伝説のロックバンドの“シーズン2”に注目 金子マリ「ステージの上だけが、解放され、自由になれる場所」

写真提供/徳間ジャパンコミュニケーションズ

「金子マリ&BUX BUNNY」から「Mari & Bux Bunny シーズン2」へ

鳴瀬喜博(B)
鳴瀬喜博(B)
難波弘之(Key)
難波弘之(Key)

1976年5月にデビューし、活動期間わずか3年にもかかわらず、日本のロックが進むべき道を提示し、強烈かつ深い爪痕を残したロックバンド「金子マリ&BUX BUNNY」が、新たに「Mari & Bux Bunny シーズン2」として復活。オリジナルメンバーの金子マリ(Vo)、鳴瀬喜博(B)、難波弘之(Key)に、古田たかし(Dr)、土屋昌巳(Gt)、玲里(Cho)、 開発千恵(Cho)が加わり、昨年11月に再始動。3月6日にニューアルバム『Mari&Bux Bunnyシーズン2』を発表した。新しいセッションは、新しい音と圧倒的なグルーヴを作り出し、さらに深みを増した金子の歌は、唯一無二の世界観を作り出している。金子と鳴瀬に、バンドについて、そしてアルバムに込めた思いを聞いた。

「メンバーも変わって、新しいセッションだから“シーズン2”」(金子)

「鳴瀬さんは最初、もうこれで最後っていう意味で『ザ・ラスト』というアルバムタイトルを考えてきたけど、でもメンバーも変わって、新しいセッションなんだからラストはないよねということで、シーズン2にしました(笑)」(金子)。

「もう40年以上経っているし、また再開するとも思っていなかったから、この先もどうなるかわからないし、BUX BUNNYのラストアルバムという意味で『ザ・ラスト』ってつけたら、シーズン2という言葉をマリが持ってきてくれて」(鳴瀬)。

「セッションしながら仕上げていくと、予想もしない形になって、それがすごく嬉しい」(鳴瀬)

古田たかし(Dr)
古田たかし(Dr)
土屋昌巳(Gt)
土屋昌巳(Gt)
玲里(Cho)
玲里(Cho)

2017年3月、BOXセット『アルバム・コンプリート・ボックス』が発売され、その秋に目黒Blues Alley Japanで久々にライヴを行った。その時、面白いと手応えを感じ、今年古希を迎える鳴瀬が中心となって、新しいアルバムへの流れを加速させた。ドラムの古田たかしと、「今のBux Bunnyのギターは土屋君しかいないと思う」(金子)と、10年ほど前から金子と度々共演している土屋にも声をかけ、欠かすことができないコーラスも、玲里と開発が参加した。そして「去年の初めくらいに曲を作り始めて、歌詞も集めて、前からある曲で、どうしてもマリに歌ってもらいたいという曲があったり。大元のアレンジを作ってみんなと、セッションしながら肉付けしていきました。その肉付けが、予想もしない形になったときって、ものすごく嬉しいじゃない。そういうのがすごくあった」と、鳴瀬が“シーズン2”にふさわしい音と言葉を探し、セッションしながらアルバムを構築していった。

志はあの頃のまま、音は新しく、ソウル、ファンク、HIP-HOP、A&R、様々な音楽をロックとして昇華させたアルバム

『Mari&Bux Bunnyシーズン2』(3月6日発売)
『Mari&Bux Bunnyシーズン2』(3月6日発売)
開発千恵(Cho)
開発千恵(Cho)

全11曲。ソウル、ファンク、A&R、様々な音楽をロックとして昇華させ、志はあの頃のままで、でも新しい音楽が詰まっている。変わらないものと進化したものが融合し、芳醇な薫り漂う一枚に仕上がっている。スローファンクの「Tic Tac Toe」は土屋の色気あるギターの音色のソロが響き渡る。元々鳴瀬がインストとして作ったカシオペアの2曲、「When You Grow Up~2019~」には玲里が歌詞をつけ、同じく「KOKORO-CK~2019~」はグレゴリー・ブラウンのラップをフィーチャー。「Still Stands~2019~」は鳴瀬のバンド、ザ・チョッパーズ・レボリューションのアルバムに収録されていた曲に、金子が歌詞をつけた。ジョニー吉長、ラッキー川崎ら、今は亡き盟友達に思いを込め歌う金子のボーカルが胸に沁みる。オープニングナンバーの「The Haze And Tide」は、金子のアカペラから始まる印象的なナンバーだ。

金子マリにとってステージとは、歌とは

48年間、歌と向き合い、歌い続けてきた金子に、改めてライヴ、ステージで歌うということ、歌というものについて聞いてみた。

金子マリ(Vo)
金子マリ(Vo)
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「ステージに立って歌うと、ステージの上だけは、色々なしがらみから解放されるというか、歌に専念できる。それはもう他にはどこでも味わえないような、自分が自由になれるところ。たくさんアルバムを売らなければいけないとか(笑)、そういうこともステージでは全然考えなかったし、他にはないそこに行きたいなっていう気持ちだけで、やっている感じです。今回のアルバムの中では、やっぱり自分で歌詞を書いた曲は、思い入れが強いです。歌詞の内容というより、鳴瀬さんが書くメロディが難しくて(笑)、自分の思った歌を最初は表現できなくて苦労しました。例えばブレスをするところとしないところ。ここまではどうしてもひと息で歌って表現したいとか。最近の歌は、二小節くらい歌うとブレスするようなものが多くなったけど、歌ってやっぱりそういうことじゃないと思うんですよね。メロディの中で言葉を“置く”ということが、長年やってきて改めて大切だと思います。それと、やっぱり歌って歌詞を見て歌っているとダメなんですよね。歌詞を見ると、その歌詞を追うことだけになっちゃうんです。歌はそのフレーズを自分の中でちゃんとイメージできないと、歌えないんです。だからひとつの文章というか、一行一行、自分の頭の中で絵が描けないと、本当に自分のものにはならないと思います。でも、最近は私もそうそう言いたい事もないんですよね(笑)。こういう事だぞって言いたい時代も、この48年の間にはありましたが、今はどんな曲でも、自分なりの理解が少しはできるようになってきたかなと思います」(金子)。

「それぞれの活動があるから、このバンドは、たまにやるから面白いんだよという、気持ちの切り替えが必要かもしれない」(鳴瀬)

このMari & Bux Bunny シーズン2は、新作を出し、ライヴを行い、その後はどのような展望を描いているのだろうか。

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「やっていると面白いものがどんどんできてくると思うんだけど、それぞれの活動もあるし、だから、たまにやるから面白いんだよという気持ちの切り替えが必要なのかもしれないですね。活動しながら新しいものを作っていくというより、たまに持ち寄ったものを吐き出してもらって、その結果どうなるのかみたいな、そんな感じでやりたいなと思っています」(鳴瀬)。

この極上のバンドアンサンブル、そして50年近いキャリアを重ねてもなお、真摯に歌に取り組む姿勢を決して緩めない、金子マリの深く深化した歌は、あらゆる世代に届いて欲しいし、聴いて欲しいと素直に思う。

Mari & Bux Bunny シーズン2 オフィシャルサイト