Ma)

UVERworldはデビュー当初は、99%が女性ファンだったとTAKUYA∞は認め、女性ファンに常に感謝しているとライヴでいつも語っている。そんな女性ファンに、自分達がアイドルバンド的な見え方をしているのが申し訳ないという気持ちが、男性からも支持されるアーティストになろうという思いに至った理由だという。『男祭り』には女性crewを毎回無料招待している。東京ドームにももちろん招待する。TAKUYA∞は4月11日に芝・増上寺で行ったイベントで「見届け人ってことで15人~200人ぐらいですかね、男が頑張る瞬間は女性に見てほしいって気持ちもありますし、来てくれるファンのみんなも女性がいた方がもっと盛り上がると思うんですよ」と語っている。さらに「克っちゃん(リーダー・克哉(G))が15人分は旅費も全て負担します(笑)」とラジオで発言している。

「女性ファンに『男たちにバカにされている俺たちでごめん』という思いが強く、『男祭り』を始めた」

『男祭り』の特設サイトの中に、昨年12月21日に横浜アリーナで行った『男祭り』の映像が公開されている。ステージ上からTAKUYA∞は「『男祭り』への想いと呪いにとどめを刺したい」と語っている。その呪いの正体は、コンプレックスだった。

2017年2月11日さいたまスーパーアリーナ
2017年2月11日さいたまスーパーアリーナ
2017年2月11日さいたまスーパーアリーナ
2017年2月11日さいたまスーパーアリーナ

「自分達の音楽は、年齢、性別、国籍問わず全ての人に向け発信しています。女子って流行に敏感で、発信源です。だから僕らは女子に早く見つけてもらえたと思っていて、でも男性には全然振り向いてもらえないどころか、ネット上では「UVERworldはアイドルバンド」みたいなことも言われて。そこはずっとコンプレックスに感じていて、女子たちに「同性の男たちにバカにされている俺たちでごめん」って申し訳なく思っていました。だから、自分達の音楽を、しっかり男たちに認めさせるという強い気持ちで『男祭り』をスタートさせ、そういう意味では僕らの中では戦いに近いものがありました。女子会ってあるじゃないですか。女子は女子会で色々な情報を得て、自分達の磨き方を見つけたり、女子の前でしかしない男についての会話もあると思います。『男祭り』は男子会。男は女子の前だとどうしてもカッコ付けてしまいがちで、でも『男祭り』では涙を流しながら熱くなって、素を見せているんです。実際僕もMCで堪えられずに涙を流してしまう時もあります。でも女性がいたらカッコつけて泣かないように頑張る自分がいて(笑)。だから男は女性の前で素を見せる練習になっていると思うし、僕は僕で、通常の感覚では開けない扉、瞬間みたいなものがあって、そこに行く練習のような気もしています。男たちとの戦いの中で、限界を超えた時、アドレナリンが出まくっている状況の中で出てくる言葉、メッセージや歌詞が相手に届くものだと思っています。男たちに『UVERworldはなよっちいバンドや」と思われていて、それ掻き消してやるという思いが強すぎることが、僕らの中の呪いでした。でもドームでやってしまえば、そんなこと言う奴いないだろうって、そういった意味でも解き放たれたいですし、これ以上突き詰める必要がなくなったってきたという意味で、“ファイナル”です」。

「敵がどんどん味方になってくれている。だから東京ドームも23,006人VS24,000人くらいの感覚で臨める」

2017年2月11日さいたまスーパーアリーナ
2017年2月11日さいたまスーパーアリーナ

「2017年にさいたまスーパーアリーナで『男祭り』をやった時に、最初は6対23,000人って言っていましたが、ふたを開けてみると、男性crew達が僕の気持ちを汲み取ってくれている気がして。今まで男達にナメられ続けてきて、悔しい思いを抱えて対峙してきた敵が、一回ライヴを観てくれた人たちは、次に来た時は味方になってくれて、自分たちもそういう気持ちで、新しく観に来てくれる男たちと、対峙しているような感覚になれました。だからこっちには12,000人くらい味方がいたような感じがしました。東京ドームも 23,006人vs24,000人くらいになるんじゃないですか(笑)」。

2018年12月21日横浜アリーナ
2018年12月21日横浜アリーナ

『男祭り』では、アリーナもスタンドも全員が肩を組んで、涙を流しながら歌うという、感動的なシーンを毎回観る事ができる。毎日10キロ走ることやストイックな生活を自分に課し、常にベストな状態でライヴに臨み、全力で想いをぶつけるTAKUYA∞の姿勢が、男性ファンの胸を打つ。TAKUYA∞の言葉とUVERworldのサウンドが放つ熱量に、我を忘れて、“その向こう側”にあるものに手を伸ばしていく。「UVERworldは、男女関係なく愛してもらえるバンドになった」と確信したTAKUYA∞が、次に目指すもの、場所とは?

「9枚のオリジナルアルバムと2枚のベスト盤で、自分達がやりたいことはひとつの形にできた。これからは誰もが知る“ヒット曲”を創ることに全力を注ぐ」

2018年12月21日横浜アリーナ
2018年12月21日横浜アリーナ
2018年12月21日横浜アリーナ
2018年12月21日横浜アリーナ

「ずっと『UVERworldは変わった』って言われていて、でも僕らの音楽は1stアルバムから何も変わっていないと思っていて。変わったうちに入らないくらいの変化です。でも確かに2017年に出したアルバム『TYCOON』と、昨年リリースした 『ALL TIME BEST』、9枚のアルバムと2枚のベスト盤で、自分達がやりたいことはひとつの形にできたと思ったのは事実です。だからそれからは、敢えてもっと自分達のやりたいものに特化しているのは確かです。『TYCOON』以降にリリースしたシングルだけで言えば、『変わったよね』って言われたら『はい、変わりました』って言えるくらい変化を求めてるから、今は変化を楽しんでいます。男女ファンの比率の次は、年齢の壁を越えていきたいと思います。UVERworldといえばこの曲、という誰もが知っている曲が僕らには一曲もなくて、サザンやミスチルには、この曲だけはファンじゃなくても知っていて、カラオケで歌ったら喜ばれるという曲があるじゃないですか。そういうパワーがある作品を生み出すことに全力を注ぎたい。今まではそういうものを追いかけてこなかったけど、でも最近はそれを追いかけたいなって思い始めて。10年、20年やっているアーティストの中には、デビュー当時に大きなヒットがある人が多いと思いますが、僕らはそれがなく、じわじわずっと右肩上がりでやってこれているというところが、目標を失わずにバンドが一丸となってこれた、原動力になっていると思っていて。だからそろそろ年齢の壁をぶち破って、それで海外に出ていって、自分達の音楽をどんどん広げていきたいです」。

「2周回って、今は中学の時にバンドを始めた頃の、ただ楽しい、という純粋な感覚が戻ってきています」

来年結成20周年、デビュー15周年というタイミングを迎えるが、TAKUYA∞の口から放たれる言葉には歌詞同様、ひと言ひと言に力強さとエネルギーを感じることができる。まさに今が充実の時、そう思わせてくれる。

2017年2月11日さいたまスーパーアリーナ
2017年2月11日さいたまスーパーアリーナ

「僕自身、趣味がどんどんなくなっていって、今は本当に音楽が楽しいし、それ以外必要ないというか。休みの日も友達と全然違うフィーチャリングの曲を作ったり、趣味が仕事になってきています。UVERworldを始めて19年くらい経って、今本当に音楽の良さを感じているし、2周くらい 回って、中学校の時にバンドを始めた頃の、ただ楽しい、という純粋な感覚が戻ってきています。歌詞を書くことも楽しくて。歌手として『この言葉を言ったら、自分も高揚するだろう』という言葉を日々捕まえるのが上手くなって、それをメモするという習慣がしっかりできているので、曲ができたらそのメモを見て、ハッとする言葉をパズルのように紡いでいく感覚です。パズルが合わさっていった時の気持ちよさというのは、曲作りの中で一番楽しいです」。

秋には“次”のステージに向かう、新しいゾーンに入ったUVERworldの音楽が詰まった新作を届けてくれそうだ。そして年末には自身の記録を更新する、史上最大、前代未聞の男性限定ライヴ『男祭り』を、東京ドームで行う。

2017年2月11日さいたまスーパーアリーナ
2017年2月11日さいたまスーパーアリーナ

「まだまだ希望を持っています。ここで終わる気はしないっていうか」――そう語るTAKUYA∞の瞳の奥には、自信という名の力強い光が宿り、それはあまりに眩しかった。

『UVERworld KING’S PARADE 2019 男祭り FINAL』特設サイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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