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ミュージカル俳優・井上芳雄が“今一番歌いたい歌”とは?「もっと色々な音楽と出会いたい」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
「たくさんの学び、発見があったセッションだった」(写真提供/BS-TBS)
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人気ミュージカル俳優・井上芳雄が、 “時を超えた、ここでしか聴くことのできないサウンド”がコンセプトの音楽番組『Sound Inn “S”』(BS-TBS)に登場し、3人の音楽プロデューサーがアレンジした、ジャンルも世界観も違う3曲を、圧巻のパフォーマンス。

その高い歌唱力と演技力で、コメディからシリアス、重厚な作品まで、幅広く活躍し、ミュージカルシーンにはなくてはならない存在の井上が、豪華バンドと共に“今一番歌いたい歌”をセッション。

「色々な思いがよみがえってくる」大作「塵と灰」は、まるで舞台を観ているような圧巻の表現力

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1曲目は今年井上が出演した、日本初演のミュージカル『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』より「Dust&Ashes(塵と灰)」(2016年)を、斎藤ネコの重厚かつ美しいアレンジで披露。6分を超えるこの作品は、「一曲の中で心情が変わっていく、ミュージカルナンバーらしいナンバー」と井上が言うように、繊細な心情を表現し、まるで良質な舞台を観ているような感覚になる。舞台で、主人公の青年ピエールを演じた井上は、この歌を歌うと「色々な思いがよみがえってくる」と、特別な存在の作品になっているようだ。歌い終わった後は「今回は、緊張してスリリングだったし、どういう風に歌ったかも覚えていないくらい集中できたので、よかったと思う」と満足げな表情を見せていた。斎藤も「特等席(指揮台)で、引き込まれるように聴いていました」と絶賛していた。

「息子に伝わっているといいな」と米津玄師「Lemon」を熱唱

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2曲目は2018年最大のヒット曲、米津玄師「Lemon」だ。アレンジは本間昭光。この曲をどうしても歌いたかったのには理由がある。「長男が米津さんの大ファンで、自分のラジオ番組でもこの曲を歌ったのですが、今ひとつ納得できる出来ではなくて。息子の反応も……(笑)。なので息子に伝わるように歌いたい」と、一瞬父親の顔になり、しかしすぐに“表現者”の顔に戻り、気合十分で臨んだ。本間とバンドとのリハにも熱が入る。カントリーのフレーバーを散りばめた本間のアレンジに乗せ、独特の世界観を持つこの曲へのリスペクトを感じさせてくれる歌で、見事に表現。「ミュージカルの曲と違って、自分の気持ちを添わせるのが難しい。その“世界”が難しい」と、ポップスを歌うことの難しさを語っていた。

自身のテーマソングともいえるABBAの名曲を、テレビ初披露

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3曲目はミュージカル『マンマ・ミーア!』でもおなじみの、ABBAの「Thank You For The Music」(1977年)。アレンジは坂本昌之。「曲のテーマが音楽賛歌、音楽への感謝で、まさに歌があるから今の自分があるという、自分の想いそのものので、何かと歌いたくなる」と、自身のテーマソングともいえる名曲を、テレビ初披露。軽やかに、そして思いを込めて歌い、メッセージを伝えた。

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全ての収録を終えた井上は「タイプも言葉も違う、濃い3曲だった。たくさんの学び、発見があった。自分の根っこはミュージカルだけど、それを生かして色々な人、音楽ともっと出会いたい。芸歴を重ねてきたと思っていましたが、いい意味でまだまだだと思ったし、まだできることがたくさんあると思いました」と、この日のセッションに大いに刺激されたようで、発見と気づきを手にし、充実した表情だった。

改めて超人気ミュージカルスターの表現力に圧倒させられると共に、その音楽との向き合い方に感心させられる。井上が出演する『Sound Inn “S”』は、3月16日23時~BS-TBSでオンエアされる。

BS-TBS『Sound Inn “S”』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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