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田中みな実 注目ドラマ『絶対正義』で本格女優デビュー「30歳を過ぎて、真新しい分野に挑戦できて幸せ」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
(C)東海テレビ

“オトナの土ドラ”『絶対正義』で、本格女優デビュー

一点の曇りもない正義が、人々を幸せにするとは限らない――2月2日にスタートした、東海テレビ・フジテレビ系の連続ドラマ『絶対正義』(毎土23時40分~)が話題だ。“オトナの土ドラ”と名付けられたこの枠は、かつての昼ドラの枠が移動してきた。濃密なストーリーの作品が続いている人気枠で、同ドラマでフリーアナウンサーの田中みな実が、本格女優デビューしたことでも注目を集めている。初回から田中が演じる石森麗香が、自宅の寝室で不倫相手の本間亮治(神尾佑)に、「罪悪感で死んじゃいそう?」と聞き、「そんな事ないよ」と返されると、「嘘つき…」とつぶやき、激しく唇と体を重ねる、激しいベッドシーンが繰り広げられた。連ドラ初出演となる田中の体当たり演技に、ネット上では視聴者から「めっちゃ綺麗」「あざとくて可愛くて美しい」など、絶賛の声が飛び交った。

左から桜井ユキ、片瀬那奈、山口紗弥加、美村里江、田中みな実
左から桜井ユキ、片瀬那奈、山口紗弥加、美村里江、田中みな実

『絶対正義』は、人間の本質をえぐりだす作風で、読後に嫌な気分になる“イヤミス小説”で人気の秋吉理香子の心理サスペンスを、山口紗弥加主演でドラマ化。監督は西浦正記氏(『劇場版コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命~』ほか)。ある出来事をきっかけに、間違ったこと、法を犯すものを許さない“絶対正義”を持つ、専業主婦・高規範子を山口が演じ、田中の役どころは、子役タレントとして活躍していたが、高校時代には妊娠の過去もあり、妻子ある男性と不倫関係に陥る女優だ。本格女優デビュー作が、“正義とは何か?”を問う、観る者自身の隠された素顔を映す“ミラードラマ”でもあるこの作品となった田中に、インタビューした。

「撮影が始まるまで、不安材料もよくわからないまま、漠然と不安でした」

フリーアナウンサーとして、またタレントしてレギュラー番組他で大活躍している田中の元に、ドラマ出演の打診があった時、まずはどういう受け止め方だったのだろうか。

「できるのかどうかわからない、というのが正直なところでした。基本的にはできることしかやりたくないタイプなので、まず人に迷惑をかけたくないという思いがあって。でも元々ドラマを観るのが大好きで、せっかくいただいたお話なので、挑戦してみようかなと受けさせていただきました。撮影が始まるまでは、不安材料もよくわからないまま、漠然と不安が募りました」。

ドラマが好きというのは、社会人になってテレビの仕事を始めると、バラエティをはじめ、どうしても仕事モードで観るようになってしまい、気持ちを切り替えるという意味でドラマを観るようにしていたという。だからいつか女優にチャレンジしてみたい、という思いはこれまで「一切なかったです」と、今回、思いもよらない出演オファーだったことを教えてくれた。

「番組を観て下さった方が、『イメージと違う。これ田中みな実なの?』って思ってもらえたら、監督の演出意図に沿うことができていることだと思います」

田中が演じる石森麗香は、子役タレントから女優に転身。高校卒業後は芝居に打ち込むもしばらく低迷していたが、最近はCMやドラマで活躍している。独身で、妻子ある男性と不倫関係にある。高校時代、望まぬ妊娠をした時、範子に助けられた過去を持つ。範子に対して感謝していると同時に、誰も知らない秘密を知られているという思いがある――そんな難しい役どころに対して、西浦監督からはどんなリクエストがあったのだろうか。

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「特になかったというか、まだ泳がせてくれているというか(笑)、見守ってくださっています。最初に『この役、田中さん的にはどう思った?』と聞かれて、私は敢えて原作を読まずに、真っ白な状態で台本とだけ向き合うことにしていたので、一話と二話の台本を読んで思ったことを、率直にお話させていただきました。劇中5人で会話をするシーンがあって、自然な会話を心がけてるがあまり素の自分が見え隠れしてしまって。すると、監督が『ブリっ子っぽく映るかもしれないから、ちょっとブリ押さえようか」って。自分では自覚していなかったのに、そうみえるということは日ごろ、割とブリっ子なのか!?と気付かされました(笑)。私の場合、普通にしていても、いまだにブリっ子と思われているふしがある。年も年だし困ったものです(笑)。この作品を観ていただいたら、『イメージと違う。これ田中みな実なの?』って思ってもらえたらいいな。そう思ってもらえたら、監督の演出意図に沿うことができていることだと思います」。

同ドラマの浅野澄美プロデューサーは田中について、「初めてのことなので、最初は時間がかかるかなと思っていましたが、逆に「本当に初めて?」と思うくらい、役にすぐに入ってくれました。回を追うごとに、色々な表情を見せてくれる上に、迫力が増している」と絶賛。そんな田中が演じる石森麗香と田中自身は、被っている部分はあるのだろうか。

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「私が演じる麗香は、子役で芸能界デビューして、一度低迷して、今また活躍している女性。当然そういう経験がないので、想像を働かせるわけなのですが、女優さんはどんな役でも観る側に、違和感を抱かせることなく演じることができる。これまで以上に尊敬の念が生まれました。5人でいるときは、あくまで友達同士なので、女優然としていないというか、逆に比較的気弱な方かもしれません。理穂(・ウィリアムズ/片瀬那奈)はまとめ役でリーダー的な存在で、(今村)和樹(桜井ユキ)は言いたいことをいうタイプで、(西山)由美子(美村里江)は控えめで、いつもどうしようどうしようって言っていて、で、麗香はみんなに合わせていくタイプなのかなって。そういう部分は、似ているかも。不倫はしませんけどね(笑)」。

「このドラマは単純なホラーではなく、人間が生み出すもやもやした感情が多発して、一層恐怖を感じるはず」

「私、何か間違ったこと言ってる?」と、範子が振りかざす狂気じみた正義に翻弄される4人は、範子との再会によって日常生活がほころび始め、絶望的な破綻へと向かっていく。

「範子の正義は、法にのっとった正義で、法は犯してはいけないものだから、誰も何も言えないんですよね。主観の正義というのは押し付け。でも法律を出されちゃうとね…というのがあって、納得せざるを得ない部分が多く、歯がゆい。このドラマは単純なホラーではなく、人間が生み出すもやもやした感情が多発して、一層恐怖を感じます」。

1月30日に行われた制作発表では、片瀬が「5人で話をしていると、高校時代に戻ったみたいで本当に楽しい」と、出演陣の仲の良さ、チームワークの良さを教えてくれた。同時に、田中の緊張している様子も伝わってきた。

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「私を含め、みなさん30代で、いい意味で馴れ合わないというか、仲良しごっこという感じでもなく、距離を取るところはきちんととり、大人のお付き合いができているように感じます。全員の距離感が絶妙で、居心地がいいです。みなさん凄いのが、ついさっきまで、行ったことのあるお店の話題などで盛り上がっていたのに、『本番行きます』という声がかかった瞬間、スイッチが入って、涙したり怒ったりするんですよね。そうやって皆さんのスイッチが入ると、私もついていかなくちゃってスイッチが入ります。制作発表の時は、あの場で女優然としているのは違うなと思って(笑)、かといって『アナウンサーなのに恐縮です』っていう感じでいるのも、一緒にやらせていただいている皆さんに失礼ですし、一体何者としてここにいるんだろうと戸惑っていました」。

制作発表での緊張の理由は他にもあった。「私、人前が苦手なんです。テレビカメラの前は大丈夫なんですけど、イベントの司会とか、すごく緊張して手足が震える。会見の時も人がたくさんいたのと、カメラのフラッシュが怖かったです。まず人前に慣れなければいけないなと思います」と、カメラの前では力を発揮できるが、人を前にすると委縮してしまうという意外な一面を教えてくれた。

「出演者、スタッフ、全ての人が魅了されるとお聞きした、上戸彩さんのような女性、女優が憧れ」

理想とする女優像を聞いてみると――。

「女優像など思い描くことすらできないのですが…。中学の頃から上戸彩さんが大好きで、上戸さんとお仕事をすると現場のスタッフさんはみなさん上戸さんのファンになってしまうそうで『また一緒に仕事がしたい』と、全員が口を揃えておっしゃるんだとか。演技で自分の役割を果たした上で、周りへの気遣い、心配りがちゃんとできるようになれたらいいなと思います。今回の現場では山口さんをはじめ、みなさん私にまで気を遣ってくださったり、休憩中もスタッフさんと楽しくコミュニケーションをとられていて、こういう余裕は、現場を何度も経験して、キャリアを積まなければ出てこないものなんだろうなと。いつの日か私も現場の雰囲気作りができるくらい、余裕を持てるようになったら、もっともっとこの仕事を楽しめるのかもしれません」。

「例え演技のお仕事がこの一作になったとしても、将来結婚して子供ができた時、胸を張って観せられるような作品になるよう、尽力したい」

田中にとって女優という仕事が、今後の自分にどういう影響を与えると考えているのだろうか。

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「30歳を過ぎて、真新しい分野に挑戦できることって、なかなかないことだと思うし、まだ始まったばかりなので、やりがいを感じるという境地には至っていませんが、ほんの少し『楽しいかも』と思える余裕が出てきました。例え演技のお仕事がこの一作だけだったとしても(笑)、将来結婚して子供ができた時に、『お母さんこういう仕事もしてたんだよ』って、胸を張って観せられるような作品になるように尽力したいです」。

“不倫中の独身女優”という難役、しかもその不倫には完全には否定できない、同情の余地を残す点もあり、そのあたりの女性の姿、心情を田中がどう演じるのか、注目したい。

『絶対正義』は、2月2日の初回放送がスタート直後から、SNS上では大きな反応があり、“オトナの土ドラ”史上最高の見逃し配信件数を記録した。FODで、第一話の無料配信中だ(2月9日(土) 23:59まで)。

『絶対正義』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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